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函館にこんな八百屋がありました


八百屋界の旭山動物園を目指して

今では海外からも来園者が来るほど有名な旭山動物園。

しかしその旭山動物園にも、苦難の歴史がありました。旭山動物園に閉園のうわさが流れたとき、当時の飼育員の人々は不思議でなりませんでした。日々自分たちが魅了されている、こんなにも面白い動物たち。ではなぜ動物園のお客さんが少なくなっているのか?

答えは簡単、飼育員たちが感じていた動物の面白さ、すばらしさがお客さんに伝わっていなかったからです。

では伝えようと、飼育員によるワンポイントガイドや手書きのPOP、親子動物教室などの工夫が生まれ、さらに発展して、理想の動物園を描いた「14枚の夢のスケッチ」へとつながります。

そして、そのスケッチが1枚ずつ形となり、旭山動物園は人々を魅了する、素敵な動物園になっていったのです。

八百屋界にもこれが起こせるはずです。青果業界で仕事をしてきて、早13年。栽培・流通・小売・中食・外食といろんな現場を見てきました。野菜はこんなにおもしろいのに、まだまだお客さんには伝わっていない、そういう悔しい思いを何度もしてきました。良さが伝わらなければ、安いものの勝ちです。

でも、おいしいものにはわけがあります。こんな品種だから、こんなところで作っているから、こんな栽培をしているから、こんなに素敵な人々が作っているから。この時期にこうやって食べれば絶対びっくりしてもらえる。そんな伝えたいことがたくさん詰まっています。

野菜・果物の魅力を少しでも食べる人に伝え、おいしく楽しく食べてもらいたい。食べる人の笑顔は、作る人の笑顔につながります。そして評価を受ければうれしく、さらにお金の評価があれば、継続しておいしいものを栽培できます。

日々食べる「野菜・果物」という食品を通して、喜び・元気をお届けできれば、こんなに幸せな商売もありません。ならば、物言わぬ野菜・果物の代わりに、ちょいと語るが八百屋の心意気ってものでしょう。

『野菜で笑顔を結ぶ』を合言葉に、すず辰は、古くて新しい「八百屋」の道を模索してまいります。ごいっしょに野菜・果物を楽しんでいただける方々との出会いを楽しみにしております。

2013年3月25日 開店の日に 八百屋すず辰 店主  鈴木辰徳

おいしい野菜の見極めは?

おいしい野菜の見極めは、「氏素性・育ち・ころたて」といわれます。

「氏素性」は「品種」のこと。桃太郎トマトやブルームきゅうりのように、おいしい品種が必ずあります。(栽培しづらかったりしますが…)

次に「育ち」。どうやって育ったか、すなわちどういう環境で栽培されたか。適地適作という言葉もありますが、その野菜に適した土地で適切な栽培をすれば、自ずと品種本来の特徴が発揮され、おいしい野菜ができるのです。

そしてその見極めを行うのが、農家さん。同じ品種を同じ地域で作っても、作り手が違えば、味も変わってきます。

これが野菜の面白いところ。おてんとさん(太陽)という、コントロールできない相手のご機嫌を伺いながら、野菜にとって何をしてやるのが一番か、常に感じ・考え・実行する、その経験智・技が味の決め手なのです。

そこはまさに職人芸。名人の親父さんが亡くなり息子さんに代替わりしたら味が変わった、って話もよく聞くところ。店の近くの七飯町の農家・松本久さんに「技をちゃんと継承してくださいね」といったら、「そりゃムリだ。自分で経験して考えないと」って返されました。うーん、百姓道はやはり奥深いようです。

最後の「ころたて」は「食べごろ・とりたて」の略。野菜は新鮮が一番といいますが、じゃがいも、さつまいも、南瓜のように、ある程度熟成した方が甘みが乗っておいしいものもあります。

「じゃがいもは3度おいしくなる!」って教えてくれた農家さんもいます。トマトは、青いうちは酸味が強く、味がしっかりしますし、常温で追熟させれば酸味が抜けて、甘さだけが残ります。

どの味がいいか、食べる人の好みで「食べ頃」が変わるとも言えます。果物は、洋梨を代表に食べ頃の見極めが難しい。(ここらへんは私もまだまだ修行中です)

そして、腕のある農家さんを探し出すのが、おいしさへの一番の近道です。

名人の力(想像力と創造力)

『京野菜』。夏だと、「賀茂なす」と「万願寺とうがらし」。京都の料亭で京料理の食材として長年親しまれてきたもので、とにかくおいしい。

賀茂なすは、なすの女王様といった趣きで、田楽や揚げびたしにすると、その肉質のきめ細かさと上品な甘みに思わず顔がほころびます。万願寺とうがらしは、「とうがらし」という名とは裏腹に辛みはなく、焼いたり炒めると旨みが出て結構はまる方が多い一品です。

