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投げるのい・ろ・は - 理に適った投球動作

▌理に適った投球動作

1.2つの医学的キーワード -「肩甲骨面」と「ゼロポジション」

① 肩甲骨面【Scapula Plane】

肩甲骨面【Scapula Plane】

 上図の通り、人間を頭の上から見てみると、肩甲骨は背中にまっすぐ水平に付いているわけではありません。多少の個人差はありますが、気を付けの姿勢で力を抜いて立った状態では、約30度前後斜め前に角度を持って付いています。この角度の延長線上で作った平面のことを「肩甲骨面(Scapula Plane)」といいます。

 さて、この状態(気を付けの姿勢=手の甲が外を向いている)から腕を上げるとき、どこで上げるのが一番上げやすいでしょうか?

 肩甲骨面よりも前で上げると楽に上がりますが、肩甲骨面よりも後ろに行けば行くほど、上げ辛くなるのがおわかり頂けたと思います。もし、肩甲骨面よりも 後ろで無理やり上げようとすると、肩の後ろ側の筋肉がパンパンに張り、とても疲れます。もちろん、肩甲骨を内側に引き付ければ、肩甲骨面は後ろ側に広がります(上図下段)。肩甲骨面は常に一定ではなく、肩甲骨の位置により変わってくるのです。

 投球動作において、ボールがトップの位置に来るまでの過程(テイクバック動作)で、このことは非常に重要なチェックポイントになってきます。詳しくはあとで具体的に説明しますので、まずは肩甲骨面の存在を押さえておいて下さい。

ワンポイントアドバイス
肩甲骨面の前後で腕の上げやすさは変わる


肩甲骨面を基準とした肩の運動区分

 肩は、肩甲骨面を境にして、その前側では内旋(手の甲が外を向く)していた方が、逆に後ろ側では外旋(手のひらが外を向く)していた方が、それぞれ腕は上げやすくなります。手の小さいお子さんが、ボールを落とすまいとして、ボールを上に向けてテイクバックをとるのをたまに見かけますが、これは外旋位でのテイクバック(肩甲骨面外でのテイクバック)となるため、後々のためにも注意が必要です。まだ手の小さいうちは、鷲づかみでもかまいませんので、ボールは地面に向けてテイクバック(肩甲骨面内でのテイクバック)をとりましょう!


② ゼロポジション【Zero Position】

ゼロポジション【Zero Position】

 次に重要なのが「ゼロポジション(Zero Position)」という肢位です。はじめはできるだけ正確にこの肢位をチェックして下さい。

 肩甲骨には、上図左端(右の肩甲骨を後ろから見た図)にあるような肩甲棘(けんこうきょく)という骨の出っ張りが存在します。まずはそれを確認して下さい。

 その骨の出っ張りが確認できたら、今度は、片方の手を頭の後ろか上に置き、脱力します。このとき、肘は真横ではなく、斜め前方を向くはずです。ここで上肢の作る平面が肩甲骨面で、そこから腕を伸ばしたとき(手は空手チョップの向き)、その肢位がおおよそのゼロポジションとなります(ハンモック肢位と呼ぶ)。厳密に言うと、上図中央のように、肩甲骨面でかつ、肩甲棘と上腕骨の長軸が一直線になる肢位を指します。この肢位では、肩の関節(肩甲骨と上腕骨のジョイント部分)が最も安定し、4つのインナーマッスル(ローテータカフ)が上腕骨の付着部分に向けて捻れることなくまっすぐに伸びて、臨床医学的にも重要なポジションとされています。

 投球動作においては、ボールリリース時の理想的な肢位として、よく頭に入れておいて下さい。これはオーバースローに限らず、スリークォータースローも理屈は同じです。肢位はそのままで、体幹の傾きが変わるということに注意して下さい。


2.投球動作における6つのチェックポイント

投球相①~⑥

チェック1 :前脚の上げ方とバランス【投球相①】

前脚の上げ方と着地位置の目安

□ 前脚(右投げの場合は左脚)は、骨盤が大きく後傾しない範囲でできるだけ高くまっすぐ上げる

□ 前足のつま先を、わずかに投げる方向と反対の方向に向ける
→ ここで前脚全体を投げる方向と反対の方向に入れすぎてしまうと、その戻し動作で腰は水平に回りやすくなるため、それを活かすのであれば、サイドスローやスリークォータースローにした方が投球効率は良くなる

□ 後ろ足(軸足)は、内くるぶし直下~母趾球に荷重し(かかと荷重はNG)、バランスを安定させる
→ 後ろ足の荷重範囲(内くるぶし直下~母趾球)の延長線上(投げる方向)に前足を踏み出す(目安)

両脚の内側を緊張させることで、体の中心軸に力を蓄えよう!

