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ジャンダルムの次は・・・。

私は先月末、国内最難関と言われる山、ジャンダルムに登って来た。
その岩山を登ったことは登山者の間では自慢できるものらしく、私はまるで天下を取ったような気持ちでいた。
もちろん、もっと難しい山、と言うかルートはあることは知っていた。バリエーションルートだ。色々な山に、普通の登山道ではない、玄人が登るルートが幾つもある。そこではロープを使って登るものが多い。
私はジャンダルムの次はバリエーションルートか、などと思ったが、いやいや、バリエーションルートを行くには私には技術も知識も経験もない。
雪山も知らないし、テント泊も始めたばかりだ。
それでも私はジャンダルムで岩登りの快楽を知ってしまったため、YouTubeでロッククライミングの動画を見た。北岳バットレスという岩壁を登る動画だ。スリリングでワクワクした。ロッククライミングなど死ぬ確率がやたら高く、どこが面白いのだろうと以前は思っていたが、今は動画を見て、面白そうだな、と思う。
しかし、私は四十五歳である。今から始めて遅いと言うことはないが、他にもしたいことがあるし、まだまだ登山は初心者だと思うところが大きく、ロッククライミングは夢としてしまっておこうと思う。私はとりあえず、多くの山を登って見たい。
山を楽しむ要素は危険な岩場を乗り越えるだけにあるのではない。
出発前の計画を立てる楽しみ、調べる楽しみ。
長時間の歩行の末、辿り着いた山頂からの絶景。
山の上から見る日没と日の出。
写真を撮ること。
山メシを食べること。小屋ならばそこの料理、テント泊ならば自炊した料理。
テントで眠ること。
夜の星空を見ること。
景色を見ながらビールなどを飲むこと。
小屋やテント場でまったりと過ごすこと。
山での人と出会うこと。
他にも色々あるだろうが、バリエーションルートやロッククライミングをする前に楽しめることはたくさんあるのだ。
 
私は小説家を目指している。死ぬまで小説は書こうと思っている。しかし、もし小説を志さず、ロッククライミングに人生を捧げていたとしたら、年齢により当然、登れなくなるときが来るだろう、そのときは何を生きがいにするのだろう。ロッククライミングが人生だとしたら・・・?それはあらゆる肉体を使った趣味に言えるものかもしれない。
そういう点では私は小説がありラッキーである。九十代まで生きたとしても書き続けようと思う。登山や旅行は若いうちにしておこうと思う。
登山の記事としてこの文章を書き始めたが、私はどちらかと言うと、登山より海外旅行をたくさんしたい人間である。世界中の景色を堪能し、それを小説にフィードバックしたい。私が書く小説は冒険ファンタジーで、海外旅行が非常に重要になる。ギリシャを舞台にした小説を書くため、ギリシャまで取材旅行に行ったこともある。
登山を題材にした小説も書く。その場合は冒険ファンタジーではなく純文学になりやすい。そのひとつが以前、新潮新人賞の一次選考を通過したことがある。ただ、私にとって純文学は、小説の王道ではなくて、冒険ファンタジーが王道だと思っている。王道ではない純文学は気楽に書いてnoteに投稿したりする。昨日も『ジャンダルム下山後』という小説を投稿したばかりだ。この小説はもう少し時間をかければいいものを、書き殴っただけで、投稿してしまった。ジャンダルム登山の体験は私にとって重要であるため、今後も何度も小説の題材にするかもしれない。
登山は昔から人生の喩えにされる。私に自覚がなくとも、登山のことを書いた記事が、人生について書いた作品と受け取られることがある。それらの作品は『山の美学』というマガジンにまとめられてあるから、読んで欲しい。特に私自身が一番出来のいい作品と思っているのが『つまらない山に登る意味』である。ぜひ読んで欲しい。
最後に「ジャンダルムの次は・・・。」という表題の具体的な答えを書きたい。ジャンダルムに登ったときの穂高岳山荘から夕陽を背にして見えた笠ヶ岳にしようと思っている。テント泊で行こうと思う。晴れれば稜線歩きが気持ちいいだろう。


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