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ざっくりとした「将棋30級の認定基準」

将棋では10級や15級からスタートする教室がほとんどです。

羽生善治九段が通っていた道場(八王子将棋クラブ=2018年閉鎖)では一番下の級が7級だったけど、羽生少年は特別に15級を認定され、通うたびに昇級する配慮をされていた、という有名な話があります。

でも、私の将棋教室では、子供は35級をスタートにしていました。(過去形なのは、2019年に教室を閉鎖したからです)

10級スタートでも、初段になるまでに10回しか昇級しないのは少ないと思っていたんですよね。
教室を開く以前から、初心者から初段までを10段階でしか分けないのは大雑把と思っていました。もっとグラデーションがあるはず。
例えば10級の中でも「強い10級」「弱い10級」が出てしまいます。

とは言え、一番下が35級という教室は私もほとんど聞いたことがありません。

自分の教室をスタートさせるときに、10ヶ所くらいの教室に、級位の認定基準について問い合わせました。だいたい10~20級が最下級でした。

私の場合はスタートして1年くらいはいろいろぶれましたが、安定した頃からは15級まで上がった子がちょうど、関西将棋会館道場の15級として勝ったり負けたりで指せるのを目安にしていました。
そして、私の教室では15級まで行くともう教室の主力です。

つまり私の教室は、「いきなり関西将棋会館道場に行っても全く通用しない子」が大半だったというわけです。
一般的には、本当の初心者~15級までを認定する級が存在していないのです。

15級、けっこうなやり手ですよ?

でも実際に35級の認定でスタートする子はほとんどいなくて、30級前後が多かったです。

ではどういう子が35級で、どういう子が30級なのか。

これが今回のテーマです。

まずは、教室に入会された方に配布していた昇級規定の一部をご覧いただきましょう。

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まあここに結論が書かれているのですが。

つまり、

30級に認定されるには…

駒の動かし方をマスターする。

自力で対局を終えられる。(駒箱を開けてから、片づけるまで)

35級に認定されるには…

イヌとネコの区別がつく。

おはなしができる。

ここで結論は出てしまったので、以下はおまけの話です…。

*  *  *  *

この規定の大きな特徴は、将棋のルールをマスターしていない人にも将棋の級の認定をしていることです。

例えば玉と歩の区別がつかない人が駒の動かし方を覚えるとは思えないですし、最低限のコミュニケーションを取れないと将棋教室での受講ができるとは思えませんので。

でも、そこさえクリアしていれば、将棋を習うことは可能だと思っています。
だから「将棋のことは全く何も知らないんです。道具も今日初めて見ました」という人でも35級を認定しています。
「漢字が読めないですが、大丈夫ですか」という質問を頂戴することもありますが、例えば「飛車」と「角行」が同じ文字に見えるならしんどいかもしれませんが、違う文字だと区別がついていたら大丈夫です。
それは日本語話者じゃない方でも、漢字を知らないお子さんでも同じです。

34~31級はざっくりと文章での認定基準を設けていますが、ここはあいまいです。
下に記しますが、30級の認定基準が明確なので、31級で3ヶ月も4か月もストップすることがないように、個人の習熟状況を見て逆算して認定していきます。
35級スタートでも家でも将棋を指すようになった子供と、将棋教室に来たときしか将棋に触れない子では、上達の速度は変わりますからね。

「そろそろ昇級させてもいいかな」と思う子が現れたら、「今日の対局の時間に駒の動かし方を間違えるのが3回までなら」とか、「対局が始まってから終わるまで座ったままで指せたら」とか、生徒さん別に課題を与えてクリアできたら昇級を認めていました。

30級の「自力で対局を終えられる」は、駒箱を開けてから片づけるまでなので、挨拶ができるとか、待ったをしないとか、対局中に助言を求めない/しない、というのも含まれます。

王手放置をしようが、飛車を成り忘れようが、技術的なことはほとんど問いません。

31級までは指導対局を多めにしたり、生徒さん同士の対局でもできるだけ横で見守るようにしています。
30級は、荒い表現を使うならば「先生がほったらかしてても大丈夫」なレベルです。
子供同士でも「いま待ったしたやろ~」「手ぇ放してへんわ、そんなん言うたらお前だってさっき~!」みたいな言い争いをせずに対局を終えることができます。いや、たまにけんかはありますが…。

もちろん、ルールとマナーは違うものです。でも35級から30級に至るまでにマナーの指導も行いますので、結果的に30級に認定される段階ではマナーは問題なくなっています。
(マナーがよくならない子は習熟も遅い傾向にあるのはなんででしょうね。関係なさそうなんですが)

そんなわけで新入会で駒の動かし方が大丈夫な子でも、マナー面の指導や初日だけでは確認しきれなかったルール把握の状況確認も必要なので(引成とか、二歩とか、たまたま局面に現れなかったルールを知らないこともある)、32~33級に認定していましたね。

このシステムは昇級する機会も多く、低い級に認定してしまっても昇級賞(イワコーの消しゴム)をたくさんゲットできて帳尻が合うのでなかなかいいと思っていたのですが、欠点も(大したことではないですが)少々ありました。

(1)10級(上級クラス)まで上がっても「初心者の部」にエントリーしなくてはならないことにショックを受ける保護者がいた。

(2)級が低いお子さんが多いことで「この教室に通っても強くなれない」と思われる(あるいは噂を流される)ことがあった。

ただね、これはいずれも、こういう反論をしていました。

この子たち、この教室がなかったら将棋やってないですよ。

有段者や全国大会代表の輩出を目指すような教室ではないので実績が生まれるわけはありません。

強い子をもっと強くする教室はいくらでもあるけど、全然将棋に向いていない子、将棋の楽しさをまだ知らない子に将棋に対する興味を持ってもらって、楽しみを知ってもらって、続けてもらうところが、私が将棋を教えていて一番やりがいを感じる部分です。
結果的に上達することもある、という感じですかね。

というわけで、やっとこさっとこ駒の動かし方を覚えて、ほとんど反則をすることもなくなりました。
という子が30級です。

(あ、子供と大人は習熟する脳の仕組みが異なるので、いきなり25級くらいを認定することが多かったです)

じゃあ次は何を目指して、何ができるようになったら25級を認定していたかという話です。

それはまたそのうちに。

あまりうまくまとめられなかったので、質問があればコメントください!

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