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水泳でのゆっくり正しい動作、早い正しい動作は別物である

【著者 NESTA スイミングコンディショニングトレーナー 鳥飼 祥秋】

水泳選手であればよく、「ゆっくり正しく泳げなければ、全速力で正しい動作で泳げない」ということを耳にしたことはないだろうか?
トレーナーの観点から見れば、ゆっくりな動作で正しいフォームで泳ぐことと、全速で泳ぐことには、それぞれ異なる目的と技術が必要です。
両者は別物であり、そしてどちらも重要なスキルです。

今日はゆっくり泳ぐ、早く泳ぐ、両者に要求される能力について解説したいと思います。
是非参考にしてみてくださいね。

トータルケアラボラトリーでは水泳専門のトレーナー資格保有者があなたの水泳に関わるコンディショニングやトレーニングなどサポートさせていただきます。
予防医療とフィットネススポーツをコラボさせたパーソナルトレーニングジムです。
スイミングコンディショニングトレーナーである鳥飼が情報をブログにて配信しています。
是非、過去の記事も参考にしてください。

目次
1章.求められる能力

水泳は、ゆっくりな動作で正しいフォームで泳ぐ場合と全速力で泳ぐ場合において、異なる技術や身体能力が求められます。

ゆっくりな動作で正しいフォームで泳ぐ場合、水泳選手は基本的な技術と身体能力を駆使して効率的に進むことが求められます。

  1. テクニック: 正しいフォームを保つためには、適切なテクニックが必要です。例えば、フリーでは、頭を水面から少し上げて顔を下向きにし、体を水平に保ちながら腕を交互に大きく振ります。また、キックや蹴りも重要であり、足の力を効果的に使うことで推進力を生み出します。

  2. 姿勢とバランス: 水中での姿勢とバランスは重要です。適切な姿勢を保つことで抵抗を減らし、水の中での推進力を最大化することができます。背筋を伸ばし、体を水平に保つことがポイントです。

一方、全速力で泳ぐ場合には、別の技術と身体能力が求められます。

  1. ストロークテクニック: 全速力で泳ぐためには、ストロークテクニックの洗練が必要です。例えば、フリースタイルでは、腕の振り幅や速さ、キックの強さなどを最適化することで、より効率的に進むことができます。また、ターンやスタート時のテクニックも重要です。

  2. パワーと筋力: 全速力で泳ぐためには、パワーと筋力が必要です。水中での抵抗を乗り越えるためには、強力な腕や脚の筋力が必要です。また、体全体のコアトレーニングも重要であり、安定した姿勢を保つことができます。

  3. スタミナと持久力: 全速力で泳ぐ場合は、長時間にわたって高いパフォーマンスを維持するためのスタミナと持久力が求められます。適切な有酸素運動やインターバルトレーニングなどを通じて、心肺機能を向上させることが重要です。

2章.ゆっくり正しく泳ぐ

水泳選手がゆっくりな動作で正しいフォームで泳ぐためには、ドリル練習が必要です。ドリル練習は、特定の泳ぎの要素を集中的にトレーニングするための練習方法です。しかし、ドリル練習は全速力で泳いでも習得することができない理由があります。

まず、正しいフォームを身につけるためには、筋肉の記憶を作り上げる必要があります。水泳の動作は複雑であり、多くの筋肉群が協力して動くことが求められます。このような複雑な動作を正確に行うためには、筋肉のパターンを反復的に訓練する必要があります。ドリル練習は、特定の要素に焦点を当てることで、選手が正しいフォームを身につけるための筋肉の記憶を作り上げる役割を果たします。

しかしながら、全速力で泳ぐことは、正確なフォームを身につけるための障害となり得ます。全速力で泳ぐと、選手は速さや力強さに集中し、正確な動作を行うことが難しくなります。正確なフォームを習得するためには、ゆっくりとした動作で細かいニュアンスを意識する必要があります。ドリル練習では、選手はゆっくりとした動作で正確なフォームを身につけることができます。

また、全速力で泳ぐことは疲労を引き起こす可能性があります。水泳は体力を要するスポーツであり、全速力で泳ぎ続けることは選手の体力を消耗させます。疲労が蓄積すると、正確なフォームを保つことが難しくなります。ドリル練習では、選手はゆっくりとしたペースで繰り返し練習することで、正確なフォームを保ちながら効果的にトレーニングすることができます。

最後に、ドリル練習は泳ぎの要素を分解してトレーニングするため、全速力で泳いでも習得することが難しい要素も存在します。水泳は複数の要素が組み合わさって成り立っており、それぞれの要素を個別にトレーニングすることが重要です。ドリル練習は、特定の要素に焦点を当てるため、全体的な泳ぎの動作を習得するためには他のトレーニング方法も必要です。

