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野球の動きづくり

▌姿勢づくりから野球の動きづくりへ

 姿勢づくりのあとは、野球の動きづくりへと移行していきます。いきなりボールやバットを使って野球の技術練習に入るより、この動きづくりから始めた方が、遠回りのようで近道です。上達の過程で伸び悩んだり、動作がわからなくなったりした際にも、ここへ戻って来るとよいでしょう。いつでも戻れる場所を作っておくことが、基礎練習には必要です。

 この動きづくりには、トレーニングの要素も多分に含まれるため、オフシーズン(11月下旬~1月中旬、移行期~一般準備期)にたっぷり時間をかけて実施することをお勧めします。プロの選手も、自主トレや春季キャンプの前半でおこなっていますので、動作をよく理解した上でぜひ取り入れてみて下さい!

 動作の起点はアスレティックポジションです。それをお忘れなく!

アスレティックポジション

1.相撲の四股踏み

 これは相撲の四股踏みと同様です。スタンスは肩幅の約2倍。つま先をやや開き、片脚を真横にできるだけ高く振り上げます。着地したら、尻を真下に下ろしていきます(骨盤が後傾しない範囲で、なるべく低く。太ももが地面と平行になるまで尻を下ろせればOK)。常に骨盤に意識を集中し、恥骨部分を引っ込めて骨盤が後傾しないように注意しましょう(横から見た際、下背部と尻の上部がほぼ一直線)。

▼左右交互に片脚を振り上げ、最低片脚10回ずつ、合計20回


2.四股スクワット

 これは四股踏みの体勢でおこなうスクワットです。スタンスは肩幅の約2倍。つま先をやや開き、尻を真下にゆっくり下ろしていきます(骨盤が後傾しない範囲で、なるべく低く。太ももが地面と平行になるまで尻を下ろせればOK)。両脚の付け根(股関節)に力を蓄え、勢いを付けて一気に立ち上がります。常に骨盤に意識を集中し、恥骨部分を引っ込めて骨盤が後傾しないように注意しましょう(横から見た際、下背部と尻の上部がほぼ一直線)。

▼最低20回
▼目線を斜め上に向けたままおこなうとよい。腰を反らしすぎないよう注意
▼第2段階:スクワットジャンプ、立ち幅跳び(前向き・横向き)の連続
▼第3段階:相撲の四股踏みと交互におこなう(相撲の四股踏み⇔四股踏みスクワット)


3.四股ウェイトシフト

 これは四股踏みの体勢でおこなうサイドランジです。スタンスは肩幅の2倍よりやや広め。つま先を少し開き、グラブをはめている方の手を一旦真下に持っていきながら、尻を下ろします(骨盤が後傾しない範囲で、なるべく低く。太ももが地面と平行になるまで尻を下ろせればOK)。そこから手が円弧を描くようにして腕を目一杯真横(グラブ側)に伸ばしつつ、同じ側の脚の付け根(股関節)に体重が乗るようにします。

 そして一呼吸置いてから、手と骨盤を元の位置(スタンスの中心)に戻し(地面をタッチしてもよい)、その流れのまま、今度は反対側に手を伸ばしながら(逆シングル)、同じく反対側の脚の付け根(股関節)に体重を移動させます。これを交互に繰り返していきます。手は「下から上へ」の意識を強く持ち、骨盤は後傾しないように注意しましょう(横から見た際、下背部と尻の上部がほぼ一直線)。

 この動きの延長線上にダイビングキャッチがあります。つまり、これは守備(ゴロ捕球)の横方向への動きづくりです。そのことを絶対忘れないようにして下さい!

▼最低10往復
▼できるだけ頭が上下動しないよう注意
▼第2段階:低い体勢のまま3~4歩サイドステップしながら上記をおこなう
▼第3段階:実際にボールを使用し、上記をおこないながら捕球練習(2人1組となり、1人がボールをトスし、もう1人が捕球。腕が伸び切ったギリギリのところにボールをトス)


4.四股ウォーク(前後・左右)

