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二次創作ジャンルでひとり評論同人誌を出した話

 おそらく二次創作界隈では誰も作ったことがないであろう種類の同人誌を制作し頒布するまでの話。


初めての評論同人誌つくり

ネット記事にまとまりきらず同人誌へ

 最初は私の推しの男、ワンピースの「サンジ」がなぜ自己犠牲的行動をするのか解釈したかっただけなんだ。自分ひとりでは見落としている描写も多く、プライベッターで現時点での解釈をまとめTwitter上で他のサンジ推しの方々の解釈や意見を伺っていた。

 ところが解釈を進めるうち、そもそも解釈とは何か、読解をした上で解釈しなければならない、読解的解釈における仮説立てと原作検証のやり方、文脈の読み方、読者の情報認知傾向、作者の意図の読解、作者の情報提示がなぜ読者の印象に残らないのか、ワンピースの世界観の文脈読解の話までに発展し

 現時点の解釈を説明するための記事を書くにも、その前提の前提の前提の前提の前提の前提の説明が必要になる。解釈記事の文字数の総計が3万文字を超えたところで「あっ、これ同人誌にしないと大量の前提を共有しながら仮説と自論を展開させるのは無理だわ」と察した。

 それでも最初は40pくらいの本にまとめる予定だった。しかしそれから更に数ヶ月をかけて考察を重ね、

これはまだ書き途中である。目次を見るたびにサンジがゲシュタルト崩壊した。

 原稿を書き終えた頃にはGoogleドキュメント上のページ数は135ページ・10万文字まで膨れ上がった。

 えっ……135ページ・10万文字…………?

 原稿作業の終盤はメモリ不足でGoogleドキュメントがやたら重くて操作が大変だったのを覚えている。

 こうして10万文字に及ぶクソ厚評論本を生み出すことになった。ちなみに10万文字は書店で売っている一般的な新書の内容量だ。

 サンジ単体の評論本となると、需要はキャラの内面の解釈を深堀りしたい女性オタク層になるだろう。なので私は赤ブーのワンピースのプチオンリーに申し込んだ。

赤ブーに申請したサークルカット

 ︎︎フォロワーには「怖い」「コミケの評論島で出すやつ」「文学フリマで出すやつ」「二次創作と相性最悪で草」などと大好評だった。

 ︎︎出す場所を間違えた気がしなくもない。


制作例のない新しい方法での同人誌制作

 ところで私はこれまで漫画の同人誌しか作ったことがない。漫画の制作と言えばCLIP STUDIO PAINT だが、当然これは漫画制作ソフトであり評論本には向いていない。

 小説の場合はWordからPDFに変換して入稿できるが、今回はどうしても図解を入れたり読みやすい見出しに拘って作りたかった。

こういう図解を入れたかった

 そこで技術書同人誌を参考にしようと思った。図解込みの解説本として一番形式が近い。世の中には技術書同人誌専門の同人即売会「技術書典」がある。

 きっと技術書同人界隈(?)では図解込みの解説系同人誌の制作ノウハウが共有されているはずだ。さっそく制作方法を調べてみた。

 ︎︎面白いもので、技術書同人誌関連の記事はだいたいQiitaというエンジニアのノウハウ共有サイトに投稿されている。Qiitaを読み漁ってなんとなく掴めてきた。

使用エディタは Atom か VS Code を使い、文章自体は Git で管理して、Docker 上で Re:VIEW でビルドする。

Qiitaとかなんかで色々調べた結果の要約


 ︎︎は?なんか開発してんのか?

 なるほど分かった。なぜ同人誌制作の記事がQiitaで書かれるのかもよく分かった。あの人たちは技術書を制作しているのではない。技術書を「開発」しているのだな。

 にわかプログラミングしか知らない私が扱うには少々厳しい。何より見出しなどのデザインを変更するにはInDesign側でテンプレートを作成し何かと連携して何かをしなければならないようだ。

 そもそも本を作るならInDesignが最も適している。なのに候補にしなかったのは新たに習得する時間がないからだ。テンプレート作成と原稿の流し込み作業に使える時間は2週間しかない。

 時間はない。使い慣れた直感的に扱えるツールで作りたい。欲を言えば図解は別途制作せず文章の流し込み作業と同時にその場で作りたい。130以上のページ数を扱うのだ、Illustratorなんてクソ重ソフトもナシだ。

