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空中に消える気持ち

子供の頃から不思議に思っていたことがある。

「届かなかった想いって、どこへ行くんだろう。」

私は馬が大好きだ。

「馬」は誰でも知っているけど、日本での日常ではなかなか出会うことがない動物。どのくらい馬が好きかというと、仕事を馬関係に転職し、引退した競走馬を引き取らせてもらったくらい、好きだ。しかも東京のアルバイトの平均賃金より安い田舎の会社員の賃金しかないのに。東京のアルバイトより安いって知ったときは愕然としたよねー、な就職氷河期世代です。異常な熱量。そして私は、異常な熱量を持って向き合うものが人生の中でいくつかありました。

んで。海外に、呆れるほど連絡不精な友達がいる。LINEの既読スルーは当たり前。メールなんかゆうに半月は放置される。そんな友達と、私の、涙ぐましい、友情に基づく、時差をも乗り越えた鬼電により、たまたまLINE電話がつながった。

その彼女が、ヨーロッパ周遊一人旅に出てた話を聞いたときのこと。行く街、行く街に馬がいたり、馬の文化や馬具やさんがあったそうだ。国によって違う馬あれこれに「あー、えにゆがここに来たら喜ぶだろうなぁー。」「この道具ってなんだろう?えにゆならわかるだろうなぁ。」「馬に特段興味のない私がこれだけ感動するんだから、えにゆだったらどんだけ感激するか、見せたかったよぉー。」なんてことを言うのだ。そんだけあたしのこと思い出してくれてたなら、エアメールの一枚でも書いて送りなさいよ!いや、LINEでいい!写真の1枚でも撮って送りなさいよ!!今、それを話してくれたからわかったけど、そうじゃなかったらそんな風に思っててくれてその気持ちは私に届かず、ただただいつも連絡をくれないやつ、だったよ。

楽天のまーくん見るたび思い出すよ。優勝おめでとう。

剛くん、耳大丈夫?

夏祭りのとき、いるかなーって探したんだよ!

武将の番組みると今年も神社仏閣巡ってるかなーって思ってたよー!

映画祭の広告見て、今年もがんばってるかなーって思ってた!

今までの人生で出会った方々で、今はもうほとんど関わりのないような方にどこかでバッタリ会うと、言われるいろんなこと。そのたびに、すごく嬉しいなぁー。という気持ちになると同時に、その時のいろんな私が、いろんな人の中にいろんな印象でいるんだなぁーって、ちょっと不思議な気持ちになる。そして、その方々が思ってくれたどうしてるかなーって思ってくれた優しい気持ちって、今日、私に会わなければどこにいっちゃうんだろう。なかったことになっちゃうのかな?その気持ちや想い、思ってくれた時間は確実に存在するのに。

20年以上愛してやまない堂本剛くんのソロプロジェクト、ENDRECHERIの「ソメイヨシノ」という曲の中に、

「叫ぶ声がまた 墜落した」

という歌詞がある。届かなかった、届けたくても届けられなかった想いって「墜落」なのかなあ。強く届けたかったものが届かなかったらそうかもしれないなぁ。私の知り合いのように、ぼんやりと、ふんわりと、な想いだとしたら、それは。そのままふわふわと、たんぽぽの綿毛のようにずっと空中を漂っていて、そしていつかなんとなく、何かの風にまぎれて、フッと消える。そんな、気がするのです。思ったことも、その時間もまるごと。綿毛、どうやったら届くのかな。思った形がぽっかり残ればいいのに。

昔は、好きとかありがとうとか、会いたいなとか淋しいなとか、結構恥ずかしくて口に出せなかったいろんな想いも、忙しいんじゃないかなぁ、疲れてないかな、と遠慮してムニムニしてるうちにタイミングを逃した一言も、特にコロナなんて、いつどんなふうにあっという間に会えなくなるかわからないようなものが浮遊してるならなおさら。伝えれる言葉はどんどん伝えて、空中に消したくないな、と思うのです。

届けたいけど、届けちゃいけない想いだけは、空中に飛ばして、いつかを風に任せて。


空中に消える気持ち。

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