 これは四股踏みの体勢でおこなうウォーキングです。スタンスは肩幅の約2倍。つま先をやや開き、尻を真下にゆっくり下ろしていきます(骨盤が後傾しない範囲で、なるべく低く。太ももが地面と平行になるまで尻を下ろせればOK)。そして、低い体勢のまま前進。後進もおこないます。常に骨盤に意識を集中し、恥骨部分を引っ込めて骨盤が後傾しないように注意しましょう(横から見た際、下背部と尻の上部がほぼ一直線)。特に後進の方は骨盤が後傾しやすく、かかとの方に体重が乗ってしまうので、注意が必要です。前進のときと同様、足の前半分で地面を捉えていくことが大切です。

 さらに、横(左右)歩きもおこないます。進む方向と反対側の足(右に進む場合は左足)の母趾と母趾球で地面を蹴り、素速く足を横に送っていきます(すり足)。また、横歩きで、斜め45度前方と後方にそれぞれ左右3歩ずつ、ジグザグに進むこともやってみて下さい。

 なお、手の位置は自由ですが、これも守備(ゴロ捕球)の動きづくりになりますので、一歩進む毎に捕球動作(両手で小さな円を描く)を入れるなど、野球の動きにつなげていくことが重要です!

▼距離:15~20m
▼第2段階:横歩きで一定の距離を進んだら、前項3のウェイトシフトを入れ、方向転換。それを繰り返す
▼第3段階:実際にボールを使用し、上記をおこないながら捕球練習(2人1組となり、1人がボールを転がし、もう1人が捕球。前歩き・横歩きでそれぞれ一定の距離を進んだら、最後の一歩でボールを転がし、捕球。それを繰り返す)


5.フロントランジ、バックランジ

 ここからは、ランジ系ドリルの解説です。理に叶った投球動作に向けての動きづくりになりますので、よく御理解下さい。

 まずはフロントランジです。頭の後ろで手を組み、前かがみにならないよう注意します(目線を下げない)。骨盤をまっすぐ立てたまま、片脚を大きく踏み出します。踏み出した脚の付け根(股関節)にしっかり体重を乗せてから、重心を落としていきます。体重移動が先です!くれぐれもこの順番を間違えないようにして下さい!

 踏み出した脚の膝は、最大で90度まで。それ以上曲げる必要はありません。そして最後に両脚の付け根(股関節)の内側を締め込みます(タマキンつぶし)。膝を少し内向きに入れる要領で、足の内側から膝の内側、太ももの内側までを緊張させます。これで一連の動作が完了し、反対側の脚の踏み出しへと移行します。以後、繰り返しです。

 バックランジも同様です。フロントランジと比べて、バランスを取るのが難しいのと、上体が前(進行方向とは逆)に倒れやすくなるので、注意して下さい。動きは逆になりますが、形や脚の締め込みは同じです。

▼距離:20~25m(距離が取れない場合は、その場で脚を踏み出しては戻し、踏み出しては戻し、それを左右交互に最低20回繰り返す)
▼フロントランジで脚を踏み出した際、グラブをはめている方の手を伸ばし、地面すれすれのところにボールをトスしてもらい、ノーバウンドで捕球する練習をすれば、シングルハンドキャッチの動きづくりにもなる


6.斜め45度ランジ、ツイストランジ

 続いて、斜め45度ランジとツイストランジです。徐々に投球動作の要素が加味されていきます。

 まず、斜め45度ランジ。要領はフロントランジと同じですが、斜め前方に脚を踏み出す分、後ろ足の使い方が異なってきます。つまり、フロントランジと比べて、後ろ足の内側を使う割合が増えてくるということです。母趾と母趾球で地面に対してしっかりエッジを効かせましょう!→ 関連ドリル:片脚ジグザグホップ

 次に、ツイストランジについて。下半身の使い方はフロントランジとまったく同じですが、ここでは、脚を踏み出した方向(右脚を踏み出すときは右、左脚を踏み出すときは左)に上半身を目一杯捻ります。上半身を捻る際、両腕をまっすぐ前方に伸ばしておこないますが、投球動作と同じように、左に捻るときは右腕メインで、右に捻るときは左腕メインで、それぞれ捻りを誘導します。主導する側の腕がジョイントしている肩甲骨を、背骨からできる限り引き離し(外転させ)ましょう。

 上半身を捻る分、下半身が捻った方向になびいてしまうため、フロントランジのときより踏み出した脚の締め込みを強くしないと、足の小指(小趾)荷重になって、膝も外に割れてしまいます。そこをしっかりコントロールして下さい!

