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選手のコンディションを左右する因子

 これまで20年余り、野球界やソフトボール界のさまざまなチームや選手をみさせて頂いて、一つ得られた答えがあります。それが今回のテーマである「選手のコンディションを左右する因子」です。無論細かい部分では、チームや選手のレベルによって差異はあると思いますが、大局で捉えればそれほど差はないものと確信しています。

 まずは下図を御覧下さい。

選手のコンディションを左右する因子

 この図は、選手のコンディションに影響を及ぼす因子を、選手の内面(点線内)と彼らを取り巻く外的環境に分けて描いたものです。

 まず、内的要因として、選手の心・技・体をつなぐ重要な役割を果たす意識についてです。中でも心、つまり脳は意識と直結し、体と技術それぞれのコンディションに何らかの影響を与えます。体は心によって動かされるからです(特に初期段階)。まずは頭で理解し、意識して反復することで身に付き、最終的に無意識化(自動化)されます。

 その過程にあるのがバイオフィードバックで、教師信号【teacher signal】との比較によってその差が小さくなるように反復練習をするのです。教師信号とはつまりコーチングであり、それが間違っていれば良い結果は得られにくいということを表します。それが外的要因としてかなりのウェイトを占めるのです。

 未経験者が教えるのと、元プロが教えるのとで大きな差が出るのはそのためです。「頭で考えずに体で覚えろ!」という声かけは、絶対におこなってはいけません。

 スポーツの現場において、選手はどうしても受け身的な存在であり、その度合いが強ければ強いほど、外的環境、特にコーチングの影響を受けます。

 また、コーチング以外の外的要因には、保護者や学校・会社関係者、専用グラウンドや室内練習場の有無なども含まれ、これらもやはり選手の意識(特にモチベーション)に影響しますので、注意が必要です。

 悪い影響の例をいくつか挙げてみましょう(経験者は語る)。

 ● 保護者が勝手に外部指導者を呼ぶ
 ● 会社によっては特定運動部への協賛金(例えば月500円)が給料から天引きされて、職場(スポーツに興味のない職員)の理解や協力が得られない(合宿や試合で数日不在になることや大きな大会で応援に駆り出されることに対し)
 ● 室内練習場がないことで、荒天により練習が事実上中止となる(名目は自主練習で指導者は不在)
 ● グラウンドが共用または狭くて練習内容に制限が出る(実戦形式の練習ができないなど)

 もちろん、選手は選手でその環境に適応する努力が必要ですが、当然限界があり、劣悪な環境に対しては無理に適応する必要はありません。部活動があるなら、ましてや強くなることを求めるのなら、コーチングスタッフや関係者は、環境の改善に最大限の努力をすべきです。

 いかがでしょうか?選手のコンディションを左右する主要因子は、環境(外的要因)と意識(内的要因)。これらを取り巻く複数の因子が良い影響も悪い影響も与えます。

 最近では、コーチングが細分化(専門化)されつつあり、いわゆるアナリスト(スポーツ経験者とは限らない)と呼ばれる人たちが技術面や戦術面に影響を及ぼすようになってきています。

 すでにプロの世界では、選手個人がそうした専門家と契約したり、計測機器を購入したりして、アウトプット(球速や変化球の質、スイング軌道など)の改善を試みるようになってきています。中には、チームの指導者とろくにコミュニケーションも取らずにフォームを変えてしまうなどの問題も起きており、今後データ分析などの新たなセクションを設けることは急務でしょう(すでに稼働している球団あり)。

 最後に、野球のコンディショニングを俯瞰した図を併載しておきます。呼称は何でもかまわないのですが、常にチーム全体のコンディショニングを統括するディレクター的な人材がもっともっと必要です。プロの世界では各専門家を適材適所配置することが可能ですが、アマチュアの場合は置けても一人。その一人がコンディショニングのすべてをこなすことなど絶対に不可能なわけですから、例えばトレーナーという呼び名にこだわることなく、またその固定観念に引きずられることなく、そうした立ち回りのできる人材を創出・育成すべきだと考えます。

 今後スポーツコンディショニングに関わろうとされる若い方々には、ぜひとも幅広い視野でコンディショニングというカテゴリーを捉えて頂ければと、切に願っています。

野球のコンディショニング俯瞰図

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