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山田哲人のFA残留を考える

ヤクルトファンのみなさま、おめでとうございます!

山田選手のヤクルト残留が決定しました。

ヤクルトファンなら多かれ少なかれ、この件について「思うこと」「言いたいこと」はあると思いますが、私はこの場を借りて色々と書き連ねてみたいと思います。

そして、最初に断っておきたいのですが、私はこの記事を通じて「残留=善、移籍=悪」みたいな構造を作りあげる気は毛頭ありません。FAは正式な選手の権利ですし、選手が出した結論を第三者がとやかく言う筋合いはありません。ファンはその選択を受け入れるしかないのです。もし山田選手が今オフで移籍という結果になっていたとしても、それは仕方のないことです。ただ「球団運営」という観点からみると、今回のFAの件はかなりのターニングポイントであったのは事実で、残留が決まって改めてそのことを実感し、今回noteを書こうと思いました。つまり何を言いたいのかというと、本記事は山田選手の決断について色々と評価するものではなく、引き止め側のフロントの見解を考察するものだということです。その点、ご了承お願いします。

内容は以下の二本立て。

1.今回のFA残留が意味することとは?

今回のFA、特に山田哲人選手のFA問題は、一言で表すと「一言で表せないほど複雑」だったと思います。戦力とか単純な話ではなく、本当に色々なものが懸かりすぎていた、と。その中で思いつく限り挙げてみました。

  ① チームの顔としての意味

何といってもこれが一番でしょう。ここでは実績ベースで話を進めます。まずは通算試合数ランキング(私調べ)です。

1. 青木 宣親 1353試合
2. 山田 哲人 1058試合
3. 川端 慎吾 1042試合
4. 中村 悠平 942試合
5. 雄平         820試合
6. 坂口 智隆 552試合
7. 荒木 貴裕 537試合
8. 西浦 直亨 467試合
9. 山崎 晃大朗 278試合

注)青木選手のMLB時代、雄平選手の投手時代、坂口選手のオリックス時代などは除外しています

併せて通算打席数ランキングも。

1. 青木 宣親 5241打席
2. 山田 哲人 3932打席
3. 川端 慎吾 3583打席
4. 中村 悠平 3226打席
5. 雄平         3202打席
6. 坂口 智隆 2344打席
7. 西浦 直亨 1550打席
8. 村上 宗隆 1122打席
9. 荒木 貴裕 1118打席

ともに2位に位置していますね。上位層を見ると、川端選手が33歳、雄平選手・坂口選手が36歳、青木選手が38歳、中村選手でも30歳。揃いもそろって30代ばかりですが、そんな中で28歳の山田選手はやはり特異な存在だと言えます。

また、思ったより1位の青木選手との差が小さい、と思う方も多いのではないでしょうか。単純に年齢だけを見た場合、両選手の間には11学年差があります。しかし、「スワローズのレギュラー」として活躍した期間で考えると、山田選手が約8シーズン分、青木選手は約10シーズン分と、年齢差の割にそこまで大きな差がないんですよね。実際、両選手の出場試合数の差は295試合&1309打席と、大体2シーズン位の差になっています。(もちろん青木選手は6年もの間メジャーでプレーした、とても偉大な選手ですし、あくまでこういう見方もできるよね、というお話です)

そして、何かにつけて「ヤ戦病院」と揶揄されるヤクルトですが、山田選手に関しては、「試合に出続ける力」はNPB屈指のものでした。

13年94試合 → 14年143試合 → 15年143試合 → 16年133試合 → 17年143試合 → 18年140試合 → 19年142試合 → 20年94試合 (太字は全試合)

特に14年~19年は全859試合中844試合出場と、割合にして98.2%に達するなど、”常に”第一線で活躍し続けてくれました。セカンドという守備負担が大きいポジションをこなし、かつ打線においても1番や3番といった「核」となる役割を担いつつのこの数字は、本当に素晴らしいと思います。

ちなみに、初めて規定到達した14年の各球団の規定到達者を調べてみるとこんな感じでした。

巨:長野久義坂本勇人、村田修一、片岡治大、阿部慎之助
神:マートン、鳥谷敬、ゴメス、上本博紀、大和
広:菊池涼介丸佳浩、エルドレッド
中:大島洋平、ルナ、森野将彦、平田良介、荒木雅博
横:筒香嘉智梶谷隆幸、バルディリス、石川雄洋
ヤ:山田哲人雄平、畠山和洋、川端慎吾バレンティン

