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【コント小説】医者から転職した肉屋

俺は太っているが肉が好きで、今日もとんかつを食べようと思っている。
さっそく、肉屋へ行って、とんかつを買おうと思う。
 
俺「すみません、とんかつ三枚ください」
肉屋「とんかつ三枚?君は太っているじゃないか?ダメだ、ダメだ。とんかつなど体に悪い。八百屋に行って野菜を買いなさい」
俺「は?何言ってんだ?あんたは医者か?」
肉屋「ああ、そうだ。元医者だ。先月、転職して肉屋になったばかりだ」
俺「じゃあ、肉屋じゃねーかよ。ほい、とんかつ三枚くれよ」
肉屋「ダメだと言っているだろう。君は自分の健康のことがまったくわかっていない」
俺「なに言ってやがる。肉屋は客がとんかつ三枚くれと言ったら売るのが当たり前だろう?俺の健康なんか知ったこっちゃないだろう?」
肉屋「いいや、私は君の健康を考えて言ってるんだ」
俺「うるせーな。とんかつ三枚くれよ」
肉屋「ダメだ。君はそんなに肉ばかり食べていると死ぬぞ」
俺「そんなことあんたが気にしなくていいんだよ。肉屋は客が肉くれって言ったら売ればいいんだよ」
肉屋「あと五十年生きたかったら、肉は控えなさい」
俺「俺は四十五歳だ。あと五十年生きたら九十五歳だ。肉のない五十年より肉のある三十年がいいんだよ。ほれ、とんかつくれよ」
肉屋「君はそんなに早く死にたいのか?」
俺「いいから、肉をよこせよ。あんたは医者じゃないんだ、肉屋なんだよ。客が肉が欲しいって言ったら売るのが肉屋だろうがよ」
肉屋「あんたはそんなに死にたいのか。確実に死ぬぞ」
俺「人間はみんな確実にいつかは死ぬもんなんだよ。ほれ、とんかつ三枚」
肉屋「ダメだ。君のために売れない」
そのとき、細身の若い女性が来た。
女「お肉屋さん、とんかつ三枚ください」
肉屋「あいよ。毎度ありがとうね」
女はとんかつを三枚買って帰っていった。
俺「おい、肉屋」
肉屋「なんだね?」
俺「おまえはあの女には肉を売るのに、俺には売れねえってのかよ?」
肉屋「当然だ。彼女は痩せている。君は太っている」
俺「じゃあ、あの女はとんかつを三枚買っていったが、ひとりで食べると思うか?きっと、夫と子供がいるに違いない。そのうち、夫が太っていたらどうするんだ?」
肉屋「そうか!しまった」
肉屋は慌てて店を飛び出していった。
「おくさーん、ご主人の精密検査をさせてください!」
俺は肉屋が飛び出した隙に、とんかつをショーケースから三枚出して紙袋へ入れ、代金をショーケースの上に置いて立ち去った。

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