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SW/AC通信vol.8

福祉、地域、教育などのさまざまな分野とアートをつなぐ相談事業、Social Work / Art Conference(SW/AC)がニュース形式で情報をお伝えするSW/AC通信です。今回は連続講座最終回のお知らせと開催したSW/ACの談話室の報告です。

文化芸術による共生社会実現のためのアーツマネジメント講座2021「共生とはなにか」セミナー3を開催します。

8月末から実施している文化芸術による共生社会実現のためのアーツマネジメント講座2021「共生とはなにか」。セミナー1では、ドキュメンタリー映画『タリナイ』を監督された大川史織さんを迎え、日本とマーシャル諸島に暮らす人々、それぞれの視点と戦争の記憶が交差する映画の制作経緯を伺いました。

直接の戦争体験がない表現者たちのインタビューをまとめた編著書『なぜ戦争をえがくのかー戦争を知らない表現者たちの歴史実践』をめぐっては、それぞれの関心に基づいて、個別の出会いや気づきを深めることで、死者が残していった記憶や語られなかったことにもアクセスする可能性について話を広げていただきました。

セミナー2のゲスト、アーティストの青木陵子さんと伊藤存さんには個々の創作活動に加えて行う、共同制作について伺いました。

宮城県石巻で行われたリボーンアート・フェスティバル(2017・2019)では、生活が営まれる場所、土地、人々と出会い、そこにあるものからつくること、それを発見するプロセスから何かを探ろうとしていると言います。「つくるということ」を介在させることで、ものや人の関係性が循環していく面白さについて伺うことができました。

二回の講座ともに、制作される作品と社会が響き合うようになされた工夫にも触れていただき、死者や土地の記憶といった共生に含まれる主体の多様さ、何かをつくるということを介在させる、共生の技法についてお伺いできたように思います。

最終回となるセミナー3では、「〈ことば〉との距離、〈ことば〉への期待」と題して、共生ということばそのものの表現が持つ意味や可能性について考えます。ゲストは、小説やエッセイの執筆ほか、熊本市現代美術館「こわいな!展」で熊本を歩き採集した「100ものがたり」の展示などに活動を広げるいしいしんじさん、共生学の観点から医療、人間と植物などの共生について研究を重ねてきた文化人類学者のモハーチ・ゲルゲイさんです。

セミナー3「〈ことば〉との距離、〈ことば〉への期待」
日時 |2021年11月27日(土)16:00〜17:30
講師 |いしいしんじ(小説家・文筆家)/モハーチ・ゲルゲイ(文化人類学者)
聞き手|奥山理子(HAPS, Social Work / Art Conferenceディレクター)

無料、Youtubeでのオンライン配信、要申し込みとなります。講座の詳細・ご予約はこちらからどうぞ

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第二回SW/ACの談話室を開催しました。

オンラインで対話の場を作る「談話室」は、第二回目の開催が無事に終了しました。

今回の参加者はSW/ACをいれて6名。高齢者や障害者に関わる福祉施設を運営されている方々、写真や絵画やダンスの活動に関わる方々などに来ていただきました。

自己紹介からはじめ、対話を進めていきましたが、今回主なテーマになったのは「働くこと」でした。

誰かのために働くときに、何に応えたいと思うか。考えを言葉にしにくい人たちが働く場をつくるとき、何を整理して、準備する必要があるのか。食べていく仕事と、賃金は発生しないが貢献したり、経験が豊かになる仕事に違いはあるか、など。

仕事のジャンル、職場、賃金の有無などにかかわらず、ある人のエピソードが別の人のエピソードを引き出し、働くことにまつわる対話へと繋がっていきました。仕事場の仲間内での議論であれば、実際の解決すべきの問題や人間関係の話になるところが、少し現実の問題とは距離を取って、答えを決めない「働く」「仕事」って一体どういうことなんだろうかと考える時間になりました。

私たちとしては、実際に福祉やアートの現場で皆さんが何を見たり感じたりして働くということに関わっているのかを伺う機会にもなりました。こうして垣間見える現場の様子が、SW/ACの相談事業の肥やしになっていきます。参加者の皆さんがお互いに関心を持ってくださったのも嬉しく感じる回でした。


今回のSW/AC通信はここまで。初冬というのにふさわしい冷え込みがやってきたと感じるのは、歴史ある日本家屋の中で仕事をしているからでしょうか。京都でもイベントが盛りだくさんの11月です。暖かくしてお出かけください。

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Social Work / Art Conferenceでは、各専門家の知見を活かしながら、社会課題を探求し制作するアーティストや、よりひらかれた活動を目指す事業者や文化施設などからの相談に対応します。詳しくはこちらをご覧ください。


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