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just like a womanー愛に傷つけられた17歳の少女、小池百合子さん。

石井妙子著『女帝 小池百合子』(文春文庫 親本2020年)には、小池百合子さんの少女時代が克明に描かれています。小池百合子さんの父親は見栄っぱりで、ホラ吹きで、自分を大物であると吹聴し、アラブに関心を持ち、石油を分けてもらって小商いを続けるもしかし事業は傾き始め、一発逆転を狙って選挙に出るも落選。彼女が甲南女子高校2年生の12月である。それからというもの、芦屋の外れ、阪急電車が通ると揺れるつましい彼女の家には借金取りがひきもきらず押し寄せて、やむなく彼女は両親と別居してひとり暮らしをしながら甲南女子高校に通った。17歳の彼女の心はずたずたにされたでしょう。彼女はかつて自分が大好きだった父に裏切られたと怒りの炎を燃えたぎらせたでしょう。



そんな彼女は、アラビアのカイロ大学に入学し、けっこうモテモテで、毎日楽しく暮らし、また、なにはともあれ1年間は大学に通っています。この時期彼女は、日本人青年と結婚し、(本書のなかでは「語学結婚」と揶揄されています)、しかし、この結婚は破綻し、泥沼の離婚劇となる。その上、彼女の父親は学費の仕送りもままならないなか、百合子を自慢の娘として吹聴し、彼女はもはや憎しみの対象と化した父親から逃れられない。



不思議なことに、当時の彼女はモテモテであり、それこそ男は選び放題でありながら、しかし、けっして恋愛の幸福にはむずびつかない。「カイロだいがくしゅせきそつぎょう♡」という駄ボラ肩書を引っ提げて、彼女が竹村健一さんのテレビ番組のアシスタントを務めた時代も同様である。後に小池百合子さんはこの時期、4歳年上のフランス帰りでテレビ出演をはじめた頃の舛添要一さんと恋愛関係があったことを匂わせるようになるものの、しかし舛添さんは彼女と友人関係があったことこそ認めるものの、しかし恋愛関係などなかった、滅相もない、と再三主張しておられます。



小池百合子さんは一見、優しく微笑み、愛に満ちあふれ、男どもに負けない勇敢な政治家を演じることができる。しかしながら、彼女のなかにはひとりの少女が棲んでいて、彼女は父親に裏切られ、愛を傷つけられた哀しい少女なのだ。しかも、そんな彼女はまるで父親とネガポジ関係のような、大ボラ吹きの政治家になってゆく。彼女の父親を知る人たちは口を揃えて、ふたりは瓜二つだ、と溜息をつく。小池百合子三選によって、百合子という名のゴジラによって東京は火の海と化すでしょう。愛に傷つけられた17歳の少女は、その半世紀後ゴジラになった。





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