現在もNPBorMLBに在籍中の現役選手を太字にしてみましたが、2020年も規定打席に到達したのは坂本、菊池、丸、大島、梶谷、山田哲人の6人まで絞られます。

とまあ、結局何が言いたいのかというと、ここ数年のヤクルトは山田哲人と共に歩んできた、ということです。2011年CSファイナル初戦のプロ初出場以来、彼を抜きにしてヤクルトは語れません。青木選手が引退、山田選手もいない、となったらヤクルトはどうなっていたでしょうか。そういう意味で、これからも「ヤクルト・山田哲人」が見れることの意義は大きいと思います。

ここで扱ったのは打席数・試合数ですが、その中身(活躍)は言うに及ばずでしょう。語るのも野暮なのであまり触れませんが、単純なスタッツ以上に「トリプルスリー」の付加価値は大きいものだったとは思いますね。なぜか流行語大賞まで上り詰めましたし。

個人的な話にはなりますが、この前、プロ野球ファンでない人たち(4人)と会話していた時に「ヤクルトって有名な選手誰がいるの?」という質問を投げかけられ、半ば知らないだろうなあと思いつつ「山田哲人って知ってる?」と答えたら、まさかの全員知ってたので、それくらいの知名度はやっぱりあるんだと思いましたね。

  ② 戦力としての意味

①が過去の話だとすれば、ここでは未来の話をしたいと思います。(といっても技術的なことは語れないのでご容赦ください)

まずは年齢が28歳、ということについてです。ここでは、samiさん(Twitter:@RCAA_PRblog)のツイートから、実働年数に関して見ていきたいと思います。

もちろんショートとセカンドで守備位置は違いますが、ある程度この情報は援用できるのではないでしょうか。もし仮に33-34歳までセカンドのレギュラーを務めてくれるとすると、約5年程度はセカンドのポジションが埋まるということです。7年契約終了時の35歳では、セカンドとして20代と同じパフォーマンスをできる可能性は低いかもしれませんが、それも球団は織り込み済みでしょう。なぜか知らないうちに(侍ジャパンで)ファーストのオプションもついているので、将来的にはそちらにコンバート出来れば理想ですかね。

あとは、編成上の問題もあります。最近色々な所で見るようになったデプスチャートの超簡易版が下表です。

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色々と突っ込みどころが多いヤクルトのデプスチャートですが、(野手の)中堅層が非っっっっっっっっっ常にペラペラなことをここでは指摘します。今でこそ青木選手や坂口選手といったベテランの選手が活躍していますが、3年後5年後を考えた際、30代として誰が戦力になるでしょうか?考えるだけで怖いですね。そう考えたときに、山田選手と7年間共に戦えることの価値が、自ずと見えてくるのではないでしょうか。

  ③ 背番号1としての意味

背番号1の系譜について、詳細はちゃんとした記事の方が伝わりやすいと思うので、知りたい方は、是非以下の記事をお読みください。

この記事の言葉を借りれば、ヤクルトの背番号1は「生え抜きのチームを代表する選手が着ける番号」なのです。若松勉、池山隆寛、岩村明憲、青木宣親、そして山田哲人。メジャー挑戦や岩村の楽天時代はあるものの、基本的に全員スワローズの中心選手であり「顔」でした。

そんな背番号1を付けてる選手に「出て行かれる」形になると、抽象的な話にはなりますが、やはり球団の「魅力」「ブランド力」の低下につながるのは否めなかったので、その点でも大きかったですね。

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上の画像は昨年のドリームゲームで発売されたグッズなのですが、実際に球団側もこのコンセプトは大事にしていることが見て取れます。

  ④ グッズ売上としての意味

そのままグッズの話に移ると、山田選手はグッズ売上としてもトップクラスの実績を誇ります(ちゃんとしたソースは見つけられなかったのですが、選手の中ではほぼ1位と思われます)。

また、これも特にソースはありませんが、山田選手がいなくなったら観客動員数にも響くレベルになるのではないでしょうか。そう考えると、現金な話ではありますが、残留効果は絶大だと考えられます。

  ⑤ 応援歌としての意味

(前奏:「山田哲人!」「山田哲人!」夢へと続く道「山田!」)
スタンド  越えて打球は遥かな  夢へと続く  行け山田  新たな時代を

ツバメ軍団の最高傑作と呼んでも差し支えないであろう、NPB応援歌史に残る名曲です。すっかりお馴染みになりました。

今は球場で歌うことは叶いませんが、神宮球場ではもちろん、オールスターや侍ジャパンでも、これからもずっとこの曲が聞けることは、非常にうれしく思います。

  ⑥ リーグバランスとしての意味

こんなことを言い出したら各球団の「企業努力」を否定することにも繋がるのであまり言いたくはないのですが、一応考察として挙げておきます。

これは某売某人軍に移籍した場合に限定した話ですね。まずは、首位を独走した球団が代表級の選手をとること。一昨年の丸選手の場合は首位球団→3位球団の移籍という状況でしたが、今回は6位→首位の移籍です。ヤクルトもそうですが、他4球団にとっても相当なダメージを追う可能性もありました。

