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横尾忠則 寒山百得展

神戸の王子公園駅から歩いて5分程度のところにある、横尾忠則現代美術館で「横尾忠則 寒山百得展」を見ました。

寒山と拾得は中国は唐の時代に生きたとされる伝説的な詩僧で、世俗から離れ詩作に耽る一方でぼろを身に付け奇行をはたらく。しかし、実は彼らの正体は文殊菩薩と普賢菩薩であるとか…。というような、今まで多くの画家たちがテーマとしてきた寒山拾得なのですが、横尾さんも彼らをテーマにしてコロナ禍の間に102点もの絵を描いたのです。もともとは、曾我蕭白の寒山拾得の新たな解釈から始まった探求だったそうですが、とどまるところを知らない横尾さんのイマジネーションが生み出した102点の寒山拾得図、百枚以上あるから寒山百得、なのですね。

去年の秋に東京国立博物館で開催されたものの巡回展で、私はトーハクまで見に行ったのです。その時の記事がこちらです↓

横尾忠則現代美術館入口

地元の美術館で同じ作品たちを見られることを楽しみにしていました。場所が変わることで、見方や面白さが変わってくるかどうか、ということも少し気になりました。

2021-09-03

こちらの美術館では、出品リストといっしょに「ちょこっとクロニクル」という二つ折りのカラーの解説書のようなものをいただけて、描いた当時に起きた出来事や、作品の簡単な解説が書かれていて鑑賞の参考になりました。
横尾さんの寒山百得の作品たちは、作品タイトルが日付になっていますので、作品を見ながら日付も見て、自分には何があった時期だったかな…なんていうことも考えたりしました。

2022-3-28

これ、周りに人の少ない涅槃図みたいでとても好きなんですが、前回のトーハクの時にも写真撮ってましたね。

2022-06-06

これは下に寒山と拾得が立膝で座っていて、その上に豊干(唐代の禅僧)が乗っかって座っています。ここから先、何枚かは組体操のような作品が並んでいました。この作品の3人が組体操っぽい姿勢だから、そこからの連想かなと思いました。
横尾さんは、これらの作品を毎日1枚だったり、時には午前と午後に1枚ずつ描いていたり、2,3日空けて描いたり、「空けて」と言ったって、すごいスピードで描いていったことに違いありません。その作品は毎日の連想ゲームのように、前日と何か繋がっているような、少しずつ変化させて続いていきます。

E=mc2 が書かれているシリーズ

連想ゲームのように連なっていく作品たち。右下は鈴木春信の錦絵「中納言朝忠」を再解釈して描かれたものだそうです。春信は、恋文を読む女性2人を寒山と拾得に見立てて描いていたそうです。←これは、いただいた「ちょこっとクロニクル」に書いてありました
それをスタートにして、毎日少しずつ何かを足したり引いたりしながら、だんだんキュビズムみたいになっていく寒山拾得なのでした。

2022-12-29

そしてそれらがこうなりました。すごいです。
私はイマジネーションの連続、発想の連続を感じながら、これは絵画による「筆の遊び(すさび)」ではないかと思いました。

2023-02-13

エドガー・アラン・ポー、江戸川乱歩、アルチュール・ランボー、ジョン・ランボー、乱暴者?もはや寒山拾得がどこにいるのか…あ、でも江戸川乱歩がトイレットペーパーを持っているし、ランボーが掃除機を持っているのでこの2人が寒山拾得なのでしょうか。

2023-01-14

顔輝の寒山拾得図を下敷きにしています。美術館の4階のコレクションギャラリーに、参考図像として顔輝や周文、鈴木春信などの、横尾さんが下敷きにした寒山拾得に関連した図像が展示されていました。こうした資料的なものの展示があるのは嬉しいです。(トーハクにはありませんでしたから)

2023-06-27

これが最後です。横尾さんが最初に描いた寒山拾得と同じ、曾我蕭白作品をもとにしているそうです。そして、この日は横尾さんの87歳のお誕生日だったとか!80代後半にして、この豊かな発想と描くスピードはとんでもないパワーだと思います。つい先日、園遊会で天皇陛下とお話しをされる姿がテレビニュースになっていた横尾さん。まだまだお元気で作品を制作し続けていただきたいものです。

キュミラズム・トゥ・アオタニにて

寒山百得展は8月25日まで開催されています。あともう1回は見に行きたいです。

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