チェック2 :前脚の下ろし方と腰の回転【投球相②】

前脚の下ろし方日米比較

□ 前脚の下ろし方は、年齢や下半身の筋力に応じて、アメリカ式から日本式へ(上図)
→ アメリカ式は「マウンドの傾斜を利用して、棒が倒れるように」という指導法(これをショルダーファーストと呼ぶ)で、腰は水平回転(下図)
→ 日本式は「低重心投法」(ヒップファースト)で、腰は斜め回転(下図)→ それぞれ一長一短あり(下表)。日本式の方が下半身に力はよく蓄えられる(肩・肘への負担は減る)

前脚の下ろし方と腰の回転
日米の投法メリットとデメリット

□ 前脚を踏み出すきっかけとして、後ろ脚の股関節を内側に締め込む
→ 膝を少し内方(投げる方向)に入れる要領
→ 後ろ脚側の中殿筋前部(下図)が働き、前脚側の骨盤が自然に持ち上がる
→ これが正しいヒップファースト!単に前脚側の尻を持ち上げる動作ではない!【重要】

中殿筋

□ 前脚を踏み出す際、骨盤が後傾しないよう十分注意する【重要】

□ 前足のつま先は、着地ギリギリまで投げる方向に向けない
→ 結果的に前足が少し内側(右投げの場合は右打者の方向)を向く。日本の軟らかいマウンドでは差し支えないが、アメリカの硬いマウンドでは注意が必要

□ 前足の着地は、足底の内側から(下図)
→ 着地の直前、toe out/knee in の形(下図)

前脚の上げ方・下ろし方で腰の回転がほぼ決まり、そのあとの動作に影響を与える(骨盤の傾斜も同様)

前足着地の際の荷重イメージ
toe out/knee in

チェック3 :テイクバック動作【投球相②~③】

テイクバック動作の○と×
正しいテイクバック動作

□ テイクバック動作の出発点は、後ろ脚太ももの前から
→ 腕は気を付けの状態(手の甲が外を向く)と同じで、肩も肘も中間位(脱力)

​□ 肘を曲げながら、肘の外側(外側上果)をひもで上から吊られるようなイメージで投球腕を上げていき、前腕は中間位を維持(上図Good)
→ 肩甲骨を脊柱に引き付けながら、両肩を結ぶラインの少し下まで(肩に無理な力が入らない範囲で)上げる(上図Good中段の形を早くつくる!)

​□ 前足の着地をきっかけにして腰が回り始めたら、ボールを持った手を頭の後ろに近づけていく(前腕中間位、肘の角度は90度前後屈曲をそれぞれ維持)
→ 手の甲側、母指と示指の付け根辺りが最も頭に近づく(上図Good下段)
→ ここ(トップの位置)から、肩は徐々にゼロポジションとなる【重要】

肘の位置による肩の外旋可動域
過角形成

□ 上体の回転と共に肘(の内側)は投げる方向を向き、肩甲骨が脊柱から引き離されて、肩は最大外旋位となる(腕はゼロポジションで最もよくしなる、上図)
→ このとき、グラブ腕がうまく使えていないと、上体の開きが早くなり、投球腕が後ろに残された状態で最大外旋してしまう(過角形成、上図Bad)

投球腕は肩甲骨面の内側を最大限に使って動かそう!

※野球界では、トミージョン手術の増加に伴い、テイクバック動作にも変化が見られます。それが「外旋位コックアップ」です。これは、踏み出した前足が着地する前に肘の高さよりボールを持つ手が上に来るようにすれば肘への負担が減るという考え方で、今や主流になりつつあります。

ワンポイントアドバイス
テイクバック動作は投球腕の動きだけではなく、下半身との連動である!


