見出し画像

蛇に捧げられた青年

創作R-18BL、美しい青年が蛇の生贄になります。


男性が受けの性描写あります。蛇姦になります。
pixivやTwitterではお褒めいただきました。
人を選ぶ作品ですが、ご覧いただければ幸いです。

 巳の日がやって来た。
 眞言はそれにどんな感情を持てばいいのかわからない。かつては嫌で嫌でたまらなかったのに、今では受け容れている己を感じる。
 そして何より――じくじくと下腹が疼いている。
 湯殿で身を清めて白装束をまとい、じいやが差し出してくる煎じ薬を飲む。曼陀羅華が含まれているというそれは決して美味なものではないが、
「儀式に集中するためには必須なのです」
 と言われては断る理由はない。じいやは万事眞言のことを思って差配している。眞言は早世した父を継いで迦具土家の当主となった。その忠誠心と思いやりを無碍にするわけにはいかない。
 薬を服用すると、少し足許がおぼつかなくなる。じいやに手を引かれ、母屋の廊下を歩く。足袋も履いていないので、木目の浮いた床と接する足の裏がぺたぺたと音を立てる。
 たどり着くのは、『奥の間』と呼ばれる部屋である。一方に床の間がしつらえられ、残り三方を御簾で仕切られている。眞言は当主の地位を継ぐまで、この部屋の存在すら知らなかった。
 部屋の真ん中に敷かれた布団に座らされ、眞言はじいやを見上げる。布団の四囲には燭台が立ち、眞言とじいやの顔を照らす。
「俺に何かあったら……」
「じいやはいつでも御館様を見守っておりますよ」
 皺だらけの顔に、慈愛の微笑が浮かぶ。短く刈り込まれた白髪は、眞言の幼い頃から変わっていない。少し質量が減ったようにも感じられるが。
 名残惜しく思いつつも、じいやの手を離す。じいやは奥の間の敷居をまたぐと、三方の御簾を下ろして立ち去る。屋敷の奥の奥、他に呼吸する者の気配もなく、眞言は待つ。
 ――やがて。
 天井がぎしりと鳴る。
 待ち構えていたものの来訪に、眞言は身を強ばらせる。
 怖くない。身を委ね、すべてを任せれば、何も怖くない。それどころか、この部屋の外では得られないものすら手に入る。
 そう自分に言い聞かせる。
 天井の羽目板が、がたりと音を立てて外れる。隙間から覗く闇はどこまでも暗く、粘度さえ感じさせる。
 そして。
 ぼとぼとと、天井の羽目板の隙間から降ってくるものがある。当初白い縄の塊に見えるそれは、畳に落ちたとたんにばらけ、一匹一匹が意志を持つかのように這う。
 白蛇だ。
 初めてこの『巳の日の儀式』に身を晒されてから、眞言は己へ寄りつく蛇の数を数えようとしてきた。しかし、燭台に立てられた蝋燭のみの灯りでは、どうしても限界がある。光る鱗にも幻惑され、十匹以上を数えられない。
 一番早く眞言の許へたどり着いたのは、三匹の幼体だった。長さはせいぜい十五センチほど、大人の人差し指程度の太さの幼い蛇たちは、正座した眞言の足へじゃれつくように絡みついた。
「んぅっ……!」
 息を呑む。その響きひとつにも艶めいたものを自覚して、眞言は羞じる。御簾の外には人の気配はない。誰も聞いていないはずだが、世界を認識する己の存在を消すことはできない。
 この後に襲い来るものを、眞言は知っている。
 それが己に何をもたらすのかも。
 三匹の幼体は、より幼い蛇を構い、からかうかのように足の指を撫で、くすぐる。正座を崩すと、解放された足の指に巻きつき、頬ずりをするように指の股へとじゃれかかる。
「あぁんっ……!」
 声を上げてから、眞言は頬を染めて口を押さえる。
 まだ儀式は始まったばかりだというのに、このような声を上げていたら、夜明けまで体力が保たない。
 成体の白蛇が一匹、しゅるしゅると畳を滑って白い布団に乗り上げてきた。掛け布団はないので、敷布に融けてしまいそうだ。
