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今夏、ジャンダルムに登ると決めた!

私はこの前、八ヶ岳の赤岳に登った。
このときは、赤岳鉱泉にテント二泊してまったりする予定だった。一昨年、去年と、奥穂高の吊り尾根、剣岳、と登ったため、もう岩場登りはしばらくいいや、それよりもテント泊を覚えよう、そう思って八ヶ岳に行った。
すると、自分がいかにテントを張る能力がないかに気づかされたのと、まったり登山にしては赤岳は岩場だらけで、甘くなかったことが起因して、私の心に難しいコースを登りたいという火が点いた。
狙うは、奥穂高に登ったときに、その山頂から西へ延びていた稜線上にあるジャンダルムだ。
あのときは霧で見えなかった。
しかし、そこにジャンダルムはあるはずだった。
ジャンダルムは、西穂高と奥穂高を結ぶ稜線上にある標高3163メートルある岩の塊で、フランス語で国家憲兵のことらしい。よくわからないが、とにかく、日本の登山者にとっては憧れの岩塊だ。北アルプス一般ルート最難関と言われている。その上に立つことが登山者にとってひとつのステータスになるという。ようするに、「俺はジャンダルムに登ったことがあるぜ」と胸を張れるというわけだ。
そこへ行くには「馬の背」という両側切れ落ちた狭い岩場を通ったり、「ロバの耳」とかいう難しい登攀をしなければならない。もちろん落ちたら死ぬ。
その死ぬかもしれないコースに行ってみたいと思ったのは、先にも書いた八ヶ岳の赤岳である。赤岳はジャンダルムに比べたら難易度は低いはずだ。しかし、霧の中、寒い五月の夜明け前に登ったことでその恐ろしさは倍増していただろう。私はジャンダルムには必ず晴れた日に登ろうと思う。霧がかかっていたらやめようと思う。赤岳では霧のため完全に方向感覚を見失っていた。ジャンダルムではもしかしたら霧の場合、進むのに必死になってジャンダルムを通過して西穂高へ行ってしまうかも知れない。それは私のレベルでは無理である。必ずジャンダルムに登頂したら、奥穂高にある穂高岳山荘に戻ってきたい。
登山は奥が深いが、私はプロの登山家になろうとは思わない。年齢的に無理というか、小説家になりたいという夢があり、登山よりはそちら重視だ。しかし、登山は、ジャンダルムは、私に夢があろうがどうだろうが、登るとなると容赦してくれない。舐めたら死ぬ。命を賭けたとき、自分の境地はどうなるかに興味がある。
私は冬山登山の知識や技術はなく、夏山のテント泊も経験が浅い。まだやるべきことはたくさんある。どこまでできるかわからないが、少しずつステップアップしていきたい。
ないと思うが、いつか、バリエーションルートなどやるかもしれない。しかし、たぶん、私にとってこのジャンダルムが人生最大の難関登山になると思う。
それをこの夏にやろうと思うのだ。
私は小説家になりたいと先に述べた。世界一の小説家だ。
しかし、世界一の登山家になろうとは思わないし、いまさらなれないだろう。ではなぜ、多くの登山者が行くジャンダルムに行こうと思うのか?小説が大事ならば命の危険を冒してまでジャンダルムに行く必要はないじゃないか?そう思う人もいるだろう。しかし、私は冒険ファンタジーを書いていこうと思っている。小説の中で冒険しようと思っている。そうなると、現実の自分が冒険しないわけにはいかない。パソコンの中、頭の中でする冒険と、全身を使ってやる冒険はまるで違う。小説上の冒険もそれはそれで意味があるが、どちらが真の冒険かと言えば、全身を使った冒険の方だ。小説ではただ冒険するのではなく、テーマも掘り下げる。それは文学、芸術だ。一方、登山はテーマも意味もない。純粋に楽しむ趣味である。私がジャンダルムに登ったからと言って、例えば、私が芥川賞を取ることより凄いと思う人は少ないかも知れない。しかし、登山を始めたばかりの人からすれば、芥川賞も凄いが、ジャンダルムの凄さがわかるだろう。私もそれに取り憑かれている。価値とは社会的なものにあるばかりではない。人と比較すべきものばかりではない。小説は承認欲求が前面に出ているが、登山は自己承認欲求だろう、ようするに自己満足だ。
この夏が過ぎたら、「ああ、俺はジャンダルムに登った男だ」そういう感慨を持てたら最高だと思う。
私は精神を病んでいて(統合失調症という)、小説家になりたいと思っている。似たような人は多いのではないだろうか?つまりインドア派だ。そんな人は、この日本に、ジャンダルムや、剣岳、奥穂高の吊り尾根など、面白いところがたくさんあるところに目を向けて欲しい。身体をもって冒険をするという、小説やマンガや映画やゲームなどでやる冒険ではなく、本当の冒険をしてみて欲しい。
情報化社会である。
登山は昔よりも身近になった。私は動画などでジャンダルムを徹底的に調べ、イメージを持って本番に臨むつもりだ。
その前に六月は予定通り、八ヶ岳の、今度は赤岳などがある南八ヶ岳ではなく、北八ヶ岳に行こうと思う。それが終わったら、いよいよ、ジャンダルムに向けて準備が始まる。
いや、もう心の中では始まっている。
去年は「小説家になろう」というサイトに一年四ヶ月かけて長編小説を連載した。しかし、夏の剣岳に登ったところで、ぷつりと切れてしまい、すべて読み返して、一ヶ月後また再開した。
今年も小説は書くが、ジャンダルムも間違いなくひとつのピークになるだろう。
あー、夏が楽しみだ。

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