▼距離:20~25m(距離が取れない場合は、その場で脚を踏み出しては戻し、踏み出しては戻し、それを左右交互に最低20回繰り返す)
▼斜め45度ランジで脚を踏み出した際、グラブをはめている方の手を伸ばし、地面すれすれのところにボールをトスしてもらい、ノーバウンドで捕球する練習をすれば、シングルハンドキャッチの動きづくりにもなる


7.サイドランジ&ツイスト

 最後に、サイドランジ&ツイストです。これはランジ系ドリルの中で最も投球動作に近い動きになりますので、そのメカニズムをよく理解し、必ず実施するようにして下さい!ここでは、このドリルを3段階に分けて説明します。

 サイドランジ&ツイストは、最初横向きに脚を踏み出し、体重移動しながら、踏み出した脚の方向に上半身を捻る動きです。第1段階では、下半身と体幹の連動を反復します。

 まず、進行方向に対して横向きに立ち、姿勢を正します(骨盤をまっすぐ立てる)。頭の後ろで手を組み、前側の脚を軽く上げて、まっすぐ踏み出していきます。足のつま先はやや開き気味に踏み出し、足の内側から着地するようにします(投球動作のようにつま先を前に向ける必要はまだありません)。着地の直後では、つま先だけが少し前を向き、膝はスタート時の向きのままです(toe out/knee in)。着地をきっかけに、骨盤から上を移動させ、踏み出した脚の付け根(股関節)に乗せます。と同時に上半身を捻りながら、重心を落としていきます(ツイストランジ同様、体重移動が先です!)。前脚の膝の角度は最大で90度まで。それ以上重心を下げる必要はありません。上半身が完全に前を向いたら、つま先と膝が同じ方向を向き、これまでと同じように両脚の付け根(股関節)を締め込んで(タマキンつぶし)、動作完了です。直ちに後ろ足を前に引き寄せ、以後、同じ向きで繰り返すか、一回一回反転して左右交互におこなうか、どちらでもかまいません。

 次に第2段階です。今度は、上記の動きに、投球腕(右投げの場合は右腕)の動きを少し加えます。第1段階とは異なり、手は頭の後ろで組まず、ボールを持つ方の手だけを頭の後ろに軽く置きます(反対側の腕はだらりと下げておくだけ)。下半身の動きと上半身の捻りは、第1段階とまったく同じです。前脚を軽く上げたら、投球腕側の肩甲骨を脊柱に引き寄せ(内転させ)、胸を張ります。上半身を捻り、体幹が前を向いたら、両脚の付け根を締め込むタイミングと合わせて、投球腕側の肩甲骨を脊柱から引き離して(外転させて)いきます。すると、最初後頭部にあった手が、スライドして耳の上辺りまで移動し、肘が前に出て来るはずです(肘の高さをキープ)。肩甲骨を脊柱から目一杯引き離したところ(ここで腕を伸ばしたところがリリースポイントになる!)で動作完了となります。

 さらに第3段階では、グラブをはめている方の腕(以下、グラブ腕)の動きも加えます。前脚を上げたら、グラブ腕を前方に差し出し(肘は軽く曲げて内側に捻る→小指側が上を向く)、上半身の捻りと共に、体の方に引き寄せます。その際、グラブ腕を外側に捻りながら、力を込めて折りたたんでいきます。柔道で、相手の前えりをつかんで引き寄せるイメージです。手を小指から握っていく(特に小指・環指・中指の3本に力を込める)と、この動きをうまく誘導でき、グラブ腕側の脇がしっかり締まります。上肢と下肢が体の中心に向け、ギュッと締め込まれて、動作完了です。

 なお、上記は、オーバースロー以外の投げ方(サイドスローやアンダースロー)にも応用が可能です。それぞれ、体幹の角度を変えれば、投げ方に応じた動きづくりをすることができます。また、理に適った投球動作の詳細については、該当の記事を御参照頂き、動きづくりとよく関連付けて御理解下さい!

▼距離:20~25m(距離が取れない場合は、その場で脚を踏み出しては戻し、踏み出しては戻し、それを左右交互に最低20回繰り返す)
▼サイドランジ&ツイストは、投球動作だけでなく、打つ動作にも適用可能


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