見出し画像

SW/AC Library |和多利志津子/恵津子/浩一『夢みる美術館計画 ワタリウム美術館の仕事術』

実際にSW/ACの本棚にあったり、相談員らが参照する読みものを紹介するSW/AC Libraryです。

SW/ACがつなぐ福祉/介護/障害/対話/アートの領域などなどをテーマに、それぞれの分野に馴染みのない人にも接点や関心を持つきっかけになる書籍などが登場します。執筆は相談員の小泉です。

対話形式の文章ですので、訪問者がこられたら、SW/AC でどんな相談の場をつくるのかも垣間見えるかもしれません。

今回は和多利志津子、和多利恵津子、和多利浩一『夢みる美術館計画 ワタリウム美術館の仕事術』(日東書院, 2012)をご紹介します。

〈以下の相談内容は実際の相談ではなく、架空の創作です。また紹介する書籍の文章表現を尊重して文章を構成しています。〉

-------

障害のある人たちの同行支援、居宅介護派遣を行う事業所で働いているという相談者の方が来られました。事業所では障害のある当事者が支援計画を立て、社会への発信も行っているそうです。

相談者:コロナがこれだけ続いていて、なかなか集まる活動ができない。でも何か新しいことをして、私たちの生きている状況を知ってほしいし、社会のほうが変わっていく働きかけをしたいけど、何かできることはあるかなあ。

支援員らの制作される冊子がユニークですね。介護保険の制度がなかった頃から、こういうものを配りながら障害のある人の生活を支える人たちを見つけていかれたんですね。

もう残っていないものも多いけど。こういう冊子でずっと挿絵を描いて、割付をするのが好きな職員がいて任せてたな。なんかアートと言ってもそれくらいしかイメージが膨らまへんな。

挿絵も一堂に並べて見せるだけでも面白い発見がありそうですけど。時代によって何が変わるかとか。でもイメージを広げるというのでは、、、いい本がありますよ。

『夢みる美術館計画』か?夢を見て計画していくのはいつでも大事やな。

画像1

ワタリウム 美術館は、現代アートを専門にした展覧会や館外でのプロジェクトを数多く企画されてきた東京・青山の美術館です。美術館や展覧会をつくる過程に触れることができます。批評集とは違うので、アーティストや運営者の生き生きした言葉が読めますよ。

へえ、なんかわかることあるかな。

現代アートの表現は、アートが置かれる私たちの生きている世界とは何なのかを考えさせてくれると著者の恵津子さんと浩一さんは言っています。

ファブリス・イベールというアーティストの「アートで街をやさい畑にするプロジェクト」は、美術館から最寄り駅までの歩道にハーブや野菜を植え、いろいろな人に育ててもらいながら収穫を目指すものなんです。いろいろ大変なことも起こりつつ、やってみた結果「アートはお金持ちだけのものでもアート・ラバーだけのものでもない。アートは現代を生きるすべての人の日常に、身体に、風景に語りかけ、素晴らしい未来のヒントを与えてくれるもの」(p.151)というふうに気づいたというんですね。

畑かあ。食べられるのはいいなあ。車椅子でもできること開発してもらわなあかんけど。

美術館を設計した建築家が、和多利さんたちにどんな建物をつくりたいか聞くのではなくて、「あなたたちは何がしたいのか」ということを聞いていく様子などは私たちも相談対応の参考にしています。

本はお貸しできますよ、持って帰られますか?

いやまた話に来るから、書いてあること教えてくれる?

はい、大丈夫です。開いている時はいつでもお話し聞かせてください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?