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精神病でも登山者憧れの国内最難関の山ジャンダルムに登れます

私は精神病で特に重いと言われている統合失調症を患っている。十六歳で発症し、二十一歳で精神科を受診した。以来、服薬を欠かさず、徹夜もせず、現在四十五歳である。二十代は肉体労働の仕事をしていた。三十四歳で現在の介護職に就いた。その時から、毎年夏には泊まりがけの登山をするようになった。
コミュニケーションに難があるので、独りで山に行く。もちろんいきなり初心者が行くには登山というものは易しくはない。私は少しだけ高校で山岳部に所属していたため、登山のイメージはなんとなく掴んであった。
最初は易しい山から登り始めた。
私は静岡県に住んでいるので中部地方の山にアクセスが良く、日本アルプスを中心に毎年夏に登っている。
小屋泊が多い。
一昨年からテント泊を始めたが、これはまったくの素人だが、私には向上心がある。これからもテント泊はガンガン挑戦していきたい。
挑戦と言えば、自分のスキルより少し難しい山にチャレンジしたい。
一昨年は奥穂高に登り、去年は百名山最難関の剣岳に登った。そして、今年は満を持してジャンダルムに挑んだ。
国内最難関のその山は、精神障害者だからと割引をしてくれるわけではない。その難コースは、当たり前だが健常者とまったく同じなのだ。甘えは許されない。落ちたら死ぬ、そういった崖の上を降りたり登ったりするのである。

私は寛解というのか知らんが、精神は安定している。山のおかげも少しはあると思う。登山でリハビリというわけではないが、十年間登って来た思い出を振り返ると、精神病なしに、素晴らしい思い出となっている。そんなわけだから私は「統合失調症者にアウトドアを勧める会会長」を勝手に名乗っている。
ジャンダルムは健常者でも大変難しい山である。一般の人が一生に一度は登りたい山が富士山ならば、登山者が一生に一度は登りたい山がジャンダルムである。
私はそこに行ってきた。
これは自慢である。
精神障害者だから、あれができない、これができないと言うのではなく、何年も時間をかけて、できるように努力するべきだと思う。そう言うと、あなたのように軽い症状の人ばかりではない、と言われそうだが、私は充分重かったのである。障害者手帳も以前は二級で、現在は三級である。二級の時は障害年金をもらっていた。
それでも挑戦を怠らなかった。
障害者だから健常者のようには生きられない、と自分を低く見るのではなく、健常者でもできないことをやってやろう、と野心を持つことが大事だと思う。私は小説家になりたいと思っている。しかも世界一の小説家だ。これは妄想と取られるかもしれないが、実現する前は誰だってそのように思われるものである。
ジャンダルム登山だって、精神障害者には無理だよ、と言われるかもしれないが、それには何の根拠もない。精神障害者は、わずかな障害年金で暮らし、福祉施設に通い、そこのコミュニティーの中で生きていくようなイメージがあるかもしれないが、健常者にも出来ないことをやりとげることもできる。
登山したからといってそれで精神病が治らなくとも良いと私は考えている。思い出と、登ったという満足感があればいい。その積み重ねがあとで振り返ったときに、自分の人生は捨てたものじゃなかった、素晴らしかったと思えると思う。
精神病だからと精神病患者らしくなる必要はない。
人生は人それぞれだから、自分には自分だけの人生があると考えた方が良い。
統合失調症のある私は国内最難関の山、ジャンダルムに登って来たよ。

ジャンダルム山頂にある天使の看板を持つ私

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