 蛇は布団に接した眞言の片手に這い寄り、頭から上ってきた。普通の蛇とは違い、天井から湧き出てくる蛇たちは粘液を分泌している。腕の内側の柔らかい部分に触れられると、眞言の身体は敏感に反応してしまう。
「あっ」
 思わず、もう片方の手も布団に乗せた。その隙を逃さず、新手の白蛇が襲いかかる。手首に巻きつき、誇示するように粘ついた音を立てる。その刺激だけで眞言は震える。
 足先をからかっている幼体たちは相変わらず指の股に固執している。まるで、そこが眞言の弱点であると学習しているかのように。実際、眞言は六年以上繰り返されてきた『儀式』によって足の指を弱点にされてしまったので、喘ぎ悶えるしかない。
 両手の蛇は数を増し、やがてその一匹が腋窩をくすぐる。毛の始末をしているそこは、無防備だ。細長い舌で愛撫されると、身体に電撃が走る。崩れ落ちてしまいそうな己を叱咤し、敷き布に爪を立ててこらえる。
 そんな眞言を嘲笑うかのように、別の蛇が白装束の襟の間から顔を出した。粘液を吸って、白装束の袖と襟は既に色を変えている。この粘液には哺乳類の性欲を刺激する効果があるらしく、皮膚に触れているだけで熱が起こる。
「くっ……蛇神様……」
 眞言の呼ばわる声には、許しを求める響きがあった。
 迦具土家はその名の通り、炎の神を奉じている。生命力を炎として可視化することができ、当主は炎を移すことで信徒に力を与えたり、逆に炎を操って体力を燃やし尽くすこともできる。
 だから、迦具土の当主が水の眷属たる蛇に憑かれているというのは、眞言にとっては予想外だった。
『代々の当主様は、強すぎる炎の力があふれてしまい、己を制御できなくなる時があります』
 初めて白蛇たちに蹂躙された翌朝、じいやは噛んで含めるように言った。
『その力を分散させるため、御館様は蛇神様に力を吸わせる必要があるのです』
 全身を暴かれ、犯された眞言はろくろく息もできず、ただその言葉にうなずくしかなかった。
 今に至っても、眞言はこの行為に慣れきってはいない。
 眞言の懇願にも、蛇神の眷属たる白蛇たちは責め手を緩めない。襟から伸びた蛇頭が、眞言の口許へ寄った。口を閉じていると、首を絞められしまう。ゆるゆると開いた唇の間に、蛇頭は勢いよく飛び込んだ。
「ぐぅっ……!」
 うめく眞言に頓着せず、白蛇は喉奥で口を開け、濃い体液を分泌して注ぐ。食道を粘液が流れ落ちる、なんとも不快な感触に気を取られるのは一瞬のことで、媚薬にも似た粘液はすぐに吸収され、いっぺんに身体が熱くなった。
 脚にも白蛇たちがわだかまっている。何匹かは思い思いの場所に巻きつき、何匹かは太腿を這い上って鼠蹊部を通過して、眞言の性感を煽っている。足の爪先をからかう幼体たちも数を増し、陽根を扱うように太い親指を前後し、先端を甘噛みしている。
 まだ核心を突かれていないというのに、眞言は敷き布団に倒れ込んだ。
「あっ、あっ……蛇神様……」
 袖から入り込んで襟から出てきた蛇たちは、力を合わせて前を開き、たくましい胸板を露出させた。二股に割れた舌が乳首に触れ、眞言は身を反らす。とっくに開発されている。
 胃に注がれた粘液の効果もあり、全身を汁まみれにされた眞言はもはや己を律することもできず、膝の間を開いていた。
 ぼたり、とひときわ大きな音を立て、最後の白蛇が畳へ降ってきた。
 今手足にまとわりついている蛇とは、大きさが違う。張り出した頭骨は亀頭を連想させる。長さは一メートルほどもある。
 仰向けに倒れた眞言は、その姿を認めて息を詰めた。そこには恐怖とともに、確実に期待もあった。
 この蛇が何のために現れ、何をするか、眞言はよく知っている。
 怖い。
 だが、気持ちいい。
