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【コント小説】マジメ戦隊マジメマン

*( )内はツッコミです。
 
 
場所はなぜか人気ひとけのない採石場。
 
 
美穂みほ「なに?豆男まめおさん。こんな所に呼び出して」
豆男「僕は今の会社に入社したときから、ずっと・・・ずっと、美穂さんのことが・・・」
美穂「やめて!それ以上聞きたくないわ。あなた、自分を何だと思ってるの?仕事はできないし、人望は薄いし、友達も少なそうだし、三十代でハゲていて腹は出てるし、たぶん童貞だし、いいところひとつもないじゃない。私に告白できるだけの男だと思ってるの?」
(がんばれ、豆男)
豆男「そうさ、僕はダメな男だ。でも、美穂さんを思う気持ちなら誰にも負けない」
美穂「じゃあ、その気持ちを見せてみてよ!」
豆男「え?ど、どうやって?」
 
そこへ、豆男達の会社の同僚で乱暴者の熊五郎くまごろう登場。
 
熊五郎「へっへっへ、豆男なにやってんだ?」
豆男「熊五郎!どうしてここに?」
熊五郎「おまえらが給湯室で話している声が耳に入ってな。それで来てみたってわけ」
美穂「熊五郎さん、あなた、なんなの?いつも私のことを追い回して。セクハラで訴えるわよ」
熊五郎「何を言ってんだよ、美穂」
美穂「私の名前を呼び捨てにしないで」
熊五郎「いいじゃねえかよ。これから一緒にベッドの中に入る間柄じゃねえか」
 
美穂は豆男の背中に隠れる。
 
美穂「たすけて、豆男さん」
 
(豆男!がんばれ!チャンスだ!ここでいいところを美穂さんに見せてやれ!)
 
熊五郎「なんだぁ~?やろうってのか?ダメ男の豆男ちゃんよう」
豆男「み、美穂さんに嫌がらせをする奴は許さないぞ!」
熊五郎「なにぃ~?まるで俺が悪者じゃねえかよ。おい、てめえ、ふざけんなよ!」
 
熊五郎、豆男の顔面を殴る。ゴッ!
豆男は吹き飛ばされる。
熊五郎、美穂に襲い掛かる。
 
熊五郎「もう我慢できねえや。美穂ちゃん。僕とここでいいことしましょう」
美穂「キャー、助けて誰か!」
 
倒れていた豆男は胸のポケットから眼鏡を取り出す。
 
豆男「この眼鏡をかければ、僕は正義のヒーローマジメマンに変身する。そうしたら、熊五郎なんかすぐに倒すことができる。でも、マジメマンの正体は誰にも明かすことはできない。でもここは美穂さんのことが第一だ」
 
豆男は眼鏡をかけた。
「変身!マジメマン!」
 
熊五郎は美穂を押し倒し、彼女のシャツの前を開けようとしている。
 
「やめろ!」
熊五郎「誰だ!てめえは!」
 
「この世に正義がある限り、悪は絶対許さない。正義の味方、マジメ戦隊マジメマン参上!」
 
(って、眼鏡をかけて、緑のマントを体に巻いている豆男じゃねえかよ。しかも足は裸足だし、なんか嫌な予感がするのは俺だけか?それに「戦隊」ってなんだよ?独りじゃねーかよ。アホか?)
 
美穂「たすけてください!」
 
(おお、しかし、あんなふざけた姿でも、ピンチの女性にはヒーローに見えるのかな?)
 
熊五郎「しゃらくせえ」
 
熊五郎立ち上がる。美穂はマジメマンの方に駆けて行く。マジメマン両腕を広げ彼女を迎え入れようとする。マントの前が開いた。
 
美穂「ぎゃー!変態!」
 
美穂は逆に熊五郎の背中に隠れる。
 
(あーあ、やっぱな、マントの下は全裸じゃねーかよ。予想通りだよ。ハゲで眼鏡かけてて、マント一枚しか着けていない、腹の出たおっさんじゃねーかよ。そりゃ、美穂さん逃げるわ)
 
マジメマン「とうっ」
 
マジメマン、でんぐり返しを二回して、開脚して立ち上がる。
 
(でんぐり返しは意味ねーだろ。それに開脚すんじゃねーよ、みっともねーもん丸見えじゃねーかよ。誰も見たかねーわ。テレビじゃアウトだ、恥ずかしい)
 
熊五郎「ふざけやがって」
 
熊五郎、マジメマンの顔面を殴る。ゴッ!
マジメマンは吹き飛ばされる。
 
(弱っ!豆男と同じやられかたしてんじゃねーかよ。何がマジメマンだよ。強くねーじゃねーかよ。そんなんで正義を守れるのかよ?っていうか、正義の味方の恰好かよ、変態じゃねーか)
 
熊五郎、マジメマンに襲い掛かる。
マジメマン、立ちあがり際に、砂を熊五郎の顔に向かって投げる。
熊五郎、眼を手で覆う。
 
熊五郎「ぐっ、眼が見えねえ、卑怯だぞ、マジメマン」
 
(卑怯だ。正義の味方のすることじゃねえ。いや、戦術としては古典的にありなのか?あれ?俺は何をマジメに考えてるんだ。まさか、これがマジメマンの力か?)
 
マジメマン「とうっ」
 
マジメマンは跳び上がった。
 
(跳んだー!これはマジですごいぞ!二メートル以上跳び上がった。おお!そのまま、開脚し、熊五郎の顔を股間で挟んだ!最低だ!)
 
熊五郎「ぐわー、なんか柔らかくて嫌なもんが、顔に押し付けられたー!」
 
ぷぅう!
 
(屁だ。屁をこいたー!しかも熊五郎の顔を股に挟んで!熊五郎、もろに臭いを喰らったぞ!なんて下劣なんだ!下劣過ぎる!)
 
熊五郎は気を失って倒れた。
 
マジメマンは美穂に近づいて手を差し伸べた。
 
マジメマン「お嬢さん、おケガはありませんか?」
美穂「ギャー、来ないでー!」
マジメマン「そうですね、私は人とは少し違う姿をしています。怖がるのも当然のことかもしれません。あ、警察が来ましたよ。よかったですね。おまわりさん!この女性を保護してあげて下さい」
警察「逮捕だー」
マジメマン「犯人はもう気絶しています。一時間は意識が戻らないでしょう」
警察「公然わいせつ罪の現行犯で逮捕だ!」
マジメマン「公然わいせつ?強姦未遂では?この男は女性を押し倒してシャツを開けようとしたのですからね」
 
マジメマンに手錠がかけられた。ガチャ。
 
マジメマン「え?私が?なぜ?」
警察「自分の姿を見てみろ」
マジメマン「私の姿?私はどこからどう見ても正義の味方に見え・・・え?ああっ!トレードマークの赤いパンツを穿くの忘れてたー!」
 
(そこ、一番重要な所じゃねーかよ!アホか!)
 
 
<了>

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