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西洋絵画は723の書架に

図書館の窓から差し込む柔らかな光の中で、カメは静かにページをめくっている。彼にとって、ここはもう一つの家のような場所だ。書架に並んだすべての本は、日本十進分類法に従って、大分類、中分類、小分類と丹念に分けられており、000から999までの数字が付されている。彼はそんな秩序ある空間で、心の安らぎを見つけていた。

一方、ウサギは図書館が特別好きなわけではなかった。それでも彼との休日の約束は、この静かな場所から始まることが多い。彼女は本にはあまり関心がないが、世界のあらゆることに心を開いていた。例えば絵画や絵本、美味しい食べ物などに。

「私、ピカソの絵が見たいな」とウサギが急に言うと、カメは「それなら西洋絵画だから分類番号723の書架だね」と即答する。しばらくしてウサギが戻ると、「ほんとだ、見つかったわ」と微笑む。「これまでは絵にあまり興味はなかったけれど、カメくんと美術館に行くようになって好きになったの」と彼女が言う。カメは優しく彼女を見つめ、「次のお休みは美術館に行こうか」と答えた。

普段は外で飛び回るのが好きなウサギだが、「冬の休日は、室内で過ごすのも悪くないわね」と思いながら、画集のページを静かにめくった。

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