 既にはだけている裾をいよいよ開いて、眞言は己を犯すものへ示した。
 数匹の蛇が、眞言の入口へと舌を差し入れてきた。三十日に一度は蛇神へと身を任せている眞言だったが、さすがにいきなり犯されては壊れてしまう。
 舌たちが内外の境界を拡げたところへ、幼体の一匹が飛び込んで来る。
「ひっ……!」
 声が出てしまう。幼体は前庭に入り込み、思うままに動くことで、眞言に蛇神の感触を思い起こさせる。
 幼体に慣れたと思えば、交代に成体が押し入る。明らかに質量が違う。前後することで前立腺をこすられ、与えられる快楽の大きさに身をよじってしまう。
 しかし相手は蛇である。生身の相手とは違い、脚に絡みついている蛇からは逃れられない。
「あっ……あぁっ……! たすけ、て、くれ……!」
 何に助けを求めているのか、眞言にすらわからない。ただあふれるほど与えられる強引な快楽から逃れたい。
 そんな眞言の欲求は叶えられない。
 眞言の身体の準備ができれば、己の用は済んだとばかりに成体は退く。その様子をじっと見つめていた大蛇は、しずしずと前進して眞言の脚に絡みついた。
 脚を接しただけで、その太さがわかる。これが体内へと入ってきたら、どうなってしまうのか。しかし、これを受け容れても己が壊れはしないことを、既に眞言は知っていた。
「や、いや……だ……」
 口から出る言葉とは裏腹に、眞言は抵抗を諦めている。どれほど逃れようとしても白蛇たちに手足を戒められ、大蛇に貫かれてしまうことを、理解しているからだ。ならば、なるべく体力は温存しておいた方がいい。翌日の疲れが違う。
 いつも通り、大蛇は尻尾を左の太腿に巻きつかせた。こうすることで、より自在に抽送することができるのだ。
 何の合図もなく、大蛇は蛇頭を潜り込ませてきた。雁首のような頭骨が肉襞を拡げ、太さに慣れた眞言は背筋を震えさせる。
「あがっ……!」
 白装束はもはや衣服の役目を失い、帯に絡みついているありさまだ。そんな状態で敷き布団に身を任せ、太い蛇神に犯されている眞言を見る者があれば、その淫靡さ、猥褻さに目を奪われてしまうだろう。性欲を刺激され、蛇とともに眞言を辱めたいと思う者もいるかもしれない。
 しかし、今の眞言は誰の目にも晒されてはいない。ただ火に剋とうとする水の眷属の蛇たちがいるのみだ。
 眞言はとうとう脚をいっぱいに開き、ずぶずぶと己に入り込む大蛇を受け容れる。
「あ、んぅぁ……、おぉ、きぃ……」
 初めて大蛇に犯されたのは、十四の時だ。その頃は今ほど身体もたくましくはなく、あまりの苦痛に泣きわめいていた。
 しかし三十日に一度身を委ね、催淫効果のある粘液を摂取しながら全身を嬲られているうちに、若木のようなみずみずしい肉体は快楽を覚えた。
 陰陽の道について、少しだけ聞きかじったことがある。嫌がるのを強引に搾り取った精気よりも、感じさせながら採取した精気の方が美味で、より純度も高いという。
 ならば、蛇神も生贄の感度を上げようとするだろう。
 その意図通りに育ってしまった眞言は、前庭を押し拡げる蛇頭に圧迫されてただ喘いだ。
 一匹の白蛇が、眞言の陽根に巻きついてきた。粘液をまとった蛇体がぬめぬめとうごめき、刺激を与える。その上、別の個体が舌を伸ばし、鈴口から内側に侵入してきた。
「あぁぅっ!」
 異物感に、眞言は上体をくねらせた。しかし舌からしたたる粘液は、敏感な隘路すら性感帯に変える。蛇頭と舌で前後同時に責められた前立腺は、凶暴なほどの快感を眞言に与えた。
「ぐっ、ぁぁぁっ!」
 過ぎた快楽に混乱する。壊れそうだ。逃れたい。しかし。
「もっと……」
 無意識につぶやく。
 そう、もっと。
 これ以上の快楽を、眞言は知っている。蛇神に肢体を明け渡し、蹂躙されることで、稲妻のような快感を手に入れることができる。
