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だるまさんと招き猫
その日の夕暮れどき、ウサギとカメは川崎大師に足を踏み入れた。そこで二人が目にしたのは、長く伸びる人の列だった。ウサギは目を見張った。「凄いわね。こんなにたくさんの人が集まるなんて」
10年に一度の大開帳奉修の期間中だけ、弘法大師の直筆と伝えられる『南無阿弥陀佛』が刻まれた護符、赤札が手に入る。人の列には何か特別な力が働いていた。
参拝のあと、二人は仲見世通りをゆっくり歩き始めた。並んでいるお店には、無数のだるまが飾られていた。ウサギは呟いた。「赤いだるまが多いわね。それに、どれもこんなに丸くて、ころがりそう...」
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カメは静かに頷き言葉を繋いだ。「赤は疫病を避ける色とされている。丸い形は何度倒れても立ち上がる意味を持つんだ。でもほら、ここに青い龍のだるまもあるよ」
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ウサギは別の棚に駆け寄った。「見て、この猫ちゃん。 めっちゃ可愛い!」彼女の目の前には猫が並んでいた。それぞれの猫は何とも言えず愛らしく、小さな幸せを手招きしているかのようだった。
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カメに腕を引っ張られ、やっとのことで猫から離れたウサギは、仲見世通りに戻るとすぐにまた足を止めた。「釜あげわらび餅だって。美味しそうね!」
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二人はわらび餅を手にすると、そっと口に運んだ。「温かいわらび餅が、ふわりと柔らかなきな粉に包まれてゆっくりと溶けていくわ」ウサギは目を閉じ、その味わいにじっくりと耽った。
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「たるまを眺めて、猫ちゃんを愛でて、わらび餅を味わったわ。心もお腹も満たされてとても幸せなの。これはきっと、何かいいことが起こる前触れね」ウサギの言葉は、賑やかな仲見世通りにそっと溶け込んでいった。
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