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時間旅行と秘密の使命

その日、図書館の窓を、北風が冷たく撫でていた。書架に並べられたすべての本は、日本十進分類法に従って、大分類、中分類、小分類と丹念に分けられており、000から999までの数字に分類されていた。

そんな書架の片隅で、ウサギは運命的な本と出会った。分類番号421番の書架から彼女が手に取ったのは、時間を超える旅について書かれた古い本だった。その本を壊さないように大切に胸に抱え、彼女はカメのいる閲覧席へと戻っていった。

ウサギは、自分の帰りを待っていたカメを見つけると、震える声で囁いた。「時間旅行ができるなら、どの時代に行こうかしら。」秘めた感情を隠しきれない彼女の目は、夢見るように輝いていた。

一方、カメはウサギには明かしていない秘密を抱えていた。彼はタイムマシンの開発に携わるエンジニアだったのだ。人類の未来を変えるそのプロジェクトは完成間近だったが、最後の重要なピースが未だに見つかっていなかった。

ウサギの持ってきたその本のページを、何気なくめくっていたカメは、突然手の動きを止めた。その欠けていた最後のピースが、本に紛れもなく書かれていた。本の中に隠されていた答えが、彼の心を強く震わせた。

それでも彼はいつものように、彼女に静かに尋ねた。「ウサギさん、もし行きたい時代があるなら、教えてね?」

ウサギは「そうねえ・・・」と首をかしげ、しばらく考えをめぐらせた後、「そうだわ!」と夢見るような表情で呟いた。彼女は頭の中で、豪華な十二一重を着て宮廷にいる自分を想像していた。

つづく

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