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仏教的な説明法

私のnoteを、よく読んで頂いている、工楽ノ佑さんから

大乗仏教に於ける説明の方法、大乗仏教に於ける「納得」の理解、或いは衆生を悟らせるための仏の対機説法についての考察が読みたくなりました。

と言うリクエストを頂いた。これは、私が今まで考えてきた話で、大事な部分であり、是非書いておきたいと思います。

まず、大乗仏教と他の思想の違いです。法華経などの大乗の経典には

皆に仏性がある

と説いています。これは、キリスト教などの

神の知恵は人の及ぶところではない

と言う発想と大きく違っています。キリスト教だけでなく、古代ギリシャの哲学者プラトンの「洞窟の比喩」でも

人は真実の影しか見ることは出来ない
哲学者のみ真実に迫れる

となります。そこで、プラトンのアカデメイアは

「幾何学を学ばない者はこの門をくぐるべからず」

と言う風に

できない人間を排除

しています。この発想が説明の場でも、影響していて

専門学問の議論が解らない人間は従え

と言う発想があります。

さて、これが大乗仏教の発想では、どのように変わるでしょう。まずは

皆に仏性がある
から
理解できるはず

と言う考えが出てきます。しかしながら

仏性があっても
仏の智慧が活きているとは限らない

と言う問題があります。これを極単に言うと

犬にも仏性がある

働かないから犬の姿

と言う禅問答もあります。

さて、こう考えると

仏の智慧が働く人に従え

と言う発想も出てくるでしょう。しかしながら、これだけで終わらないのが

大乗=大きな乗り物

です。仏の智慧を使って、多くの人に納得させるように、努めないといけません。例えば、聖徳太子の17条憲法でも

話せば解るから
皆が同意するように

務めることを、役人に指導しています。

さて、このように

大衆に解らせる

と言うことは、大変な手間がかかります。本を書くとき

難しいことをわかり易く
誰でも読めるように書く

と教えれましたが、実行することは難しいことです。

そこで、仏の教えでは

人に合わせて法を説く

と言う方法で対応しています。多くのお経は

仏様が一人の聞き手に対して話をする

と言う形を取ります。つまり

人に合わせて法を説く

と言うやり方です。こうすることで

相手のレベルに合わせる

ことができるので、聞く方も理解しやすいし、説明する側も話が組み立てやすくなります。なお、お経の場合には

聞き手のレベルごとに話を展開

します。例えば、法華経の場合は、始めに知恵第一と言われた舎利弗尊者に説き、その後色々な弟子に向けて説いています。こうした

多様な弟子の状況に合わせる

のも大乗たるところです。

さて、ここでもう少し

仏の智慧とは

と言う観点で考えましょう。法華経にある有名な一句ですが

この三界は皆我が有なり
その中の衆生は皆我が子なり

が、仏の智慧と、私達への向き合い方を、しめしています。つまり、世界と衆生の全てに、心を及ぼしています。しかも大切なことは

衆生を一人一人見ている

と言うことです。西洋文明の政治なら、どこかで統計値を持ち出して、一人一人を無視することで、意志決定しています。そこでは

平均値等

で考える人が多くなってしまいます。

さて、このような仏の智慧の、内側をもう一つ見てみましょう。唯識の教えや、真言密教の教えでは、私達が意識の上で考える「妙観察智」の他に

皆の仏性を見る平等性智

があります。これは、自我の働きで、多様な人格を認める智慧でもあります。この智慧があるから

仏は多様な考えのある人そして社会
思いやり
その上で起こる色々な物事その時の人々の考え

を、見ることが出来るのです。これは、仏の世界から地獄まで全てに及びます。そうした、飢えている餓鬼界や、争いの阿修羅の世界など、色々な立場を思いやって、それぞれに合わせた救いの手を差し伸べるのが、仏の力です。

さて、私達はこのような「仏の智慧」を実践できるでしょうか?私の考えでは

完全に行うのは難しい
しかし
少しでもその可能性を求める

必要があると思います。西洋文明的な割り切りではなく

色々と想像する
そこで
人に合わせて説明する

こうした姿勢が必要だと思います。

なお、今までの記事も参考にしてください。

基本の発想は
キリスト教の神と仏の違い|鈴木良実|note
実践的な面では
不可思議の発想の利用|鈴木良実|note
智慧のある親が必要|鈴木良実|note
です。
また、平等性智などは
仏の五つの智慧|鈴木良実|note
仏の智慧とは|鈴木良実|note
に書きました。

#説明 #大乗仏教 #平等性智  

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