 私はXDで制作することにした。 Adobe XD はUIプロトタイプ制作ソフトだ。ウェブサイトの画面デザインを作ったりスマホアプリの画面デザイン設計に使うソフトらしい。

 当然、どう考えても書籍の制作に使うソフトではない。

 いくらググってもXDを使った同人誌制作の例など一つも存在しない。しかし理論上はたぶんいける。書籍のデザインをテンプレート的に扱えるし、印刷所にそのまま突っ込めるPDFが作成できる。

  A5サイズを 595*420px(72dpi)という同人誌制作では見たのとない極小サイズで管理しながら、これ本当にまともに印刷できるんか?と不安になりながら作った。理論上はいけるんだ、理論上は。

XD上での編集作業画面
文章の流し込みと同時に図が作成できるのが楽だった

 漫画の同人誌は使いやすいフォントや文字サイズは全てネットで検索すればまとめられているが、XDでの同人誌制作にそんな情報はない。全く情報がない中で何度も調整しながら最適のフォント・行間・文字幅を探すのは大変だった。

 何度もデータを調整してはコンビニで印刷をし、またデータ調整をした。今となっては有意義な体験ができたと思う。

コンビニでの試し刷り 30枚は試し刷りをした

 全ての図解と文字を流し込む頃にはページ数は原稿(原文)時点での135ページからさらに増え、200ページ近くまで膨れ上がった。

XDの編集画面

 さすがはXD、アートボードを200枚並べてもサクサク動くことには驚いた。しかし流石にしばらく使うとカックカクになるので何度も再起動しながら編集作業を行った。

 当然ながら制本用のソフトではないためノンブル機能(ページ数を自動入力するやつ)なんてない。200ページ分のノンブル(ページ数の表記)は全て手で入力した。印刷所からは何度もノンブルミスの連絡が来て修正・再入稿をした。一緒に確認と連絡を繰り返した印刷所さんには頭が上がらない。

 XDを使った評論同人誌の作り方はまた別途記事にまとめよう。


初めての引用同人誌と無断転載の指摘

 今回の本では読解を重点的に行い、曖昧なファン同士の解釈ではなく原作の検証と文脈読解に準じた解釈と考察をしている。原作のコマ画像の引用なしで説明は不可能だ。

原作のコマ画像を元に文脈の読み方を説明している

 ︎︎「引用」は今までオタクしつつ読んできた個人の考察・評論サイトで使われている例を見たことがあり、なんとなくの概要は知っている。条件が揃えば日本の法律上許可されている範囲で著作者の了承なく掲載が行えるのだ。論文の文献引用をイメージすれば分かりやすいだろう。

 しかし流石に同人誌として頒布するとなると気軽には行えない。

 まず引用するにあたって著作権法と引用について調べた。だが文化庁のサイトを見ても概念の言語化しかなく条件がよくわからない。そこで過去に漫画の無断コマ引用で訴訟され勝訴した商業本を購入し使用例を確認、その裁判内容を読み法的解釈の論点を確認。その他各弁護士サイト・有料弁護士サイトに登録し様々な事例での弁護士の見解・引用に当たるかが焦点になった各種判例を調べ情報収集した。

 法律は概念の言語化だけ見ても素人には解釈できないので、実際の判例または判例解説を読んで「公正な慣行・必然性・主従関係」などの法律の実務的基準がどこにあるのかを確認するのが良さそうだ。

 今回の本は二次創作ではなく評論だ。引用部分と自論が明確に分かれ、自論を主体とした自論展開のための論拠としての文献引用だ。

 ︎︎過去の漫画コマ引用における訴訟では作者の批判目的であったことから訴訟されたようだった。今回の評論本の内容が作品本編を読んでないと理解できない内容であり出版社の利益侵害になる恐れがないこと、出版社の企画と競合し得ない内容であること、卑猥な内容を扱うなどの作品に悪いイメージを与える内容でないこと、小規模なファン活動の範疇に収まること。出版社に迷惑がかかる引用にはならないことを確認の上、

 ︎︎諸々の条件を守ることで著作権法における引用の要件(日本の法律で定義されている著作物の無断使用可能な範囲)を満たすことができると確信した。使用条件さえ守れば著作権グレーの二次創作や二次創作グッズ販売と異なり、完全な白だ。