以前畑を訪れたときの京都の農家さんの言葉。

太秦の長澤源一さん:「その野菜本来の味が出るように育てるんだよ」 。

吉祥院の石割照久さん:「与える肥料や栽培管理で野菜の味は変わってくる。野菜がどういった味になるのか。それをイメージして栽培している」。

どちらもただ育てるというのではなく、野菜が料理の素材としてどういう味わい・食感・色合いになったらいいかを見すえ、種蒔きから苗そして収穫までの成長に寄り添っているということ。これは結構衝撃でした。「姿勢が違う!」と。

野菜が順調に育てばいい、と通常は考えます。「順調に」の目安は、苗の根張りの様子、葉の色加減や、茎の太さ、葉脈の状態などなど、見るポイントはいろいろ。しかし、どういう味になってほしいか考え、そのために野菜の状態を見、必要な手を打つ。これってかなり高度なことです。

求める品質が明確であればあるほど、成長過程、栽培手順によってその結果がどう影響するか、アンテナが鋭くなります。

さらにすごいのが、「とらわれない」ってところ。野菜をおいしくす
るためなら、手段は問わず、自らの経験も疑って、素直に野菜に向
き合い、どんどんチャレンジしていく。常により上を目指し精進さ
れているのです。

まさに『想像力は創造力』です。

何がおいしいかはお客さんの好み次第です

店で販売していて、味覚は人それぞれだなぁとつくづく思います。

秋冬だとリンゴ。「どのリンゴがおいしい?」と聞かれますが、選ぶには「食感・甘み・酸味」の好みを聞いてから。我が家でいうと、娘はもっぱらのシャキシャキ甘い派で「フジ」が一番。

一方の息子たちの一番は、バッキバキの強い食感で酸味が強い黄色いりんご「シナノゴールド」。朝、リンゴを切ってやると「これ おいしいヤツ?」と聞いてきます。「君ら それぞれ好みが違うから!」と父は思います。(ちなみに女房は食感重視派)

とにかくシャキシャキの食感じゃないと許せないという方。甘いのは好きだけど酸味は苦手という方。逆に甘みより酸味がしっかりしたのが好きという方。好みは人それぞれ。何をおいしいと感じるかはその人の好み次第です。

夏場のすず辰のミニトマトは主に2種。まるでブドウのような濃厚な甘さで人気の北海道せたな町のよしもりまきばさんの「キャロルセブン」と、トマトの風味の上に甘みが乗る岩見沢のビオファームなかむらさんの「ほのか」。

店で試食してもらうと、その人の好みでどちらを買うかが決まります。時に両方楽しみたいって方もいますね。(どちらもおいしいので)

店で(京とうふを除く)一番人気の加工品は、福岡の朝倉物産さんのねぎドレッシング。イベントで試食出しすると、5人中2人は買ってしまうすごいヤツ。ねぎの風味は後からほんのり香る感じなのですが、ねぎ嫌いな方が口にすると、『うわっ、ねぎ!』ってビックリされます。

「蓼食う虫も好き好き」といいますが、本当に好みは人それぞれです。味覚は成長とともに変わる部分もあるので、新たな好きを探すのもまた楽しいですよ。

と「好み」の大切さを書いてみましたが、「店のおすすめ」はもちろんあります。ですので、「お店のおすすめは何?」って質問はありです。ただやはりお客さんの好みを聞いてのマッチングが一番大切だなぁ、と思っています。 

「よくねたいも」は起こさない

東京で働いていたころ、北海道のじゃがいも産地の方に「じゃがいもは3回おいしくなる」と教わりました。

とれたての新じゃがのイモの香りを楽しむ時期と、しっかりと完熟してから収穫した、ほくほくしておいしい晩秋以降の時期と、年が明けデンプンの糖化が進み、甘さがぐっと増す春の時期と。

6月あたりからCMを賑わしている、ホクレンさんの「よくねたいも」は、3番目の糖化が進んだ、「甘~いじゃがいも」のことですが、個人的に気になっていることがあります。

東京時代、収穫後のじゃがいものデンプンと糖分の変化を、1年間にわたって調べていたので、じゃがいもが年明けにぐぐっと甘みが増してくることは知っていました。しかし、そのおいしさをちゃんと体感したのは函館に来てから。

2月頃、家族で入った近所の個人経営の居酒屋さんで頼んだフライドポテトの強烈な甘さとほんのりと残るイモの風味に思わず驚きました。「明らかに(本州で食べるより)おいしい!」と。

北海道と本州で、味わいに差が生まれたのはなんなのか?

