見出し画像

【詩】 魔法の言葉

「待ってね」って言われるとうれしかった。
君を待つ時間が好きだったから。

いつも単純な言葉の中にいた。
君がくれる写真や文章や歌が、「今」の君であることがうれしかった。
君の中身だと考えるとうれしかった。
それをくれることが本当にうれしかった。

君を待つ間に、私は小説を書いたり、読んだりした。
好きな歌を聴いていることもあった。

いろんな無駄話を、いつまでもしたい。
君の言葉が、声が、いちばん初めから好きだった。
大切な思い出は大切なままで。
傷ついたところには絆創膏をはってあげる。
嘘じゃないよ、って思いながらその歌を聴いた。
ずっと。
そう思っていた。


「幸せになって」は不思議な言葉。
家族や友達から言われれば、祝福を受けた気持ちになる。
好きだった人から言われれば切なくて、がんばろうという気になる。

ほんとうは、「幸せになって」って言うとき、いつもどうしても泣いた。
好きな人に言われれば傷つくし、好きな人に言っても、同じだけ傷つくから。
ここにいて、って、願いながら口にする言葉だったから。
「待ってね」って、言ってみたかった。


押しボタン式の信号の向こうに、君が立っていてほしかった。
夕日のときに。
全部がオレンジ色に染まる世界に。








この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,153件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?