見出し画像

【小説】おばあちゃんのごめんねリスト

ゲラを読ませていただきました!早川書房さま、ありがとうございました。

-------

子どもには、混沌とした現実を秩序づけて理解するために、おとぎ話が必要なのだというお話を聞いたばかりなのですが、本作の主人公エルサも、混沌とした現実を生きていくためにおとぎ話とともに生きています。

エルサはもうすぐ8歳になる女の子。ハリー・ポッターが大好きで、文字はいかなるときも正しく綴られていないとイヤ。周りとは少し違ったところがあって、学校ではトラブル続き。
そんなエルサのおばあちゃんは、そのさらに上をいく風変わりさ。でも、いつもエルサの味方をしてくれて、エルサを騎士にしたおとぎ話を作ってきかせてくれる、スーパーヒーローなおばあちゃん。

ところが、病気がおばあちゃんを連れ去ってしまいました。
もうすぐエルサには半分血のつながった妹か弟が生まれるというのに。まだエルサには、おばあちゃん以外に友だちがいないというのに。

そしてエルサは、おばあちゃんが遺した手紙の数々を見つけ出し、それを相手に届けるという大事なミッションを託されました。
ひとつひとつ届けていくうちに、どんな人にも過去があるということを学んでいきます。

「子どもにはおとぎ話が必要」と先ほど書きましたが、いっぽう大人は、この混沌とした現実をすべて理解し受け入れているのでしょうか。

なぜ、人は死ぬのか。
なぜ、人は戦争をするのか。
なぜ、人は人を憎むのか。
なぜ、自ら憎まれるようなことをするのか。
なぜ、それでも人は、誰かと繋がっていたいと思うのか。
誰かを助けたいと思うのか。

大人だって、分からないことだらけのなかで不器用に生きているのです。
クソみたいな世界だけど、完全にクソだとも言えない世界を。
誰も完璧な人なんていない、この世界を。

自由に想像の翼を広げたおとぎ話にわくわくしたり、もうすぐ8歳の子にはあまりに重い荷であるのに果敢に立ち向かっていくエルサを思い切りハグしたくなったり、最後にはスーパーヒーローのおばあちゃんにまたノックアウトされて泣き笑い。すっかり作者のファンになってしまいました。
前作『幸せなひとりぼっち』は映画化もされているそうなので、原作も映画もこれから見なきゃ( ^ω^ ) あと、本作でいちばん気になった女性にまつわるという続編もぜひ読まなきゃ( ^ω^ )

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?