ホワイトデーの夜に。
【今日ひま?行ってい??】
昨夜、RくんからLINEがきた。
休日に会えると思ったけれど、彼が忙しくなってしまい会えなかった。
近頃のRくんは、仕事もプライベートもイレギュラーが多く、バタバタだ。
そんな状況下でも元々入れていた予定さえもリスケしないから、夜遅くからしか身体が空かない。
彼は、よほどでなければ先に決まっている予定を優先する。
普通のことだけれど、そんなところも好きだ。
【私はいいけど、大丈夫なの?】という問いには答えず、Rくんは家に来た。
所謂ホワイトデーの夜。
久しぶりは言わない。固く誓って扉を開けた。
『よ!はいこれ!』
玄関で顔を合わせるなり、紙袋を渡された。
お礼を言う私を置き去りにして、おじゃましまーすと部屋に消えていくRくん。
彼にロマンチックという文字はない。
短期目的遂行型。
えぇーっ何これー?ととぼける高度なテクニックなど私にできるはずもなく、「私はバレンタインに渡したけど、何もそんな多忙なときにわざわざ今日でなくてもよかったのに」と言った。
相変わらず可愛げのカケラもない私。
来てくれて嬉しいくせに。
すると彼は『おれがやだって言ってるのにあれだけ当日に拘るんだから、お返しも今日じゃなきゃいやなのかと思って』と言った。
オブラートってものを知らんのか。
チラッと時計を見て『ギリ今日中に渡せてよかったよ』とニコッと笑う顔を見たら、無理をしてでも来てくれてありがとうと素直に言えた。
バレンタインに渡す手作りのブラウニーを、毎年とても喜んでくれるRくん。
(毎年先月のような醜態を晒してきたわけではない、当日に拘ってもいなかった、念のため。。)
彼は毎年、律儀にお返しをくれる。
彼のセンスが光るお洒落なお返しに、私はテンションが上がり、毎年これがいい!と言った。
毎年貰える前提なのは何で?
我ながら腹が立つほど図々しい私に、彼は笑いながら『おれも毎年これがいいな』と言ってくれた。
多分彼は、ブラウニーが大好きというわけではない。
私の図々しさが目立たないようにしてくれた上、毎年バレンタインに渡せる関係でいたいという私の願いも肯定してくれたのだ。
いい歳してバレンタインデーやホワイトデーでなくてもいいのだけれど、恋人でもない私達にとっては、この日に託けて相手を大切な存在だと伝える都合のいい日なのは確かだ。
久しぶりのRくんに、聞いて聞いてと話が止まらない私。
ふと我に返って黙ると、ニコニコしながらそれで?と聞いてくれるRくん。
慌てて、私うるさいねごめんと言うと、『よく喋る女の子って可愛いよね』などと言う。
途端に恥ずかしくなって、喋れなくなってしまう。
落ち着け。彼は私が可愛いとは一言も言っていない。
一人ツッコミをしていると、彼のスマホが鳴った。
出ていいよ?と言うと、『いや、いいよ。今は姉さん(私)と喋ってる。』と言うRくん。
本当に出ていいからと再度促し、私は仕事の資料を取りに別の部屋に行った。
ファイルを探していると、リビングから彼の声が聞こえた。
『喜んでくれたなら何よりです。
いいえーこちらこそわざわざありがとう。』
好きな人か?と一瞬思ったけれど、敬語が多少混ざるこの感じ…仕事関係者か。と安心していると
『あー……おれもー…嬉しかったよー…あはは…ありがとねー…えへへ…』
デレッデレしてる。
何?好きな人!?誰よ!!!!(心の叫び)
私が読むのが楽しみな文章を書く方が(お名前出していいものかわからず)嬉しすぎることにコメントをくださって、
“好きな人にはデレたほうが勝ちます!これ絶対”
とのことなので、次に会ったら思い切って実践してみよう!可愛げのない私の第一歩!と意気込んでいたのだけれど。(笑)
まぁ見事にRくんがデレデレしてました。
電話の向こうの女の子に。
アイツあんなにわかりやすくデレることもできるのか。。モテ理論をすんなりやっている。。
男女逆でも通用してるし。。くぅ。。
資料が見つかると共に電話も終わったようで、私は何食わぬ顔でリビングに戻った。
Rくんも何食わぬ顔で…いや明らかに顔が緩んでいる。。
何やねんコイツ。スイッチが入ってしまった。
「デレデレしてるよ。」
『ん?おれ?』
「そうだよ。何好きな人?」
『え?いや会社の…
「デレッッッデレしすぎ!」
『………でたよ。』
「何でたよって!あの若くて可愛い女の子やろ!?(一度目撃したが本当に可愛い)」
『待て待て!喧嘩せずに言いたいこと言うんじゃなかったの?』
…そうだった。心に誓ったのに。私っ!!
いいや。何かズルい。
話したことを覚えていてくれる彼のいいところは発揮されている。
が、これは喧嘩ではない。
“デレデレすんな。以上。” だ。
『デレデレしてるおれも可愛いね!でしょ?(笑)』
他の女にデレデレしてるRくんなんか可愛くないやろ。
To be continued.
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