それに加えて、これは個人的理論ですが、「MVP独占」を防げてよかったと考えています。

2012年 優勝:巨人 MVP:阿部慎之助
2013年 優勝:巨人 MVP:バレンティン(現 ソフトバンク) (60HRの年)
2014年 優勝:巨人 MVP:菅野智之
2015年 優勝:ヤク MVP:山田哲人
2016年 優勝:広島 MVP:新井貴浩(引退)
2017年 優勝:広島 MVP:丸佳浩(現 巨人)
2018年 優勝:広島 MVP:丸佳浩(現 巨人)
2019年 優勝:巨人 MVP:坂本勇人

一野球ファンとして私は、様々な球団が優勝することをポジティブに捉えたいと思っています。そんな中で2010年代は、巨人の歴代最長タイの4年連続Ⅴ逸(2015~2018年)、全6球団の日本シリーズ進出、など中々面白い年代だったと思います(ソフトバンクからは目を背けながら)。

しかしその結末が、MVPを獲得した(現役)選手が全員巨人在籍になる、だとあまりにもやるせないな、と個人的には思ってしまいました。MVPを獲得した選手がいるから〇〇、といったように直接的な影響は特にないのですが、気持ちの問題とでも言えますでしょうかね

  ⑦ 村上への「壁」としての意味

最後は、「チームの顔」の部分と被る点もありますが、最後は村上選手との関係性です(ここも一ファンの妄想チックになってしまったので、話半分にお読みください)。

村上選手はやはり稀代の逸材で、あの年齢にしてキャプテンシーを兼ね備えており、そう遠くないうちにヤクルトの、いや日本代表のキャプテンを目指せる存在だと思ってます。今年なんかは、山田選手のコンディション不良などもあり、チームの攻撃の役割を村上選手が一身に背負っていました。「村上個人軍」などと揶揄されるほどでした。だけど、やっぱり、まだまだ中堅がチームの浮沈を担ってほしいんですよね。そして、ヤクルトの場合はそれができるのが山田選手くらいしかいなかった。

山田選手に「チームのことを考えて絶対残れ」などと言う気はありませんが、フロントには「チームのことを考えて絶対残せ」ぐらいは言っても良いんではないでしょうかね。

だからこそ山田選手がヤクルトを選んでくれたことは非常に嬉しく思いましたし、これからもチームを担ってほしいなと思います。リーグ優勝や日本代表、メディア露出などの経験があるのは山田選手ぐらいなので、村上選手を始めとして、色々な選手への波及効果も期待しています。

2.残留宣言までの流れとは?

では最後に、残留までの流れをまとめてみます。

そもそも、いつ頃からこの問題が囁かれるようになったのでしょうか。参考指標として、検索トレンドが確認できるGoogle Trendを用いて「山田哲人 fa」について調べてみました。2015年から2020年11月10日(シーズン最終戦)までの結果を表したのが下表です。

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少し分かりづらいですが、大体2018年オフから検索数が増加していることが見て取れますね。19年と20年シーズンではヤクルトが最下位だったこともあり、この傾向に拍車がかかった感じでしょうか。

実際のところ、山田選手本人の「正直に今までで一番悩みました」とのコメントより、本人の中でもギリギリまで決めかねていたことが推察できます。もちろん本人の考えは知る由もなく、第三者的な視点からではありますが、最後に今回の構図を以下のようにまとめてみました。

〈移籍をサジェストする内容〉
・セカンドは各球団補強ポイント
・ヤクルトの低迷
・坂本選手との関係(?)
・単年契約
・年俸の高騰
・様々な方々の煽り記事
・今季の強行出場
・神宮最終戦の諸々の写真
〈残留をサジェストする内容〉
・地元志向のなさ(在京)
・昨オフの「ヤクルトに入りたかった」発言
・コロナにともなうあれこれ
・今季のコンディション不良 

改めて、(傍から見る分には)本当にどっちに転ぶか分からない感じでしたね。ヤクルトのフロントも(もちろんファンも)相当気をもんでいたのではないでしょうか。

上にも書いた通り、山田選手は今季コンディション不良で中々結果がでないシーズンでしたが、7年契約を結んだことですし、しっかりと治癒させて来期以降も活躍してほしいですね。ファンとして、これからも活躍を期待しています

内容はここまでになります。お読みくださり、ありがとうございました!

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