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アイヌ料理とテディベア

シアター7のスクリーンで「ゴールデンカムイ」のエンドロールが流れ終わると、ウサギは飲み終えたアールグレイとコートを手に、ゆっくりと立ち上がった。「今までに見たことの無い世界観が印象的だったわ」

ウサギが『ゴールデンカムイ』で思い出すのは、大学時代のゼミの先生のこと。先生の布教活動はとても熱かったが、その時のウサギは、この作品にあまり興味を持てなかった。それでも、心のどこかに引っかかっていたのか、映画化されたことを機に観にきたのだった。

「アイヌの文化が随所に散りばめられていて興味深かったね。『チタタプ』という言葉を覚えたよ。不死身の杉元とアシリパの絆の強さもよかった。違う文化に生きる二人だからね」隣の席に座っていたカメも、ゆっくりと立ち上がった。

「そうそう『チタタプ!』。リスや鹿の肉を叩いて作るあのアイヌの料理、いったいどんな味がするのかしらね。食べてみたいわ」とウサギは興味深そうに目を輝かせた。

一方、カメは戦闘シーンを思い出していた。「僕は人と熊との戦いが心に残ってる。熊といえば、僕の中ではテディベアだったから。野生の熊との戦いはとても怖かったよ」

「それにしても、始まった途端に一瞬であの世界に持っていかれたね」とカメが言うと、ウサギも「ゼミの先生が夢中になっていた理由がわかった気がする。原作も読んでみようかな」と言葉を返した。

「私も感じたわ。やっぱり絆が大切ね」ウサギは手を差し出すと、カメの手をしっかりつかまえた。二人は映画の話で盛り上がりながら、ゆっくりと映画館を後にした。

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