 ︎︎ただ法律上問題がないことと実際に頒布するのは全く異なる。だって、頒布するのはあの無断転載への嫌悪感の強い二次創作界隈だ。

 まずサンプル投稿は本当に心配だった。おそらく無断転載の指摘が来るだろうなと思った。

 トレパク冤罪だってよく見かける。悪い方向に界隈の正義感が働いて炎上なんてしたら収集が付かない。私がいくら説明したところで学級会になったら各々が自分のお気持ちや作者の代弁を披露するパターンに入りどうにもならなくなる。正直すごく不安だった。

 ところが私の心配とは裏腹にサンプル付きの告知は100RT以上拡散されたが、RT先のコメントも好意的な反応ばかりで無断転載の指摘は一切なく、炎上はしなかった。界隈住人の教養の高さに感謝である。

 ただ指摘マロが3件ほど届いた。2件は説明をして穏和に着地したが、そのうち1件は本当に大変だった。単純な無断転載の指摘ではなく、無断転載ゆえのマシュマロ掲載の削除要求だったのだ。

 本書では頂いたマシュマロの意見を論拠として提示しながら多くの読者が同じ部分で読解困難に陥ることを説明、そこから作者の情報提示方法の問題点を考察している。

マシュマロが使われているページの一例
告知サンプル投稿時に届いたマシュマロ

 まずマシュマロは匿名ツールなので送り主を特定できない。事前に許可を得ることは不可能だ。そのためマシュマロは利用規約により知的財産権(著作権)は受信者にあると規定されており、送信者に使用についての指摘権利はない。ただ流石にマロを掲載させて頂いている立場のため穏和に解決したかった。

 あっなるほどこう来るか。これは早急に削除要請に応じてその場を収めるのが懸命だ。

 マロ主は強く削除要求をしていたが、なぜか私に送ったマロがどれかは一切記載がなかった。なので本人確認も兼ねてマシュマロの回答ボックスをスクショ撮影しメールまたはDMから連絡するよう連絡した。

 が、連絡が来ない。印刷所には連絡を入れて製本作業を止めてもらっている。

 2日経過したが、折り返しの連絡が来ない。

 ︎︎ついにそのまま連絡が来ることはなく、音信不通になった。

 ︎︎えっ……?

 えっ………そんなことある?自ら削除要請をしたのに音信不通はいくらなんでも無責任すぎないか。

 ︎︎この影響で製本開始が遅れ、会場頒布が不可能になった。

 今思うと一方通行の匿名ツールでやり取りが必要な連絡をしてくる時点でまともに取り合ってはいけなかったなと思う。会場頒布が間に合わなかった時は正義感だけ溢れる無責任なマロ主に「お前…お前ェ…ッ!」と腸が煮えくり返ったが、これは私の判断ミスだ。

 私の苦い失敗を反面教師にしてほしいが、もしこれ系のマシュマロが届いたら即DMに誘導しよう。双方向の連絡可能な方法以外では絶対に対応してはいけない。

 さらに通販サイトの運営に著作権侵害の連絡をし頒布を差し止めようとする者もいた。いやもう本当に、本当に大変だった…。当然だが日本の法律で許可されている範囲で使用しているので販売停止になることはない。ただ対応に回ったサイト運営には申し訳ない気持ちになった。

 以降はマシュマロには回答必須の連絡は必ずDM経由で行うよう記載し、サンプルに下記のような文言を追加した。

コツは第三者の意見も書き、私個人の主観的判断ではないと認識させることだ。

 ︎︎それ以降、無断転載の指摘連絡は一切来なくなった。なるほど、サンプル上での説明記載は必須だ、本当に大事だ…。

 マシュマロについてはもう1件ほどマシュマロの無許可使用の連絡があったのだが、できればその、せめて匿名メッセージ送信サービスなので事前に送り主から許可を取ることが不可能なことだけは知っていてほしい。

 ちなみにリプ等でやり取りした方々の文章利用はDMを通し各自使用許可をもらったが、逆に励ましや応援の言葉まで頂きみんなすごく優しかった。マシュマロ経由の要求を見てみんなこんなに権利主張するの!?と人間不信になりかけていたが、ほとんどの方は優しく寛容なのだと感じた。ただ無断でいきなり使われる感覚との差はあると思うしそれは仕方ない。

 私の判断ミスもあり一部の指摘対応にかなり追われたが、全体的な所感としては引用を特別敵視する方はごく僅かのようだ。

 おそらくぱっと見た時点で明らかに出典元記載の自論展開の論拠としての文献引用であることが分かる見た目なら、無断転載への嫌悪意識の強い二次創作界隈でもほとんどの方は無断転載と引用の区別がつくようだった。

