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山本七平の「南北問題」再考

G20などで

グローバルサウス

が注目を浴びています。さて、これに関連して、山本七平は1980年初出の『「常識」の研究』で、南北問題を取り上げています。詳細は
山本七平の『「常識」の研究』読後感|鈴木良実 (note.com)
1国際社会への眼
を見てください。

さて、今回は

「南」でなく「北」

に注目します。私達日本は

「北」側の富裕国

の一つです。一例を挙げれば

希望者全員にコロナワクチン
自己負担なしの接種

ができました。もっと言えば

水道は直ぐにでるのが当たり前

と言う状態は、アフリカの一部の

水汲みに数時間必要

と言う国に比べれば、いかに恵まれているか解るでしょう。

さて、山本七平も指摘したように

「北」の便利な生活は
支える人の努力の結果

です。例えば

蛇口を捻れば直ぐに水が出る水道も
それを支える設備があり
それを昼夜連続で運用する人の働き

があります。私は、昔エンジニアの時代に、こうした監視制御装置のシステムエンジニアもしていました。そこでは、高度な要求に高信頼度の設備で答えるべく、身を削る思いで対応しました。

また、震災の時には

早期復旧のための尽力

も経験しています。悲しいことですが、前に一緒に仕事をした、K市水道局の方は、過負荷に耐えかねて自殺されました。

こうした

勤勉に働く

が「北」の常識になっています。

山本七平の経験にもありますが

時間にルーズな「南」

の人には、このような「北」の勤勉社会に耐えられないでしょう。

さて、ここで問題になるのは

「北」の勤勉は世界の常識

ではないと言うことです。この問題に対して、一つの見通しを与えるのが

マックス・ヴェーバーの
「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
以下「プロ倫」と略記

です。ヴェーバーの主張は

資本主義が成立するためには
勤勉な国民性が必要
カルバン主義は
「救われている確信のため強迫的に働く」
傾向があり資本主義の立ち上げに役立つ

と言う論法です。こうした

信仰の圧力などが働かないと
勤勉な人々は生まれない

という観点で

「北」の繁栄は特異な現象と見る

こうした発想も必要かと思います。

なお、ヴェーバーのカルバン主義の議論は、キリスト教の理解がないと難しいですが、私たち日本にも、ヴェーバーの論法に合う事例があります。それは

浄土真宗などの阿弥陀如来の救い

です。これは

徹底した他力
皆すでに極楽往生が決まっている

という教えです。しかし、こう言われても

その根拠は?

と疑う人もいるでしょう。そこで説かれる教えが

皆はその日その日の仕事を真面目に行う
それが阿弥陀如来の力をいただいている証拠
だから死後は極楽往生間違いなし

という論法です。もう一つ言えば、浄土宗系では

口に「南無阿弥陀仏」という念仏が出る
これは仏のご催促で出た言葉
皆仏と一緒にいるから毎日に務めを果たせ

という教えもあります。これは、循環論法ですが、信仰はこうした繰り返しで、強固になっていくのです。

また、このような日本の信仰は、ヨーロッパ以外で、資本主義を進化させた日本についても説明できます。

しかしながら、もう一度言いますが

勤勉は世界の常識ではない

という立場で

「北」の発想を「南」に押し付けない

ことが大切だと思います。

#グローバルサウス #山本七平 #プロ倫 #南無阿弥陀仏



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