 まず、以下をお読み下さい(『メジャーリーグのバッティング技術』より)。

『バッティングでもピッチングでも部分的な動作を見る前に「全体として何をしているのか。どこからどのようにして力が生まれているのか」という事を理解するのが大切なのですが、ピッチングでは重心移動から回転運動を導き、体幹部で生み出した大きな力を利用して末端部を加速しているという事がまず大前提としてあるのです。ですから、腕を後ろに引いてから前に出すのではなく、重心移動によって残された腕が、重心移動の完了と共にその間で伸ばされたバネを戻すように前に出て来るのです。末端部の動作は常に体幹動作の結果として反射機能や物理的法則の元に動きますから、「動かす」のではなく「動かされる」のです』

引用:『メジャーリーグのバッティング技術』

 これはピッチングに限らず、競技動作を考える上で、絶対に忘れてはならないことです。しかし、最初からこの感覚でボールを投げられる人は少ないというのも事実でしょう。動作には意識できるところと意識できないところがあり、後者、つまり動作の中で最も加速しているフェーズで修正を試みても、うまく行かないことが多いのです。それにはやはり、動作が加速する前の段階で理に適っていない動きを正し、意識化と反復練習を繰り返しながら、最終的に無意識化することがとても重要です。そして、そのあとの動作が自然に合理的かつ効率的なものになるよう導くのです。

 上記は、テイクバック動作を修正する過程で、まず最初に何を意識すればよいのかということについて大きなヒントを与えてくれています。「前脚を踏み出すことで体幹部が前方に移動し、投球腕が残される」。その残された感覚がテイクバックの初期動作となり、自ずと体幹の移動方向と逆の方向に腕が振られるのです。そうすると、投球腕は「上げる」のではなく、勝手に「上がる」のだということが徐々に体感できるはずです。そのためにも、腕はできる限り脱力しておいた方がよいということがわかると思います。ぜひやってみて下さい!

テイクバック動作の修正方法

テイクバック動作の修正方法1
テイクバック動作の修正方法2
テイクバック動作の修正方法3

チェック4 :グラブ腕の使い方【投球相②~③】

グラブ腕の使い方○と×

□ 前脚を踏み出すと共に、グラブ腕を投げる方向に差し出す(上図左端)
→ 投球腕同様、肩甲骨面内で動かし、少し内側に捻る(前腕回内)

□ 前足の着地をきっかけにして腰の回転が始まり、それと共に、グラブ腕を外側に捻りながら(前腕回外)腕をたたみ、脇を締めていく(上図中央~右端Good)
→ 柔道で相手の前えりをつかんで引き寄せるときの力の入れ方
→ グラブをはめている手の小指から握り、小指・環指・中指の3本に力を込める要領(下図)【重要】

手指の直と環

□ 最も力の入るボールリリースの瞬間、さらにグラブ腕をギュッと締め込む
→ この締め込みが甘いと、グラブ腕は体の後ろ(投げる方向と反対)に流れ、上体が早く開いてしまう
→ ここで上体の回転に急ブレーキをかけることで、投球腕側の肩甲骨が脊柱から完全に引き離され、腕がさらに前に出ていく(エクステンションが伸び、腕の振りが大きくなる)
→ グラブ腕に上体を乗せていくイメージ(ボールリリース後であれば、グラブ腕が体の後ろに流れても問題はない…フォロースルーにおける投球腕減速のため)

⇒ グラブ腕の使い方は、形よりも力の入れ方が大事!
「グラブ腕を体の後ろに引くことで投球腕を前に出す」という考え方はNG!

ワンポイントアドバイス
アメリカのテキストにおけるグラブ腕の使い方の解説


 アメリカのピッチングテキスト『THE PITCHING EDGE』では、「GLOVE POSITIONING」と題して、グラブ腕の使い方が簡単に解説されています。以下にその原文と訳文を載せますので、こちらも参考になさって下さい。

GLOVE POSITIONING:
After lining up elbows at foot strike, keep glove over the landing foot as much as possible as body rotates around head/c.g.* axis to direct and deliver energy into the baseball toward the plate. Bring throwing arm elbow to a fixed glove-side elbow. Keep it firm and out front at whatever height comes natural.
*c.g. = the center of gravity

引用:『THE PITCHING EDGE』

 【訳文】前足が着地して両腕の肘が一直線に並んだあと、ホームプレートに向けてボールを導き、ボールにエネルギーを供給するために、体が頭と重心点を結ぶ軸を中心に回転するまで、着地した足の上方にグラブをできるだけ長く保持しておきましょう。そして、投球腕の肘を、固定しているグラブ腕の肘のところに持っていき、高さが自然である場合すべてにおいて、それをしっかりと前でキープしましょう。


チェック5 :リリースポイント【投球相④】

□ 正しいテイクバック動作とグラブ腕の使い方により、投球腕が最もしなるところ(最大外旋位)で(肩は)ゼロポジションとなっていることが望ましい
→ 投球相②(テイクバック動作の前半)では、投球腕は両肩を結ぶラインの少し下まで上がっていればよく、投球相③(テイクバック動作の後半)で、上体の回転と共に投球腕の肘の内側が投げる方向を向き始める辺りから、手を頭に近づけることで、ゼロポジションまで引き上げたい(肘の角度は90度前後屈曲を維持)
→ 肘の高さがゼロポジションより下がっていると、肩の外旋可動域は減少し、肘の外反ストレス(肘内側への牽引ストレス)が増して、肘の内側を痛めやすい(内側上顆炎、関節ネズミ、内側側副靱帯損傷など)【重要】

