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統合失調症者に例として槍ヶ岳登頂を目標に勧めてみる

私は統合失調症者にアウトドアを勧める会会長を勝手に名乗っている者である。自身統合失調症の当事者である。現在四十五歳だが、十年ほど前から夏山登山を趣味としている。毎年、目標の山を決めて、そこに向けて近場の低山に登って体力をつけている。

ここに貼り付けた記事に、夏山小屋泊登山の装備を紹介したから参考にしてみて欲しい。
で、今回は具体的に、槍ヶ岳山頂に登るにはどうしたらよいか書いてみる。槍ヶ岳を選んだ理由は見かけの割に難易度が高くないからだ。怖いのは穂先くらいのもので、今回紹介する槍沢コースは槍ヶ岳登山では最も登りやすいルートである。

まず、槍ヶ岳やりがたけの紹介をしたい。
この山は長野県にあり、北アルプスでおそらく最も有名な山である。
北アルプスに登る人の中には、槍ヶ岳を見るために登る人もいる。私も今年、槍ヶ岳が逆さまに映るという鏡池のある鏡平という場所に泊まった。

鏡池
中央の尖った山が槍ヶ岳

その山頂は穂先と呼ばれ、梯子で登れるようになっている。あまりの人気に登山者で渋滞するため、登り用の梯子と下り用の梯子と分かれている。
標高3179メートルの山頂は非常に狭い、しかしその分360度の絶景を楽しむことができる。そこにいる制限時間などないから、十分で降りてきてもいいし、一時間以上ゆっくりすることもできる。それは自由だ。

さて、そこに登るためにはどうしたらいいか。まず、上に貼り付けた装備を買い揃えねばならない。統合失調症を患っている人の多くはカネがない。すぐに道具を揃えられるかどうかも疑わしい。ただ、目標の槍ヶ岳はあくまで目標で、まずは登山靴、ザック、レインウエアを買って(これらは必需品で高い)低山を登ることをお勧めする。この三つは絶対必要な三点セットだ。

そして、準備ができたら、まずは槍ヶ岳に登るコースを決める。
ここでは最も簡単なコースである槍沢コースを紹介しよう。
その登山道に入るには、上高地に行かねばならない。
上高地はマイカー規制があり自家用車では行けない。マイカーで行く場合、東方面からならば沢渡さわんど駐車場から、西方面からならば、あかんだな駐車場からバスに乗換えねばならない。
東京からならば新宿から上高地へ直行バスが出ている。
大阪駅からも直行バスが出ているらしい。他の都市の方は自分で調べて欲しい。
私は静岡県に住んでいるため、槍ヶ岳に登ったときは電車を使った。身延線という線路で甲府に出て、中央線で松本まで、松本から松本電鉄で新島々という駅まで行って、そこからバスに乗って上高地に入った。

上高地バス停

夜行バスならば朝に着いてそのまま槍ヶ岳に登れるのか知らないが、ここでは昼頃、上高地に着いたという設定で登山計画を立ててみたい。
登山の計画は、私は昭文社の出している『山と高原の地図』(1320円)を見て立てる。その地図には参考コースタイムが書かれてあるので、それで時間を見る。今回もその方法で計画を立てる。
登山計画書は上高地のトイレの近くにポストがあるからそこに入れればよい。
まず、上高地から梓川あずさがわという川に沿って上流へ歩く。その道は一般の観光客で賑わう、車の通れる道で、ほぼ平坦である。そこを歩くだけでも価値があるような美しい道だ。途中、猿に会うなど面白いと思う。三時間歩くと横尾山荘に着く。そこに一泊することにする。もちろん予約が必要だから、事前に予約しておく。一ヶ月前から予約を受け付けるので、一ヶ月前のその日に予約した方がいいと思う。予約時、食事はどうするか訊かれると思うが、私ならば夕食とお弁当を頼む。山小屋の夕食はたいてい五時からである。朝食も五時からである。しかし、五時からの朝食では、登山では遅い。なので弁当を頼み、夕食後受け取って、翌朝四時に起きて、その弁当を食べてから出発する。山小屋の消灯は八時か九時なので、四時起きでも充分だろう。もっとも、夜、することはなく七時頃に眠ってしまうこともある。あ、山小屋に泊まったことのない人に山小屋とはどんなところなのか、特に相部屋はどうなっているのか見せておいたほうがいいと思う。

