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新しい移民政策? CLIMATE MIGRANT HEAVEN - 『環境移民のオアシス』 を目指す世界の都市 -

皆さんは、『環境移民』または、『気候変動難民』とは何かご存知でしょうか?日本では、身近ではないため、普段聞き慣れない言葉ですね。

英語では、CLIMATE MIGRANT。つまり、気候変動が原因となり、家や国を出なければならなくなってしまう人々のことを指します。

世界では、毎年何百万人もの人々が気候変動によって故郷を離れることを余儀なくされ、環境移民になっています。ハリケーンのような突発的な大災害の深刻化や、干ばつによる食糧不足や水不足、海面上昇による洪水など、長期的につづく自然災害の影響を受けている人々の中には、精神的な疲労に加え、対策のための費用や生活費の増大といった負担がかかる人も数多くいます。

国際連合大学によると、環境移民に関する5つのFACT(事実)を以下のように記しています。

1.   環境移民は、国際難民法では法的に難民とはみなされない
2.   環境移民とは、気候変動が要因のために故郷を離れる人たちのことを指す。
3.   弱者・少数派と感じる人ほど、移民として移住を迫られる傾向がある。
4.   環境移民が何人いるかは、誰も知る術がない。
5.   しかし、気候変動による移住は、世界中の人々が直面している現実である。

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ドイツのハンブルク大学では、2040年までに環境移民は全世界で2億人、国連大学環境・人間の安全保障研究所 の調べでは、2050年までに10億人に達するという予測が発表されています。
あまりのスケールに驚くかもしれませんが、脱炭素化のムーブメントがここまで世界で大きくなっている理由の一つに、こうした事実が背景としてあることは間違いありません。

ピンチをチャンスに変える環境移民政策?

環境移民の増加は、環境問題がいかに私たち人類の暮らしに直結しているのかを証明しています。

しかし、こうした環境移民を受け入れることを勝機につなげようとポジティブに準備を進める国や都市も増えてきているようなのです。

そうした取り組みの動機は意外なものでした。日本のように人口の減少や高齢化に直面している米国などの国々にとっては、環境移民の若い労働力やはを受け入れることはメリットであり、双方にとってウィンウィンの状態となりうるからです。

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NY州のバッファロー大学のヘンリー・ルイス・テイラーは、まちの準備次第で、気候変動による移民の受け入れは、差別や紛争の種となる可能性もあるし、新しい人材の確保と革新のチャンスにもなる、と言っています。

環境移民の受け入れを成功させ、双方にとってポジティブな結果を得るには、受け入れるための規制緩和だけでなく、受け入れた後に環境移民が暮らしやすい環境づくりができるか否かが大切になってきます。具体的には、食糧不足に陥らないためのサプライチェーンの改善や、学校や文化・芸術プログラムなどの教育への投資などが挙げられます。

環境移民に対する倫理的な課題

しかし、環境移民の受け入れには、一筋縄ではいかない倫理的な問題があります。それは、環境難民という言葉の定義がいまだにないことです。難民とは、訴訟や暴力の恐れがあって家を離れた人々を指しますが、それは、国際法的に定義された用語です。しかし、環境難民は、訴訟や暴力の恐れから家に帰れないわけではありません。環境難民は、生計の手段がないために家に帰れないのです。

法的に認められた難民は、他の国に受け入れてもらって、必要なものを提供される権利を持っています。しかしながら、環境難民は、いかなる国際的な法律団体によっても認められていないので、法的な権利をまったく持っていません。さらに、これら環境難民は、途上国出身であるだけで決して気候変動の責任者ではありません。

二酸化炭素の排出をしたのは、途上国出身ではなく発展途上国であることは誰もが容易に想像できるはずです。しかし、先進国には法的な責任はありません。環境難民とは誰であるか、彼らの法律的な権利は何か、国家の義務は何であるか、などがいまだに決められていないからです。

異文化から、移文化へ。

環境移民含む現在の環境問題は、今や先進国を筆頭に、全世界が一つの共同体となって考え、対策に取り組む必要があります。

移民を「異」として受け入れるのではなく、移動を受け入れることができる柔軟な「移文化」へ発想をシフトしていくと、よりまちづくりの政策も変わってくるのではないでしょうか?

環境移民は、その人たちが災いを起こしているわけではありません。環境移民が経験した自然の脅威、そしてそこから生き抜く力、その人のスキルは、受け入れ側の考え方一つで活かし、共存していくことができるのかもしれません。環境移民から学び、より環境への配慮の意識を高め、一緒になって取り組める未来を信じて。

Photographs by Meridith Kohut

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