お絵描き水族館
薄暗くダウンライトが灯るその部屋の中で、ウサギはピンク色のクレヨンを手に、そっと絵を描き進めていた。彼女は時折、描いたものから目を離しては遠くを見つめ、またゆっくりとクレヨンを動かした。
小さな手はためらいながらも、確かな意志を持って色を加えていった。やがて、静かな部屋に澄んだ声が響いた。「できた!」それは、「うさくらげ」が生まれた瞬間だった。
彼女は自らの全てを注ぎ込んだ作品を、静かにスタッフの手に渡した。スタッフは慣れた手つきで、わずか数秒でスキャンを終えた。
ウサギはその作業を見届け、ひと息つくと、促されるままチームラボ内のお絵描き水族館「Sketch Aquarium」へ足を向けた。
それは、まるで夢の中の風景のようだった。澄んだダークブルーの水中で、命を宿した「うさくらげ」がふわりと漂う姿は、とても穏やかで楽しげだった。その光景を見つめるウサギの心には、心地よい興奮がじわりと広がっていった。
「いま描き上がったばかりのこの絵が、水槽に泳ぎ出すなんて、とても信じられないわ」彼女は、隣に立つカメに囁いた。
「うさくらげちゃんをグッズにできるらしいよ」と、水槽をじっと見つめていたカメが、静かに彼女の耳元で囁いた。ウサギは一瞬固まってから、驚いたように目を見開いた。
「本当に? うさくらげちゃんをグッズにできるの?」彼女の声には興奮が混じっていた。ウサギはスマホを取り出し、うさくらげを探し当てると発注ボタンをそっとタップした。
そして、ウサギの手にミニタオルと缶バッジが手渡された。彼女は大きな感動とともに、じっと、そのうさくらげを見つめた。
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