槍ヶ岳山荘の相部屋の布団

この写真は槍ヶ岳山荘の私の寝た布団である。見るとわかるように手前にカーテンがある。貴重品が気になると言う人もいるかと思うが、「山を愛する者に盗人はいない」と信じるしかない。私自身、盗まれたことは一度もない。
と、ここで山小屋の料金を紹介してみたい。今回の例に取った横尾山荘は、今調べたところ、一泊二食で一万四千円だった。夕食が二千五百円で、弁当か朝食が千五百円である。素泊まりだと一万円である。槍ヶ岳山荘も同様だった。ちなみにビールは350㎖で五百円か六百円だったと思う。ペットボトルのソフトドリンクは五百円が山の相場だ。私はこの計画で、槍ヶ岳山荘にも泊まる予定だから二泊の宿泊費だけで二万八千円になる。どうだろう?高いだろうか?これに交通費、食費、それから装備費用、ずいぶんカネがかかるだろう。だが、これは目標である。すぐに実現できないからと言って、目標を諦めてはいけない。
さて、横尾山荘に泊まり、翌朝、四時に起きる。昨日受け取ったお弁当を食べ、ヘルメットを被りヘッドランプを点けて四時半に出発だ。
また、川沿いに北上し、槍沢ロッジを目指す。地図によると一時間四十分で着く。山小屋にはたいてい有料トイレがついているから、そこで用を足したい人は足せばよい。箱に百円か二百円入れればよい。宿泊者は別途料金を払う必要はない。だから、言わなかったが横尾山荘でトイレは済ましておいた方がいい。
槍沢ロッジを出て槍沢をさらに上流に向かう。四十五分でババ平という場所に着く。そこはテント場で水場もある。天然の水を飲んでみるといい。美味いよ。
それから、五十五分歩くと、大曲という場所に着く。そこは右へ分岐があるが、まっすぐ行く。そこからさらに一時間でまた分岐に出る。そこは真っ直ぐ進み一時間二十分歩けば、槍ヶ岳山荘に着く。この時点で十一時四十分だ。たぶん、まだ槍ヶ岳山荘が受付を始めていない時刻だ。この時点で、昼食を摂ってもいいが、槍ヶ岳山頂に登ってみよう。片道三十分らしい。ザックは小屋に置いていく。貴重品と水、それから、家から持ってきたパンなど昼食をサブザックに入れて持って行こぅ。山頂で食べるのだ。
穂先はその名の通り槍の先端のように尖っている。ヘルメットは必需品だとこのとき気づくだろう。ヘルメットが必要な山かどうかは事前に調べておいて、持って行かなくともよい山ならば持って行かない。槍ヶ岳は必要な山だ。梯子を慎重に登る。登りきったら、穂先の上、登頂だ。

槍ヶ岳山頂
槍ヶ岳山頂からの景色
奥は穂高連峰

ここで、パンを食べることにしよう。絶景を見ながらの昼食。実にいい。
そして、食事と景色を堪能したら小屋に降りることにしよう。

山頂から見た梯子と槍ヶ岳山荘

この写真のように山小屋が見える。
下りの梯子を降りていく。
山小屋にチェックインしたら、あとはその周辺を散策して写真を撮ったり、ビールを飲んだり、部屋で昼寝したりして午後を過ごす。小屋でビールなどは売っているのでそれを買う。もちろん割高だ。私はつまみを必ず持って行く。この槍ヶ岳山荘の前には絶景を見つつビールを飲めるカウンターがあるのでそこで飲む。実にいい時間だ。
この小屋は人気の小屋で客が多い。私が行ったときには団体が何組もあった。まるで観光地のようだった。
夕食を食べたら、外に出て夕陽を見よう。沈んでいく夕陽を眺めているのは最も贅沢な時間かもしれない。また、夜空を見るのもいいかもしれない。晴れていれば満天の星空に流れ星が見えるだろう。

夕陽

三日目は登って来たコースを上高地まで下山だ。
また四時台に弁当を食べる。もし、その気があるならば穂先にもう一度登って日の出を見るのもいいかもしれない。私は穂先に登らなくとも見えると思っていたら、日の出は穂先の向こうに出たらしく見ることができなかった。

日の出の手前に穂先

五時頃下山開始する。
四時間五十分で横尾に着く。つまり、九時五十分だ。そこから三時間十分で上高地に着く。つまり、午後一時だ。
上高地はもう観光地だから、普通にレストランで食事して、バスに乗ればよい。
交通費は、今調べたら、新宿からのバスは片道一万二千円とあった。往復二万四千円だ。宿泊費が二泊で二万八千円だったから、これだけで五万二千円かかってしまう。昼食代もあるし、ビールを飲んだり、ソフトドリンクを飲んだり、トイレのチップを入れたり、土産物を買ったりすれば、六万円は超えてしまう。
しかし、登山を始めた者がいきなり槍ヶ岳に登るわけではない。低山で慣らしながら、徐々に難しい山にチャレンジして行くとよいと思う。そのうちにはおカネも貯まるだろうと思う。

私は登山の趣味を始めたのは現在の職である介護士になってからだ。
いや、なるときに「登山を趣味にしよう」と決めた。
自然の中の趣味というのはいいものだ。
統合失調症にも無意識下でなんらかの良い影響を与えるかもしれない。
ただ、私は登山をリハビリとか健康のためにしているのではない。
純粋に楽しみとしてやっている。
健康のためとか、リハビリのためとか、そのような目的で人間は遊んだりしない。人間は遊ぶとき、ただそれが楽しいから遊ぶのである。
登山は楽しい。
ぜひお勧めします。


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