 ︎︎誰も見たことのない、見慣れない手法で作る同人誌はこのような事態が巻き起こるのだなとしみじみ感じた。それでも界隈の殆どの方がこのような同人誌に寛容で歓迎してくれたことはいちオタクとして大変嬉しいものであった。

 ︎︎※私は引用が必須な評論内容だったため引用し、自分で調べた上で自己責任で同人誌を発行している。当然リスクはあるので(このリスクは全ての二次創作同人誌・二次創作グッズ販売に言えることだが)ご自身で引用される場合は必ずご自身で調べ自己責任で行ってほしい。


色々あって巨額赤字を出す

 どんだけ苦難に見舞われれば許されるんだ…。私の胃壁のHPはゼロになりかけた。色々あって13万円の赤字を出した。

 長くなるので別の記事にまとめるが、この記事はXで2.2万RPくらいのバズが発生した。

そして会場頒布へ


 一回目の頒布時は上記のゴタゴタで会場頒布ができなかったが、二回は無事会場で頒布することができた。

 ︎︎せっかく分厚い本を出すのだからと二回目の頒布時はカバーと帯も印刷した。カバーと帯の手巻き作業は1冊あたり最低でも5分はかかり、イベント前日は深夜4時まで巻き作業をした。当日はほぼ徹夜だった。

カバーと帯は手作業で巻いた。


 ︎︎せっかくだからと設営も拘った。書店の販促コーナーの画像を収集しそれっぽさを重視しながらデザインを練り、ディスプレイ棚と手持ちの設営道具で組める設営を考えた。

XD上での設営思案(1回目の会場頒布できなかった時のもの)

 ︎︎設営思案を元にIllustratorで設営ディスプレイに合わせ型紙を作成し、イベント前日にキンコーズに行き特殊用紙で印刷し、カッターで裁断した。


評論本を頒布した時の実際の設営

 ︎︎欲を言えばもう少し書店の販促コーナー感を高めたい。これは次回にグレードアップしよう。

 ここまで書いてきたように、私は高圧的な指摘マシュマロや通販サイトの運営への通報を食らってきている。会場頒布は本当に、本当に心配だった。

 例えば某ゲーム本編キャプ使用同人誌が頒布された時は参加者が警察に通報しイベント会場に警官が駆けつける事態となっている。同じように評論本や引用をよく知らない正義感が強い人に通報されたらどうしよう…解釈違いだと眼の前で本を破られたりするのかな…とここまでの出来事もありネガティブ不安思考に拍車が掛かっていた。

しかし実際の頒布は全く予想外の方向にいった。


今までで一番声をかけられた

 私は過去数回、コミケ、赤ブー、その他小規模同人即売会にそれぞれサークル参加してきた。その中で驚いたことに今回が最も声をかけられた。手に取ってくださった方の半分以上の方が声を掛けてくれたと思う。もちろん好意的な方の声がけだ。

 手に取られるたび掛けられる「ずっと楽しみにしてました」の声が本当に嬉しかった。売り子が対応したあと、イベント終了間際にどうしても作者に挨拶がしたいと再度スペース寄ってくれた方もいた。本当に有り難さしかない。

 また嬉しかったのが通りすがりに興味を持ってくださった方だ。「えっ10万文字!?これ全部考察なんですか?小説ではなく!?」なんて驚かれたりして少し誇らしい気持ちになった。

 「FILM REDからハマって、考察が好きでyoutubeの考察とか見漁ってるんです。」なんて声もあった。考察好きの方がたまたま通りがかって見つけてくれたのかと思うとまた嬉しかった。というかシンプルに新規さんがワンピにハマってる声が聞けたのが嬉しすぎた。

 本当に今まで一番、身内ではない界隈の方々に沢山声を掛けられお話したかもしれない。私も買う側として、声をかける勇気がどれだけの熱意や好意で生まれるのかをよく知っている。声をかけてくださった方々には本当に感謝しかない。

 いったい今までの正義感の強い怖い方々はなんだったんだ!?と思うくらいみんな優しかった。そうか…人間って、優しいんだ…。私がネット上のやり取りで積もり積もった人間不信は現実の人間と関わることで解消された。現実の人間と関わるのって…大事だなあ…。

 ネット上だと好意や寛容な方の声はなかなかメッセージとしては届かず、ごく一部の偏った層の強い正義感の高圧的な声ほど届いてしまう。現実のイベント会場で頒布するとは、自分の頒布物のネットフィルターを通さない純粋な反応が受け取れる場所なのかもしれない。会場で頒布して本当に良かったとしみじみ感じた。

