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ヘリングに首ったけ

図書館の中で、いつものように静かにページをめくっているカメの席へ、珍しく何かを手にしたウサギが近づいてきた。 「カメくん、その帽子に付けているのは何?」ウサギはカメの横に置いてある帽子に目を向けながら、彼に尋ねた。

「キース・ヘリングのピンバッジを付けてみたんだけど。どうかな?」と、カメははにかみながら答えた。 「バッジなのは分かるけれど、どうしてそんなにたくさん付けたの?」ウサギは不思議そうに首を傾げた。

「ヘリングの展覧会に行ったあと、彼の作品にすっかり魅了されてしまって、ネットでプチッでしていたら、気がついたらこうなっていたんだ」と、カメはゆっくりと答えた。

「カメくんって何かにハマると、とことんいくわよね。それは何? そのスマホケース。それにその靴下は? 全部ヘリングなの?」と、ウサギは彼の持ち物を眺め回しながら、呆れたように笑った。

カメは、コホンと小さな咳払いをすると、「ところでウサギさん、その手に持っている分厚いものは何かな?」カメはさっきから気になっていたことを口にした。「これ?これは、その、あれよ」と、それまでとは打って変わって、ウサギは急に口ごもった。

「うわっ、凄いね。全部ヘリングのポストカードなの?何枚あるんだろう」とカメが驚いて目を丸くすると、「凄いでしょ。手に入るものは全部揃えたのよ」と、開き直ったウサギは胸を張った。

キース・ヘリングの展覧会に行ってから、二人ともわかりやすく、彼のアートの虜になっていた。「六本木のヘリング展は終わっちゃったわね。でも、4月からは兵庫県立美術館で展覧会があるわ。今から楽しみー」そう言うウサギを、カメは優しく見守っていた。

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