マガジンのカバー画像

レースのお部屋

8
運営しているクリエイター

#ウサギとカメ

イルミネーションレース

イルミネーションレース

冬のある日、街の中心でレースが始まろうとしていた。街はクリスマスの飾りで煌めき、人々の歓声が響いていた。レースはきらびやかなイルミネーションで照らされた大通りを抜け、最後に大きなクリスマスツリーの前でフィニッシュするコースだった。

「カメくん、今夜は最高のショーを見せてあげるわ」とウサギは自信満々に微笑んだ。カメは笑顔で「ウサギさんを追い越す姿、見せてあげるよ」と応えた。

スタートの合図ととも

もっとみる
レガシーハーフマラソン

レガシーハーフマラソン

雨の音が耳を打つ。カメはその中を疲れた足でゆっくりと歩んでいた。傘も持たず冷たさに身を震わせていた。それでも不思議と道端には見守る者たちの姿があった。霞んだビル群が彼の姿を遥か上から見つめているように感じた。

21キロの距離を歩ききると競技場の入口が見えてきた。安らぎを感じる間もなく、カメは冷たくなったシャツを脱ぐために風に晒されたスタンドへと向かった。階段の途中でポケットのスマホが鳴った。その

もっとみる
ハーフマラソン

ハーフマラソン

朝、ハーフマラソンのスタートラインに立つウサギはどこか心細そうだった。彼女の周りは人々のざわめきで満たされているが、彼女自身は静かな世界にいるようだった。スタートの合図が鳴り響くと彼女はあたりを見渡すこともせずただひたすらに走り続けた。彼女は誰よりも速くゴールへと駆け抜け一人ぼっちで勝利を手にした。しかし、ゴールした彼女の心には何故か寂しさが漂っていた。

時間が経ち観客のほとんどが去った頃、カメ

もっとみる