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マロンケーキの誘惑

肌寒い冬のある日、図書館の閑静な空気の中で、カメは物語の世界に深く没頭していた。そこへウサギが静かに近づき優しい声でささやいた。「今日もたくさん画集を見てきたわ。そろそろ帰らない?」彼女の声はカメの心に穏やかな波を起こし、彼を現実に引き戻した。

帰り道に二人が訪れたのは、図書館からほど近い小さなスイーツショップだった。コートをハンガーにかけて、椅子に腰を下ろしたウサギは、いつものようにアールグレイとマロンケーキを注文した。

カメは彼女の前に届いたケーキを見つめながら、心のままを口にした。「ウサギさんは、甘いものが好きだよね」カメの言いたいことを察したウサギは、にこりと笑った。「そのために走っているの。体型を気にする必要はないわね」

彼女らしい言葉に、カメが深く感銘を受けていると、今度はウサギがカメの頭から足までじっと見て質問を投げかけた。「カメくんも甘いものを食べているけれど、全然変わらないわね」

体型を維持するために走ったりしていないカメは、少し考えたあと、「僕は着痩せするタイプなんだよね。あまり見ないで」と、頬を染めながら、小さな声で呟いた。

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