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目撃 3

弟の手を引きながら、駅前まで引っ張り出し、街の中心部に出かけた。
赤い三本ラインのセーラー服。弟が歩くたびに膝丈のプリーツスカートが揺れている
「あのね、もう少し女の子らしく歩かないと、一気にバレるわよ。」
「えっ…」
セーラー服で歩いている弟の手を引きながら、歩き方を注意する。
「男だと思われたら余計恥ずかしいでしょ?ちょうど平均台の上を歩くように、左右の脚を一本のラインで歩きなさい。二本のラインだと男ぽいわ。」
あわてて、言われた通りの歩き方をしている。
「しんどい…」
「何言ってるの。バレちゃって良いの?」
おそらく、長年の歩き方を一気に変更するので、普段と違う筋肉を使っているのだと思う。
必死に左右の脚を一本の線の上を歩くように動かしている。
「そうそう…その調子」
街中の人通りの中を歩いていても、特に弟に注目をすることも無く、みんな通り過ぎていく。
それでも、恥ずかしがって下を向いている。
「しっかりと胸張って歩きなさい。」
「だって…」
消え入りそうな声で返事する。
中学生なのに、まだ声変わりしていない弟は、小声で話していると、女の子みたいだと思った。
バスに乗せて駅に向かう。
窓側の席に座らせ、不安そうに外を見ている顔が窓に映っていた。
「どこ行くの…?」
「黙ってついてきなさい。」
そう言って、いくつかのバス停を過ぎた後、降車ボタンを押す。
バスは、ショッピングモールの入口で停まりドアが開いた。
「行くわよ。」
そう言って、私は席を立った。
ショッピングモールに連れ出すと、そのまま店内に入っていく。
休日は人が多く、子連れや家族連れの姿も見えるし、パラパラと制服姿の中高生も見かけた。
私は弟の手を引きながらモールの2階にあがる。トリンプの専門店、私も良く利用しているアモスタイルに入っていく。
一瞬、入口で抵抗するのを横目で奥に進んだ。
「いらっしゃいませ。」そんな声に一瞬びっくりした弟はあわてて奥に入ってきた。
中学のセーラー服姿の弟は泣きそうなくらいの表情で私の横につく。
わたしはハンガーにかかっているブラをいくつか見て回る。
アモスタイルは、ティーン向けのデザインも豊富だけれど、中学生にはまだ少し早いかな…とも思えた。
「どのようなものをお求めですか?」
店員が話しかけてくる。
私はにっこりと笑顔で振り返った。
「この子のブラが欲しいの。中学生だし、派手すぎなくて可愛いのを探しているの。」
私は店員とやりとりしながら、弟の顔を見た。
赤く下を向いている。
「あら、下向いて…恥ずかしいのかしら、こういうお店は初めて?中学生でも当店でお買い上げいただいてるお客様結構いらっしゃいます。お姉さんと買い物って良いわね。」
弟はそんなふうに言われて、ますます下を向いていしまった。
「サイズお測りいたしましょうか?」
一瞬、弟が私の袖を引っ張った。
「そうね。お願いします。」
驚いた顔で私を見る。その表情が少し可笑しかった。
「……」
観念したのか、黙って横に立つ弟。
「恥ずかしいかな…大丈夫よ。服の上から測るだけだから…ね。」
メジャーを持つ店員が安心するように声をかけた。
その場で両腕を上にあげて、店員に測ってもらう姿も可笑しかった。
「アンダー75。まだ成長すると思うので、カップは大きめでも良いと思うから…Bカップかしら。」
「……はい」消え入りそうな返事。
「ありがとうございました。じゃ75Bで探しますね。」
「また、なにかありましたらお声かけ下さい。」
店員はそう言って、その場を離れた。
「成長するんだって(笑)」
「……」
「ちゃんと女の子だと思っていたみたいよね。」
私はそう言って、弟の顔を見た。
「そうなのかな…でも、恥ずかしい。」
「ショーツはMで充分。最初はブラとショーツのセットが良いと思うわ」
「えっ、ショーツってパンツ?」
「そうよ、良かったよね、スカートの中見られなくて」
弟は今トランクスを穿いたまま、セーラ服を着ている。
「そんなの見せられない。」
「ブラとショーツって試着して買うものよ。」
「うそぉ。そんなはずないでしょ。」
弟が疑った顔で私を見ているので、奥を指さして話を続ける。
「あそこに、試着できるようにフィッテングルームあるでしょ?」
カーテンで区切られた一角が見える。
「ほんと…?」
ショーツの試着は出来ないけどね…と、内心思ったけれどあえてそれは言わなかった。
本当だと信じているところも可愛いと思う。
「さっ、可愛いの選んであげるね」
そう言いながら、私はいくつかのデザインを手にした。
「どんなのが良い?」
選ぶのはパッドを詰められるようにフルカップのブラ。
色はホワイト、サックスブルー、ピンク、レモンイエローあたりがティーン向けだと思った。
あとは、本人に選ばす。
「試着してみる?」
「えっ、ええ~恥ずかしい。帰ってからで良いよ」
「そう?本当はちゃんと試着してサイズ確認するんだけれどね…」
「だって、ボク男だし…」
とまた小声で返事している。
「何言ってるの、セーラー服似合ってるわよ。」
「ほんとに?」
「うん。それより、自分が気に入ったのが長く使えるしどれにする?」
「どれも可愛いし…」と言いながら、いくつかを手にしながら選んでいる。
「毎日替えるものだし、ブラショーツセット2つ位選んだら?」
「えっ、いいの?」
そう言って、最終的にレース多めのブルーとピンクのブラショーツのセットを選んだ。
「これにする。」
「うん。可愛いね、似合いそう。じゃレジに行きなさい。」
「えっ…」
恥ずかしそうに返事するので、そのままレジに向かわす。
自分が男だとバレそうになるのは恥ずかしいもので、あえてそんな場面を作りながら表情を観察している。
羞恥心で思うように歩けないみたいだけれど、なんとかレジ前でブラショーツをカウンターに出した。
「サイズはお間違えないですか?」
「はい…」
受け答えしている…(笑)
「6680円になります。」
「お姉ちゃん…」
レジの人に言われて、私の顔を見る弟。
中学生に5000円越えは高額だと思う。もちろん、私が買ってあげるつもりだったので、財布から一万円札を取り出した。
「お姉さんに買ってもらえて良かったね」そんな一言を添えられて、アモスタイルの名前の入った紙バックを差し出された。
両手で受け取り、大事そうに抱えている。
「ありがとうごさいました」
店員のそんな言葉を後に、ショップを離れた。
「お姉ちゃんありがとう。」
「これからは、インナーもちゃんと女の子でないとね。」
「うん。」
二人きりで歩いていると、ちゃんと受け答えできている。
この前から、女装をしている弟を見かけていたが、意外と可愛いことを再認識。
元々血のつながりの無い姉と弟。
一緒に暮らし始めてギクシャクしていたけれど、なんとなく弟の弱みを手に入れた気分。
これからはきっと私の言うことを聞いてくれるのだろうな…という予感。
さらに、少し辱めを受けると目がウルウルと仔犬のようで余計に可愛く見えている。
この表場をもっと見たいと、どんな風に女の子としてからかってみようかな…と頭の中で考えていた。


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