そもそも春先甘みが増すのは、冷蔵貯蔵する中、じゃがいもが凍結しないようにデンプンを分解して糖になり、糖分濃度を上げているからです。濃度が高い液体の方が凍りづらいのと同じ原理です。

しかし、常温に戻ると凍る心配がないので、増えた余分な糖分はイモの呼吸などで消費されてしまいます。3~4月、北海道はまだ雪が残り、寒い日が続きますが、本州では桜が咲かんとする時期ですし、6月ともなれば20度後半で暖かい。(北海道と10度くらい差があるでしょうか?)

じゃがいもは常温でそうそう腐る代物ではないので、北海道から本州への配送は常温です。寒い北海道から暖かい本州に運ばれ、常温でスーパーの棚に置かれているうちに、あの強烈な甘みはどんどん目減りしていくのです。せっかくなら冷蔵輸送の冷蔵陳列、家でも冷蔵保管。「よくねたいも」は冷蔵でそのまま寝かせておかないとおいしさは保てません。ホクレンさん、広告代がもったいないですよ。

温度に伴うジャガイモの糖含量の変化を示した学会誌のグラフを発見(遠藤ら 日本食品科学工学会誌,62(1),50-55,2015の図4)。見事に常温に戻すと糖含量が減っています。

いやー、もったいない。春の北海道じゃがいものおいしさをちゃんとお届けしたいと思う店主です。

調味料はケチらない

開店準備に動いていた2013年の1月末。管理栄養士の佐々木十美さんの講演会へ。その当時、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に登場されていた、時の人です。北海道置戸町のカリスマ「給食おばさま」。王様しいたけの福田さんが知り合いで、ほかにも知人の大工さんがブログに紹介していたので、「食」ってことで行ってきました。

佐々木さん、とにかく子どもたちに「当たり前のもの」を提供したいと。給食というと大鍋での大量調理。使う調味料も添加物がいっぱいの業務用が「普通」になってしまう中、家庭料理と変わらない自然な味を子どもらに、とのお話でした。

そこでみりんの飲み比べをしたのですが、これが衝撃でした。最初に飲んだのは、アルコールの香りに、なんとも言えない深い甘み、なんか黒糖焼酎を飲んでいるかのよう。2つ目はとにかく甘い、でも甘さだけ。3つ目は、変なピリつく酸味に、舌にまとわりつくべとっとした不快な甘み。あまりの違いにびっくり。

順番に、老舗の蔵が仕込む3年熟成の本みりん、市販の大手メーカーの本みりん、そしてみりん風調味料でした。

老舗の本みりんの原料が「もち米、米麹、米焼酎」なのに対し、市販の本みりんは米焼酎の代わりに醸造アルコールを、みりん風になると「水あめ、ブドウ加糖液糖、調味料、酸味料、カラメル色素」とごちゃまぜ。おいしさは老舗のものが別格。みりん風調味料は「本当にまずい!」。値段は、600~700㎖で順に1000円、500円、250円といったところだったでしょうか。

佐々木さん「調味料はケチらず本物を使えば味がぐんとよくなるし、そもそも少ない量ですむからそんなに高くない。子どもにも本当の味を教えることになるわ」ってことをおっしゃっていました。

わが家が当時使っていたのが「〇〇〇本みりん」。これを機にグレードアップすることに。そしてすず辰の店舗化にあたって、調味料も置いていこうと改めて決意。

わが家で昔から愛用しているとっときの調味料といえば、京都・原了郭の「黒七味」。関西に行ったときは必ず多めに買ってきます。あとはエヌハーベストさんのスパイス類でしょうか。調味料、勉強が必要です。みなさん、とっときの調味料があったらお教えください。すず辰のラインナップに入る
かもしれません。

ちなみに本みりんを置くとなると酒販小売免許が必要です。せっかく取るなら、お酒もちょっと置きたいなと。店主も関わった、道南のお米マツマエを使ったお酒もできますし。大学の研究室の先輩が、伏見で女性杜氏として活躍されていますし。八百屋がやる食のセレクトショップ、がんばりますよ。

(で、書類仕事の苦手な店主。途中まで申請書をまとめては挫折・挫折を繰り返し。実際に酒販小売免許を取ったのは、開店6年目とあいなりました…)

ねぎドレッシングが売れるまで

すず辰の加工品で一番人気のねぎドレッシング。(注:京とうふは除く)

しかし、当初はなかなか売れませんでした。普通に陳列して、たま~に質問を受けた時だけ売り込みしていたら、賞味期限まであと1週間というところで、仕入れた30本(1箱分)の半分が残っているではありませんか!!

