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金言は159.8の書架に

ある冬の日、ウサギは図書館の中庭で、温かいアールグレイのカップを手の中に包んでいた。そんな彼女の顔は、いくぶん憂いを帯びていた。「ウサギさん、どうかしたの?」と声をかけたカメに、彼女は少しばかり深刻な声色で、「今年の私はどう生きればいいかしら。何か、心の支えになる言葉がほしいの」と答えた。

少し考えていたカメは、優しく提案した。「それなら、図書館の分類番号159.8の書架で本を探してごらん。」その言葉を聞いたウサギは彼に頷くと、書架の迷路の中へと姿を消した。

やがて、一冊の本のページを開きながら戻ってきたウサギは、「これだわ!」と言い、カメに向けてページを指差した。

「青がないときは、赤を使えばいい。ピカソの言葉だね」とカメが確認すると、彼女は、「この言葉の意味は、『こうだ』と決めつけずに、自由に発想しようということよね?」と、得意げに微笑んだ。

「見た瞬間、私にしっくりくる言葉だと思ったわ。今年も自由に生きようと思う。つまり、これまでと一緒ね」と大きく伸びをした。

いつも通りにぶれない彼女の言葉を聞きながら、今年も良い年になりますように、と優しく頷くカメだった。

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