2章.高速度技術、パワー、スタミナ、耐乳酸能力

水泳選手が全速力で正しいフォームで泳ぐためには、スピード別の練習が必要です。
全速力で泳ぐためには、テクニック、筋力パワー、スタミナ、耐乳酸能力の向上が重要となります。
ゆっくり泳いでもこれらの要素を習得することは難しいです。

まず、全速力で泳ぐためには正確な高速度テクニックが必要です。
水泳は非常に技術的なスポーツであり、正しいフォームを維持することが重要です。
例えば、正しいキックやアームストロークの動作を行うことで、水の抵抗を最小限に抑えることができます。
しかし、ゆっくり泳いでいる場合は、身体に課される負荷や条件が変わってくるためドリル練習で得たテクニックを活かすことができず、全速力で泳ぐための別のテクニックを身につけることが必須となります。

次に、筋力パワーの向上も重要です。
全速力で泳ぐためには強力な筋肉が必要です。
特に上半身の筋肉(背中や肩、腕)は水中での推進力を生み出すために重要です。
ゆっくり泳いでいる場合は、筋肉への負荷が少なくなり、筋力パワーを向上させることが難しくなります。

さらに、スタミナの向上も全速力で泳ぐためには欠かせません。
水泳は持久力を要するスポーツであり、長時間泳ぎ続けるためには十分なスタミナが必要です。
ゆっくり泳いでいる場合は、スタミナを最大限に鍛えることができず、全速力で泳ぐためのスタミナを身につけることは困難です。

最後に、耐乳酸能力の向上も全速力で泳ぐために重要です。
水泳は乳酸が蓄積しやすいスポーツであり、乳酸の蓄積が筋肉の疲労を引き起こします。
全速力で泳ぐためには、乳酸の蓄積に対する耐性を高める必要があります。しかし、ゆっくり泳いでいる場合は乳酸の蓄積が少なくなり、耐乳酸能力を向上させることが難しくなります。

3章.レースでは両社が統合される

水泳選手がレースで求められる能力は、ゆっくり正しく泳ぐ技術と全速力で泳ぐためのテクニック、スタミナ、筋力、耐乳酸能力がすべて統合されます。

これらの能力は別であり、全てが重要であり、どれか一つが欠けてしまうと選手のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

まず、ゆっくり正しく泳ぐ技術は水泳選手にとって基本的な能力です。
正しい泳ぎ方を身につけることで、水の抵抗を最小限に抑えることができます。
また、効率的な泳ぎ方はエネルギーの浪費を防ぎ、長距離レースにおいて持久力を維持するために重要です。
ゆっくり正しく泳ぐ技術は基礎となる能力であり、これが欠けてしまうと選手は無駄なエネルギーを消費し、速度や持久力の低下を招く可能性があります。

次に、全速力で泳ぐためのテクニックが求められます。
競技水泳では、速さが勝利を左右する重要な要素です。選手は泳ぎのテクニックを磨き、最大限の速度を出すことが求められます。
例えば、スタートや折り返しのターン、腕や足の動きなど、細かなテクニックの改善によってタイムを短縮することができます。
全速力で泳ぐためのテクニックは、競技水泳において勝敗を分ける重要な要素であり、これが欠けてしまうと選手は最大限のパフォーマンスを発揮できなくなります。

さらに、スタミナは水泳選手にとって不可欠な能力です。
長距離レースでは持久力が求められるため、選手は長時間泳ぎ続けることができるように十分なスタミナを持つ必要があります。
スタミナはトレーニングによって向上させることができますが、十分なスタミナがない場合、選手はレース中に疲労し、パフォーマンスの低下や早期に疲労が溜まります。

また、筋力も水泳選手にとって重要な能力です。筋力は泳ぎのパワーを生み出し、速度を向上させる役割を果たします。
特にスプリント種目では、高い筋力が求められます。筋力はトレーニングによって向上させることができますが、筋力が不足している場合、選手は速度やパワーの発揮に制限が生じ、競争力を失います。

さらに、耐乳酸能力も水泳選手にとって重要な能力です。長距離レースでは乳酸が蓄積し、筋肉の疲労を引き起こします。
耐乳酸能力が高い選手は、乳酸の蓄積を遅らせることができるため、より長い距離を泳ぎ続けることができます。
耐乳酸能力はトレーニングによって向上させることができますが、耐乳酸能力が低い場合、選手は早期の疲労感や筋肉の酸欠を経験し、パフォーマンスの低下を招きます。

水泳選手がレースで求められる能力は、ゆっくり正しく泳ぐ技術と全速力で泳ぐためのテクニック、スタミナ、筋力、耐乳酸能力がすべて統合される必要があります。

これらの能力は個別に重要であり、どれか一つが欠けてしまうと選手のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。

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