バルミューダ「The Cleaner」の商品開発はどこが優れているのか?|特許屋目線
昨日お医者さんに処方してもらった湿布のおかげで腰痛が治まってきたヤマダです。おぉ経皮吸収の力よ!
今日は話題の新商品を特許屋である弁理士の目線で眺めてみようという企画。取り上げる商品はバルミューダ・初の掃除機「The Cleaner」です!
あのバルミューダが今度は掃除機を作った!
最近、こんな記事を見つけました。
バルミューダ初の掃除機が「圧倒的に気持ちいい」のはなぜ? テクノロジーの細部を社長が語る!|GetNavi web
バルミューダと言えば、とにかく美味いトーストを焼く、これだけに特化した「The Toaster」をはじめ、ユニークな家電を提供する注目のメーカーです。
そのバルミューダが今度は掃除機を作ったとなれば、覗いてみたくなるのが人情です。ということで、今回取り上げるのが、「The Cleaner」です。
ヤマダは家電芸人ではなく特許屋(弁理士)です。なので、性能や使い心地というよりは、ものづくり・商品開発という視点で見ていきます。
ポイント①:スティック型掃除機に目を付けたところ
「The Cleaner」はいわゆるコードレスのスティック型掃除機です。
今流行のお掃除ロボット(例えばルンバ等)ではない。ここが良いんですよね。
お掃除ロボットは家電の中ではハイテクの部類です。ルンバを作ったアイロボットのようにロボット技術の蓄積がある企業の方に一日の長がある。ここに追いつくのはなかなか大変。
でも、バルミューダはそこには行かず、どちらかと言うとローテクのスティック型掃除機に目を付けた。
スティック型掃除機に参入している企業は多く、レッドオーシャン。それでも、ローテク故に工夫次第で面白い商品が作れる可能性があるジャンルです。
バルミューダにはユニークなアイデアと商品企画力があり、斬新な家電を作ってきた実績があります。今までの蓄積を活かせば、競合品に圧倒的な差を付けることも十分可能、と踏んだのでしょうね。
ポイント②:効果を実感しやすい「ホバーテクノロジー」
「The Cleaner」は「ホバーテクノロジー」という独自技術を搭載しています。
軽くて自由自在な操作感。「ホバー」という言葉を裏切らない、浮遊感覚の掃除を体験することができるのです。
BALMUDA The Cleanerの動き|GetNavi
この「ホバーテクノロジー」は、埃を掻き込むブラシヘッドを2基搭載した「デュアルブラシヘッド」と、ヘッドと本体を繋ぐ「ユニバーサルジョイント」によって実現されています。
通常の掃除機にもブラシヘッドは付いていますが1個だけ。回転方向は一方向。そうすると、ブラシの回転方向に逆らう方向にヘッドを動かそうとすると、当然、引っかかるような重い操作感になってしまいます。
また、ヘッドと本体を繋ぐジョイントは曲がる方向が決まっていて、それがヘッドの操作を硬直化させていました。こういうのが地味にイラッとするわけですよ(笑)
これに対し、「The Cleaner」は、2つのブラシヘッドを搭載し、これをともに内側に回転させることで床との摩擦を減らし、浮いているような軽い操作感を生み出しています。そして、前後左右に自由に曲がる構造のユニバーサルジョイントでヘッドの操作性を向上させることにも成功しているのです。
ロボット掃除機は勝手に掃除をしてくれるので楽にはなっているんです。でも、掃除機が自分の手を離れているために効果を体感し難いとも言えます。
これに対し、実際に手に持って操作するスティック型掃除機は、従来のスティック型掃除機と使い比べてみると操作性(効果)の違いが一目瞭然で体感しやすい。
売り場で使ってみた人は、「これ、すげー!!」と感動して迷わず買ってくれるわけです。
ポイント③:スティック型掃除機の構造を根本から見直した
「The Cleaner」は従来のスティック型掃除機の延長線上にはなく、新たに構造を設計し直しています。
普通、軽い操作感を得たいと思ったら掃除機本体の重量を減らそうとするんじゃないですかね? でも、「The Cleaner」は従来品よりも重量自体は重くなっています。ブラシが2つあり、回転させるためのモータも2つありますからね。当たり前。
実際の重量は重くても、使っている人の操作感が軽くなればいい。そういう発想で出来上がったのが「ホバーテクノロジー」というわけです。使用時の動画を視ると分かりますが、掃除機というより箒やフロアワイパー(例えば、クイックルワイパー等)のような操作感です。
斬新な商品というのは、従来品の改良では生まれません。必要な機能を得るための最適な構造を考え直すという作業が必要です。その作業を愚直に行っているのが、バルミューダの強みとも言えそうです。
まとめ
今日のまとめです。
バルミューダの「The Cleaner」の凄いところ
① お掃除ロボットではなく、スティック式掃除機に目を付けた
② 使った人が効果を実感しやすい部分に工夫を加えた
③ 従来のスティック型掃除機の延長線上で考えず、掃除機の構造を根本から見直した
バルミューダの製品は従来品より性能や機能を向上させるというよりも、ユーザーが「何となく不便だなぁ」と思っているところを確実に拾っています。そこから、「こんな商品ならどうですか?」と、ユーザーに新しい提案をしているところがいいんですよね!
今日はこの辺で。
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