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ブルームーンに桜の言の葉

虎の巻、があるんです。

将来の夢的な像はあるものの、現実現在は一般的なパート勤めの主婦の私。
虎の巻とは、いわゆるネタ帳です。
浮かんだ言葉や、調べたことの記録、見た夢の記録、等々。
あらゆるワードがひしめく虎の巻。

以前、とある場所でブログを書いていて、その頃は思いついたら即、発信していました。
それを切り上げてからは書きつけるだけの日々。
書いたものの見返さないことが常で、いつ頃、どんな状況で、どんな思いで書いたのかも忘れてしまう始末。

先日、虎の巻のひとつを手にとり、パラパラとめくっていたら、あるページに目がとまりました。
そして、そこを読み終わる頃には、エッセイ系のマガジンを作ろうと決めていました。

数日後・・マガジンの表紙を作ろうと、題名を考えていると…

「ひさかたの・・・」

なにやら和歌の冒頭が浮かんできました。
和歌の続きを思い出すことよりも、「ひさかた」の語意が知りたくて。
「久しぶり」的な解釈で、なんとなく知っていたつもりの「ひさかた」を調べてみることに。

まず「ひさかたの」というのは、枕詞だなというのは分かります。
古典などを扱っているとはいえ、それほど古語や文法に詳しい訳ではありません。
どんな言葉にかかるかというと、天空に関係のある「天(あま)・(あめ)」「雨」「空」「月」「日」「昼」「雲」「光」など。また、「都」にかかるとあります。ですがその語義・かかる理由は未詳。

その他には「桂」。
中国に月の中に桂の木があるという伝説があるのです。
この桂の木は切っても切っても再生してくる永遠の命の木で、この伝説では月面の影は桂の木の影だとされています。
月の理想を象徴する木ともいわれます。

他には「岩戸」があります。日本神話の天の岩戸伝説が関係しているのでしょう。

天の岩戸には天照大神が隠れ、桂の木には月読命が降臨したと言われ、日本の神々がいらっしゃる天上界と関係の深い言葉であるようです。

久方、久堅といった漢字が当てられていて、その語義については、「日の射す方」を表すような説もあるようです。また久堅が表す意味合いには、天を永久に確かなものとする、ということがあるのではないかとされています。

久には長い時間や遠い距離を感じますし、それが向かう先である「方」、盤石にする為の「堅」と重なることで、永遠を願う祈りがこめられているような気がします。

難しい話はこれくらいにして、和歌の続きを確かめることにします。

ひさかたの…その続きはなんだろう……
「しずこころなくはなのちるらん」
間は抜けて、最後の一節が思い浮かびました。

ひさかたの ひかりのどけきはるのひに
しずこころなく はなのちるらん

古今和歌集に載っている、紀友則の歌です。
枕詞はひかりにかかっていました。
春の穏やかな陽射しの中で、桜の花が散り急いでいくのを惜しんでいる情景が浮かびます。
桜色に染まる風景は、真夏に思っても儚いものです。
無音の風が緩やかに、斜め上から体をさらって、花びらと共に去っていきました。

さて、マガジンのキッカケとなったページのことを、すっかり忘れていました。
思い出そうとして、時間が止まりました。
息をのむって、こういう瞬間の事だと思うんです。

そのページには雑多に色んな事が書いてあって、そのうちの詩的な言葉を読んで思いついたことでした。

きっといつか わかる日がくるから
あきらめないで そこにいて
桜の花びらが舞うように
風に乗って届けよう
君といた あの頃のように

ページの最後に書いています。
いつ、どんな状況で書いたのかは覚えていません。
でも桜が散っていくのを惜しみ愛でながら書いたことを、その舞い散る情景が記憶に残っていたことで思い出しました。
それがとても美しかったから、遺しておきたくてマガジンの作成を思いついたのでした。

無意識のうちに、言葉の情景と同じ和歌を思い起こしていたのです。
私が霊的な世界を学んだ方によると、人の無意識層というのは、守護霊をはじめとした霊的な世界の働きであるようです。
きっとそこからインスピレーションを得て思い出したのでしょう。
そう気がついて改めて思い比べてみると、その情景はぴったりと一致するものでした。
気配も音も色も匂いも。

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