SW/AC通信vol.15
福祉、地域、教育などのさまざまな分野とアートをつなぐ相談事業、Social Work / Art Conference(SW/AC)がニュース形式で情報をお伝えするSW/AC通信です。今回はSW/ACが実施したトークイベントに関連するお知らせです。
SW/AC Talk|しらとりけんじの京都滞在と写真活動を公開しました。
SW/AC進行のもと、HAPS HOUSEギャラリーにて、全盲の美術鑑賞者で写真家でもある、しらとりけんじさんとトークイベントを行いました。
しらとりさんからSW/ACに展覧会に出展の予定があり、滞在制作のために京都に来たいと問い合わせがあったのは、昨年度末のことでした。
アトリエみつしまの企画展「まなざす身体」で、日常的に撮り続けている写真を展示することになり、せっかくであれば京都に1ヶ月ほど滞在し、写真を撮りたいとのこと。SW/ACでは、HAPS HOUSEを滞在先として提供し、滞在中のサポートをすることになりました。
しらとりさんは一人で行動するときに、デジタルカメラで撮影をする写真活動を15年以上続けておられます。散歩する、買い物へ行く、どこかへ移動するときなど日常的な行動の中での撮影です。
さらに、「撮影した物にさほど関心がない」というしらとりさんは、1日で数百枚を撮り、データを残してきました。
美術館の協力を得て写真を初めて展示したのは、福島県猪苗代にある「はじまりの美術館」の企画展「(た)よりあい、(た)よりあう。」(2021年)。美術館のnoteにその際の展示と滞在の様子が記録されています。
しらとりさんは白杖を片手に、状況を把握しながらテンポよく街を歩きます。知らない街を一人で歩けるようになるまでには、二週間くらいが必要とのことで、私たちは手引きをして駅までの道のりを一緒に把握したり、買い出しを手伝ったりすることになりました。
しらとりさんに1ヶ月滞在してもらうなかで振り返ることになったのは、私たちはどのようにHAPS HOUSEを使っているのか、どのように地域で活動しているかということでした。それは空間がバリアフリーかどうかという話だけでなく、仕事場として使うからこそわかっていること、知らないままのことなど、自分たちの関心のありようがしらとりさんを通して浮かび上がるようでした。
例えば、夜間HAPS HOUSEではどんな音が聞こえてくるのか。周辺の福祉施設や地域の拠点は案内できても、「この辺は何があるの」と聞かれてみるとなにに使われているのかわからないビルがあったり、お寺が周辺に多いことに改めて気付いたり・・・。
滞在終盤に行ったトークイベントでは、しらとりさんが滞在中につながった人たちを招いて、京都で撮影した約2500枚の写真を見ながら、滞在を振り返りました。
HAPS HOUSEでの滞在や、しらとりさんにとって「シャッターを押したら完結する」という写真活動の始まり、「街に自分を置いてみる」設定づくりなど、活動のコンセプトに触れるお話を伺うことができました。ギャラリー内での録音のため、少し音声がよくないですが、ぜひしらとりさんの世界を聞いてみてください。
トークイベントに参加した人たちとは、しらとりさんの写真や写真活動について様々な感想・疑問を共有することができました。
・写真の他に、記憶を思い出す、追体験するツールにはなにがある?
・「見る」を含まない白鳥さんの写真から、なにを見ればいいだろう。
・使い捨てカメラで白鳥さんが撮影すると何が撮れる?
・白鳥さんにとって表現とは。
・写真から撮影時の白鳥さんの感情や状況を読み取ってしまうのはなぜ?
・写真の中で特に目につくものはなに?
見る人をさまざまな問いに巻き込んでいく、しらとりさんの写真が10月から京都のアトリエみつしまで鑑賞できます。
展覧会概要・関連イベント情報はこちらよりご覧いただけます。
今回のSW/AC通信はここまで。ようやく秋らしくなってきました。文化の秋を満喫しましょう。
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