 もう、本当に、ここまで書いてきた通り苦難に苦難を重ねてすっっっっっっっごく大変だったので、たくさん声をかけられて、通りすがりの方に興味を持たれて、今まで苦難を乗り越え来たかいがあったんだなと泣きそうだった。


意外な需要傾向

 この評論本は今まで通販二回、会場頒布1回を行ってきた。意外に思ったのその需要傾向だ。

 二次創作系のサンジ推しの方よりも、ドフラミンゴやロー周りで二次創作している方、もしくはコスプレ勢によく反応を頂くのだ。

 今回の本は私のサンジの解釈がどうやっても綺麗にまとまらなかったことをきっかけに原作読解を本格的に行い、なぜ尾田先生の意図したサンジ像が読者の印象に伝わらなくなったのかを考察した評論本だ。

 当然、界隈の解釈を検証して曖昧な印象から生まれた解釈を捉え直したり、私たちの認知バイアスから切り込んだ言及が多々ある。「本格的な作品読解」はどうしても「人々の感性による自由な受取り方」と相性が悪い一面がある。

 よく考えたらサンジ推しを中心とした二次創作勢は自分の解釈を元に創作をしてきているのだから、自分の解釈を大切にしたいというのはそれはそう…。Xのリポスト先でも「気になるけど自解釈が揺らぐのが怖い…!」と葛藤されている方もいた。私も自分の解釈を大切にしている方はぜひ大切にしてほしい思いだ。

 その結果、サンジ推しの二次創作勢よりもサンジ推しではないドフラミンゴ・ロー界隈の方々に興味を持たれたり、サンジ推しのコスプレ勢に興味を持たれたのはなかなかに興味深い傾向だった。


ところで感想が来ない

 あのな…感想がな…全く来ないんだ…。それなりの部数は出しているが今のところ感想フォーム(マシュマロ含む)経由の感想は現在1件のみだ(何度も読み返して噛み締めている)。

 そもそも「質量がデカすぎて読まれず詰まれてるだろうな」とか「内容が難解すぎて投げ出されたかな」とか「解釈違いでブチギレたかな」「読んではいるけど200pは長すぎて読みきれないんだろうな」とか「もしかしてそんなに中身が詰まらないのか!?」とかいくらでも理由は思いつくのだけども。

 あるフォロワーの言葉を見て納得したのだが、どうやら同人誌は「めっちゃ恋愛とかめっちゃエロのめっちゃ分かりやすい内容ほど感想が来る」らしい。私も人生で唯一1回出したエロ同人誌が人生で一番感想が来たので納得してしまった。

 もし手に取った方がいらっしゃったら、まだ読み途中でもいいので一言感想を頂けたら嬉しい。


同人よ、自由であれ


 何もかもが初めての体験だった。初めて書く10万文字に及ぶ考察。初めての評論本制作。XDによる同人誌編集。引用にあたっての法的論点の調査。なにもかもが手探りだった。

 音信不通になった削除要請マロ。それによって印刷所への納品が遅れ会場頒布ができなかったこと。通販サイトの運営への通報。生まれて初めての同人誌での13万円の赤字。なにもかもが胃が痛かった。

 かつてないほど掛けられた声、感謝や驚きの言葉、嬉しそうな声、新規さんとの出会い、差し入れ、なにもかもが人の暖かさを感じ苦難の分だけの喜びになった。

 周囲と異なることをするのは誰だって怖い、ゼロから作り方を考え試行錯誤するのは面倒で大変だし、白い目で見られるかも知れない、どれだけ頑張って作っても二次創作界隈の中で誰にも見向きもされないだろうなんて何度も考えた。でも何かのカプに夢中になる方がいるように、読解系考察という珍しい楽しみ方でも同じようにそこに興味がある方はいる。

 作品の楽しみ方は二次創作だけじゃない。作品への楽しみ方の情熱のなかで生まれるのがジャンル作品の同人誌だ。そして同人はいつだって同じことに興味のある「同士」に伝えるために作るものだ。

 ジャンル作品の同人=二次創作という認識が当たり前になっているのなかで、二次創作に限らない、作品に対する様々な好きや楽しみ方のかたちと、それを作品にまで作り上げるオタクの情熱に燃える者が界隈のどこかにいることを知ってもらえたら嬉しい。



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