 一度目の絶頂は前ぶれなく訪れた。蛇の舌では尿道を塞ぎきることはできず、どろどろと濁った液体が蛇体にこぼれる。精気の込められた液体を求め、白蛇たちが寄ってくる。敏感な下腹を蛇が這い、眞言はますます感じる。
 内壁は既に蛇神の形を思い出していた。眞言の身体は蛇神しか知らない。だからこそ、蛇頭を忠実に覚えている。
 激しい抽送によってもう一度絶頂へ導かれ、眞言は脱力した。内外の境界は緩み、大蛇の分泌した粘液がこぼれて双丘の間へ消える。大きくため息を吐いた眞言だが、大蛇のうごめく気配に我を取り戻した。
「やめて、くれ……!」
 恐怖に襲われる。
 これから行われることも、当然知っている。それでも、慣れることはできない。
 太い蛇頭に貫かれ、手足はまともに言うことを聞かない。ただ首を振って身体を左右させても、蛇神の意志に逆らうことはできない。
 しかし、怖いものは怖いのだ。
 痛みを与えられるわけではない。むしろ、もたらされるのは絶対的な快感だ。
 惑乱する眞言をよそに、蛇頭はずるずると肉壁をこすり上げながら奥へと進む。
「いや、いや、嫌だ……おかしく、なる……」
 やがて蛇頭は行き止まりに差しかかる。奥の壁を軽く突いて、身じろぎをする。新たな抽送を始めるのだろうか。
 いや、違う。眞言はもう知っている。
 蛇頭は九十度頭を曲げ、更に侵略した。
 「がっ、がぁぁっ、ぎぁぁっ……!」
 喉から鋭い叫びが放たれる。正気を保つことができない。首に力を込めれば、はらわたの形に盛り上がる下腹を見ることができた。しかも、隆起はどんどん進んでいく。
 たちの悪いことに、全身を渦巻いているのは強烈すぎる快感だ。
 ヒトでは到達しようもない場所を押し拓かれ、蛇神のものにされる。そのことに、眞言の身体は歓喜の悲鳴を上げている。目からは感情によらない涙が流れ、頬も顎もよだれでべとついている。陽根はだらだらと白濁液を噴き出し、時折潮とも尿ともつかない液体が混じる。
 箍が外れているのを、おぼろげな思考で理解する。しかしそのことに反応はできず、ただ全身を痙攣させて、蛇頭の蹂躙を受け容れている。
 更に二度角度を変え、蛇頭はとうとう本当の行き止まりに達する。さすがに、この先へは入り込めない。その代わり、盲腸へ鼻先をこすりつけ、細い虫垂に舌を這わせる。只人には思いつくことすらできない経験に、眞言の脳は完全に焼き切れていた。
 これほどのことを、三十日に一度は行うのだ。


 身体に力が入らない。
 ゆっくり目を開けると、己の部屋の天井が目に入る。首を動かすのもおっくうで、眞言はただ己を包む布団の柔らかさを感じる。
 なんという淫らな夢を見ていたのか、と思った時もある。だが、手足にはきつく鱗の跡が残されている。開拓されたはらわたは空洞と化して、眞言に違和感を与えている。
 夢ではありえない全身の倦怠感に囚われて、眞言はまた今月も犯された……と実感する。
 苦痛を感じてしかるべきことで快楽を得て、身も世もなく泣き叫び悶えわめく己に対する絶望は深い。この蹂躙を追い求め、身を明け渡してしまう己こそを、淫乱と言うのだろう。
 涙が一条、目じりからこめかみへとこぼれる。
「――御館様」
 襖の向こうから、じいやの声がする。鋭い感覚で、眞言の目覚めを感じ取ったのだろう。
「御膳をお持ちしますか、それとも」
「水を持て。食事は口に入らない」
 眞言の言葉に短くうなずき、じいやの気配は去っていった。眞言はもう一度身体に力を込めた。なんとか、起き上がることはできそうだ。
 喉が涸れるほど叫び、あらゆる液体を流し尽くした後は、水がうまい。
 そのことに、眞言は奇妙な爽やかさを覚えるのである。

いただいたサポートをガチャに費やすことはしません。自分の血肉にするよう約束いたします。