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卒業からみえる景色

「おっはよー!みんな今朝も元気かなー?『ウサギのティースプーン』の時間だよお」その日、ウサギはいつものようにラジオ番組を始めた。スタジオには、グループの卒業を控えたアイドル、星野ルナがゲストとして招かれていた。リスナーからルナへの質問が、当然のように殺到していた。

「最初の質問はラジオネーム『図書館のカメ』さんからです。『ルナさんはどうして卒業しちゃうの?』というド直球の質問ですね。ルナさん、いかがでしょうか?」ウサギは、目の前でちょっと緊張気味に座っているルナに元気よく声をかけた。

ルナはコホンと声を整えると、言葉を慎重に選びながら話し始めた。「私はセンターになれた時が最高に楽しくて、これまでの努力が報われたと思いました。夢が叶ったんだと。その年は最高の一年でした。それからですね、卒業を考え始めたのは…」ルナの心地よい低音ボイスがスタジオに響いた。

「4月から環境が変わるリスナーさんも多いと思います。そんなリスナーのみなさんに、ルナさんからメッセージをいただけますか?」ウサギが流れ良く促すと、ルナは小さく頷いた。

「これまでずっと続けていた事の、一つ一つの最後が終わっていくのはやっぱり寂しい。でも、これからの事を考えると、卒業は成長のために必要なこと。今までの経験はこれからのための準備だと思っています。これからの新しいとても景色が楽しみです。みなさんも一緒に、前を向いていきましょう!」

スタジオを後にしたウサギの手には、ルナの直筆サイン入りのCDが握られていた。「ルナさんの卒業で落ち込んでいたカメくんも、これで元気になるといいのだけれど…」彼女は想いを振り切って図書館へ足を向けた。

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