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それぞれの休日
美術館のどこか別世界のような静けさの中でカメはゆっくりと思考を巡らせていた。彼の前にはピカソやシャガールの作品が並び、それらはキュビスムという名の不思議な仕掛けが施されていた。耳元で音声ガイドが静かに語りかけてくる。そこには100年前の画家たちの息遣いが宿っているようだった。
そのころ美術館の外ではウサギが遊歩道を軽やかに走り抜けていた。走ることが彼女にとっての日常からの一時的な脱出だった。
美術館の出口でカメはウサギと再会した。
ウサギはニッコリと笑い「カメくんはね、私のゴール地点なの」と言った。
カメは静かに微笑みながら「ウサギさんといる時間は僕にとって最高の芸術作品だよ」と答えた。
二人はそれぞれの時間を大切にしつつ、心の深い場所でお互いを必要としていた。
夕暮れ時、やがて彼らの姿は喧騒の中で静かに溶け込んでいった。二人だけの小さな世界がそこに静かに広がっていた。まるで時を超えた恋人たちが描かれた絵画のように。
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