□ あくまでも上記の結果として、リリースポイントの肢位がゼロポジションとなる
→ リリースポイントだけを見て、「もっと肘を上げろ!」という声かけはナンセンス
→ ゼロポジションリリースでは、ボールを離す位置が視野の中(斜め上)に入ることが目安の一つとなる
→ 野球の動きづくり「サイドランジ&ツイスト(1~3)」で、投球腕の肘の高さや肘の出し方、グラブ腕の使い方を反復・習得しよう!

正しいテイクバック動作とグラブ腕の使い方で、ゼロポジションリリースを誘導しよう!

※解剖学的ゼロポジションが、人により、必ずしも腕が最もしなる肢位であるとは限らないため、どの肢位で無駄な力を入れずに最大外旋するのか、よく確かめておくことが大事です

ワンポイントアドバイス
上から見た肩-肩-肘のライン形成


S-S-E:Shoulder-Shoulder-Elbow

 テイクバック(1)からボールリリース(6)までのフォームチェック法の一つに、スローイングを頭上から見た際の「肩-肩-肘のライン形成(S-S-E:Shoulder-Shoulder-Elbow)」があります。

 トップの位置(3)では、左右の肩甲骨が内側に最も引き付けられているため、両肩を結ぶラインよりもわずかに肘が後ろに入りますが、それ以外ではできるだけ両肩と肘が一直線上に並んでいることが望ましいのです。特に、投球肩の最大外旋ポイント(5)からリリースポイント(6)でこのライン形成が崩れ、両肩を結ぶラインよりも肘が後ろに入っている場合(テイクバックが肩甲骨面外、上体の開きが早い → 過角形成)は、投球肩への負担が大きくなります。

 さらに、ここで肘がゼロポジションより下がっていると、肘の内側にも大きな負担をかけてしまいます。そのため、テイクバックが体の後ろに入りすぎないようにすることが何よりも大切であり、体幹の回転をコントロールする正しいグラブ腕の使い方も、このライン形成には絶対不可欠なのです。

 ※「肩-肩-肘のライン形成」に関する医科学的検証については、『コーチング・クリニック(2003年12月号 P.6~9)』および『肩 その機能と臨床』(共に信原 克哉・著)を御参照下さい


チェック6 :フォロースルー【投球相⑤~⑥】

フォロースルー

□ ボールをリリースしたあとは、投球腕を反対側の体側に巻き付けるように最後までしっかり振り切り、勢いを逃がす
→ ボールリリース後、腕は自然に内側に捻られる(前腕回内・肩内旋)が、ムチを打ったときのように腕の振りを急激に止めてしまうと、肘の後ろ側や上腕二頭筋への負担が増大する

□ 肩甲骨が相手に見えるくらいまで投球腕を振り、肩甲骨と腕は常にペアで動かすことを意識する
→ 肩甲骨が後ろに残った状態で腕だけが振られると、肩の関節が引き伸ばされて、インナーマッスル(ローテータカフ)がダメージを受け、それが繰り返されると、いわゆる"ルーズショルダー"になってしまう
→ きちんと最後まで腕を振るためには、前脚にしっかりと体重が乗っていなければならないことも忘れずに!そのためには、骨盤の傾斜と適正なスタンス幅も重要なポイントとなる【重要】

フォロースルーは、投球腕と肩甲骨をペアで動かし、前脚を内側に締め込むことで完了(ボールリリースからフォロースルーにかけて、両腕・両脚にそれぞれ内向きの力が瞬間的に加わればよい)

ワンポイントアドバイス
フォロースルーにおける前足つま先の向きに関する考察


固いマウンドにおける前足つま先の向きに注意

 チェック2でも説明している通り、前足着地の際には、単に足全体をポンと置かずに、足底の内側から接地し、わずかに地面をかきながら(右投げの場合は反時計回りに、左投げの場合は時計回りに)足全体を着地させてつま先を前に向けます。前足のつま先は投げる方向にまっすぐ向けるのが基本とされていますが、実際には、上の写真左側のように少し内側(右投げの場合は右打者の方向)を向くことが多くなります。

