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ゼロ・ウェイストの旅の実現へ。

サスティナビリティは、観光においても重要なキーワードとなっていましたが、特にここ数年で世の中の関心の高まりと実際の変化を感じるようになりました。

中でも、「ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)」に向けた取り組みは、コロナウイルスによるニューノーマルへの適用と同様に、21世紀の象徴的なライフスタイルシフトの一つと言えるでしょう。

観光分野でのサステナビリティ

光分野では、1992年の「環境と開発に関する国連会議(地球サミット)」で発表された「アジェンダ21」に基づく「観光産業のためのアジェンダ21」で、地域の持続可能性の向上のために環境、地域社会・経済に考慮した観光のあり方として「サスティナブルツーリズム」の概念が盛り込まれ、それ以降、各分野で具体的な取り組みが行われるようになりました。
近年では、より明確なメッセージとアクションを伴っており、日本交通公社のコラムによると、ゼロウェイストに挑戦するツアーや宿泊施設や、サーキュラーエコノミーの体験なども登場しているようです。ここでは同コラムから一部抜粋し、中でも注目の施設や体験を紹介します。

ゼロウェイストツアー(アメリカ)

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アメリカのエコツアー会社、ナチュラル・ハビタット・アドベンチャーでは、ツアーでのゴミを一切出さない「ゼロウェイストツアー」を催行。ツアーの申し込みは全てオンラインで行われ、参加者はエコバッグ、マイ食器、マイ水筒を持参、宿泊施設側は再利用できる容器の使用や、食事・飲料の無駄をなくすなど工夫することにより、サプライヤーと旅行者側の双方が協力してゴミゼロを実現しています。

「ゴミ分別所」と「ホテル」の共存(上勝ゼロ・ウェイストセンター)

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写真の通り、俯瞰して見ると「?」マークになっているこの施設。なんと、ゴミの分別所とホテルが一緒になっているようです。上勝ゼロ・ウェイストセンターと呼ばれるこの施設もまさに、ゼロ・ウェイストを提唱し、ツーリズムに繋げている良事例です。

世界中から上勝の取り組みを見学に訪れる人のために宿泊施設の構造を活かし、生産者と消費者、町内外の人々が出会い、交流し、つながる場所として、外周側に視察導線を確保。視察者がぐるっと回って戻った時に、内側で分別している町民と出会うことができるように設計されています。
廃材を活用して建てられた施設内には、町内の不要になったものが持ち寄られ、訪問者が町内出身か否かを問わず無料で持ち帰ることができる仕組みなどもあり、旅をしながらゼロウェイストへの取り組みを学ぶことのできる理想的な場所と言えるでしょう。

ホテルアメニティのサーキュラーエコノミー化(スウェーデン)

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スウェーデンに本拠を置くOnMateriaは、「GreenBox」という、使用後に堆肥化が可能なホテルアメニティを開発。GreenBoxのプロダクトは堆肥化可能なパーツと堆肥化不可能なパーツで色分けされ、堆肥化できないパーツは回収ボックスで回収されます。仕組みは簡単で、宿泊者はアメニティ使用後、緑色のパーツはホテルに設置された緑のボックスに、白色のパーツは白色のボックスに分別して入れるだけ。その後、緑色のパーツはホテル内で出されたその他の有機ゴミと一緒に産業施設に運ばれ、メタン化プロセスを経て10週間後に土壌とバイオガスになるそうです。

パラオ・プリッジ(パラオへの誓約)

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ミクロネシアに位置するサンゴ礁に囲まれた島々からなるパラオは、観光客に対してサスティナビリティツーリズムに関する誓約書を義務付けた世界初の観光地として知られています。観光客は島々の資源の保全や海洋環境の保全、コミュニティや文化の保全に対する11項目のチェックリストが記載された誓約書「 Palau Pledge」 への署名が義務付けられており、チェックリストに違反すると罰金も課せられます。
 さらに特筆すべき点は、「Palau Pledge」 はパラオに住む子供たちと共に作成されたことです。観光客と観光関連事業者だけではなく、将来を担う世代・コミュニティも交えて協働していくという本質的な取り組みであるといえます。

サスティナブル誓約(フィンランド)

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フィンランド政府観光局でも、前述のパラオと同様、観光客に対して「サスティナブル誓約」への賛同を求めています。「10 Sustainable Travel Tips in Finland」を政府の公式ウェブサイト上に掲示し、観光客に対して、フィンランドに住む人たちの文化や環境を尊重することを明確に求めています。
これらの取組みから、地域のサスティナビリティの実現のためには、観光客の責任ある行動は欠かせないものであり、それを明確に示していくことは、観光地のブランディングにも寄与するということが読み取ることができます。

これからの社会を担っていくZ世代をはじめとする若者の地球環境への関心の強さや社会的アクションも、こうした潮流を後押ししていくことでしょう。

 日本でも観光に関わる地域の地方自治体や観光地域づくり法人を対象に、2020年6月、国際基準GSTC(※7)に準拠した「持続可能な観光ガイドライン」が国土交通省観光庁から発刊されました。また、世界への旅が可能となった日には、是非、今回ご紹介したゼロ・ウェイストを推進する学びの旅に出てみてはいかがでしょうか。


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