 ボールリリースの瞬間、前脚は内側に締め込まれる(膝を若干内側に入れる要領で)ため、最終的につま先と膝の向く方向は同じになります。つま先が少し内側を向いていた方が、脚は締め込みやすくなるため、むしろ理に適っていると言えるでしょう。

 しかし、アメリカのマウンドのように土が固いと、着地後足がロックしてしまうため、上の写真右側のように、つま先と膝の向きが合わなくなります。両者のずれが小さければ問題ありませんが、ずれが大きいと、前足の小趾側に体重が乗り、膝が外に割れてしまうという弊害を生みます。つまり、体重移動がスムーズにおこなわれなくなるのです。すると、前脚に体重が乗り切らない → 投球腕が振り切れない → テイクバック動作で投球腕の上がりが早くなるといった悪循環を生み、肩や肘への負担も増えて、ケガにつながっていきます。

 そのため、マウンドの固さによっては、ステップの際のつま先の向きに微調整が必要になってくることを忘れないようにして下さい。固いマウンドでは、基本通り、前足のつま先をまっすぐ投げる方向に向けた方が無難です。


まとめ :投球動作の運動連鎖(キネティックチェーン)

投球動作の運動連鎖(キネティックチェーン) ©CG:大村皓一氏

 軸脚の締め込み【1】⇒ 前脚側の骨盤の挙上【1】⇒ 前足の踏み出し【2~9】⇒ 体重移動(並進)【2~9】⇒ 投球腕がその場に残されてテイクバックの初期動作【2~5】⇒ 前足の着地【8~9】⇒ 体幹の回転(体重移動完了)【10~16】⇒ 上肢と下肢の締め込み【12~16】
 ※体重移動=骨盤の移動

 ◎動作中、骨盤をまっすぐ立てておく(特に2~8で骨盤後傾→かかと荷重要注意)
 ◎1で正しいヒップファーストのきっかけづくり
 ◎2~5で投球腕がその場に残される感覚をつかむ(「上げる」から「(勝手に)上がる」へ)
 ◎8~9の形をしっかりつくる(普段のキャッチボールから)
 ◎10~11で投球腕はゼロポジションへ(10で肘の角度は90度前後屈曲を維持)
 ◎11~16のグラブ腕の使い方要チェック
 ◎12~16で上肢と下肢の締め込みに加え、前足で地面をもうひと押しすることで、軸脚が跳ね上がる

理想的な投球動作実例


3.張りや痛みの出ている部位と投球動作との関係

投球後の張りや痛みの部位

▼投球後に張りや痛みが出てもよい部位・出てはいけない部位

○張りが出てもよい部位(痛みの場合は要チェック):上図の灰色部分
 ④肩の後ろ側(三角筋後部・棘下筋・小円筋)、⑪肩甲骨の内側(大・小菱形筋)と⑬外側(前鋸筋・広背筋)、⑦肘の内側(内側上顆周辺)、⑩前腕の小指側(尺側手根屈筋)

×張りや痛みが出てはいけない部位:上図の桃色部分
 ①肩の前側(上腕二頭筋腱)、⑤上腕の前側と⑥外側(上腕二頭筋)、③胸(大胸筋・小胸筋)、⑧肘の後ろ側(肘頭付近)と⑨外側(外側上顆周辺)、②肩の深部(肩峰下部・上腕二頭筋長頭起始部)、⑫首の付け根から肩にかけて(僧帽筋)

▼張りや痛みの出ている部位と予想される投球フォーム
 張りや痛みの出ている部位から、自分の投球フォームが今どうなっているのか、イメージできるようにしましょう!

張りや痛みの出ている部位と予想される投球フォーム


参考文献


●『THE PITCHING EDGE』Tom House・著(Human Kinetics)
●『スポーツ外傷・障害の理学診断・理学療法ガイド』臨床スポーツ医学編集委員会・編(文光堂)
●『スポーツ傷害の手術テクニック』Frank W.Jobe・著(医道の日本社)
●『ツボと日本人 東洋動作学への道』簑内 宗一・著(いなほ書房)
●『メジャーリーグvs.日本野球』大村 皓一・著(講談社現代新書)
●『肩 その機能と臨床』信原 克哉・著(医学書院)
●『肩診療マニュアル』橋本 淳、信原 克哉・著(医歯薬出版)
●『骨盤ナビ』竹内 京子・総監修、岡橋 優子・エクササイズ監修(ラウンドフラット)
●『野球障害予防ガイドライン』日本臨床スポーツ医学会、整形外科学術部会・編(文光堂)



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