もう泣く泣く値下げ。ところが味を知った方が、「おいしかった!、まだないの?」とトントン拍子に売れ完売。

その後、「あのねぎのドレッシングまた置かないの?」とのお声もいただきました。が、定価だと売れないんじゃないかなぁとか、賞味期限が3か月なので、できれば2か月で売り切りたいけど、30本はやっぱり多いよなぁと弱気になり、再び仕入れることに躊躇(ちゅうちょ)していました。

ところがあるとき4人組のお客さんが来店。「あのおいしい(ねぎの)ドレッシングないの!?え~、やめちゃったの。ちゃんと4人分買うから仕入れてよ~!」ってな話に。予約注文してくれる方までいるなら、再チャレンジしてみようかと思い、3か月ぶりの復活とあいなりました。

再び仕入れてみれば、前回の苦労が嘘のようで、復活2週間で予約販売分も含めて25本を販売。残りは5本ということで2箱目を注文。事の経緯を簡単にお伝えしていた製造元の朝倉物産の花田さんから思いもよらぬ、お便りが。

お世話になります。
ご注文いただきまして、ありがとうございます。
2回目のご注文をいただくまで、とても心配しましたが、本日のメッセージを拝見しまして 嬉しい気持ちでいっぱいでございます。
北海道のおいしい食材のカニ・エビ・ホタテ・サーモンなどにもあいますし、ジャガバターのバター代わりにもあいます。
温かいものに2、3滴たらすと風味が増します。
添加物といわれるものは一切使用せず
たっぷりの新鮮な材料で作っておりますので
北海道のおいしい食材をなおさらおいしくするお手伝いができる
葱ドレッシングだと思います。
すず辰様のご苦労のお陰で、私共の葱ドレッシングを北海道のお客様が
召しあがってくださると思うと、作るハリアイが一段と違います。
本当にありがとうございます。
   朝倉物産(株) 花田

いただいたお手紙から

青ねぎ農家でもある花田さん。青ねぎを少しでも多くの方に食べてもらいたくてドレッシングをつくったとか。まだの方はぜひお試しを。
(朝倉物産さんのHPの下の方に販売店舗のリストがあります。最寄りのお店にGo!)

花田さんの文中にある、「ジャガバターのバター代わりに」ってのが気になります。試さなきゃ損ですね。

姉妹商品である、有明海の海苔をふんだんに入れた「海苔たっぷりねぎドレッシング」、これまたおいしいですよ。

京とうふを売る八百屋

おいしい豆腐を探して京都まで。食べてみました京とうふ。主な銘柄は5つ。

比較対象として、当時販売していた、地元のとうふメーカーさんのたまふくら絹豆腐。これも110円という値段のわりになかなかおいしいのですが、京とうふ、やはり上を行っておりました。全体として、豆の甘みと風味が全然違いますし、食感もなめらか。長い歴史は伊達じゃない!

とようけ屋山本さんは北野天満宮前のとようけ茶屋で有名なお店、明治30年創業の老舗。学生時代、店主が初めて豆腐のおいしさに目覚めたお店でもあります。豆の風味が断トツですごい濃厚さ。食感がごま豆腐のようにねっとりしていて好みが分かれるかもしれません。

京仁助さんは昭和40年創業。バランスのとれたおいしさで、ある意味王道な味わい。藤野さんは昭和39年創業。京仁助さんに比べると少しあっさりした味わいながらなめらかな食感が特徴。

最後のあらいぶきっちんさんは昭和60年創業と比較的新しいものの、契約農家さんの農薬を使用しないで栽培した大豆と、伊豆大島のにがりがこだわりの自然派のお店。

シンプルがおいしいのうたい文句の通り、何とも言えない素材そのままのやさしい味わい。インパクトのある味でなく、なんとも箸が進んでしまう身体喜ぶ味といいますか。木綿とうふも食感がほろほろでおぼろ豆腐のよう、「豆腐のおかゆさん」と称した人も。こちら女房の一押しです。

離乳食としてお子さんにも喜んで食べてもらえる味わいです。これは売らねばなりません。

賞味期限やロットなどの条件を検討し、京都は長岡京市の「あらいぶきっちん」さんの豆腐の販売を決定。毎月12日、24日を「とうふの日」として、その前後におとりよせ。毎月好評いただいています。

特に人気なのが、「おぼろ」と「厚あげ」です。市販のとうふに比べ、食感がやわらかめですので、固めがよい方は「昔もめん(予約限定)」をお試しください。また夏季限定の「青大豆おぼろ」は豆の甘みが強く人気です。
※京とうふは現在、毎週3回入荷しています。

久々のお客さんがなぜ八百屋の品をスーパーの野菜よりおいしいと感じたか?

妊娠出産で2ヶ月くらいご無沙汰だったお客さんに、「配達しましょか?」とすず辰の野菜を食べてもらう。せっかくなので、久々に食べた感想をお願いすると、

やはりすず辰さんのお野菜はおいしいです。まず手元に届いた時、スーパーのものとは違って、生命力を感じました。スーパーで売られてるものって、瀕死な感じですね。これ、ここ最近スーパーで売られている野菜を食べ続けていたのでハッキリそう感じたのだと思います。味も、変な雑味や水っぽさが無い、野菜本来の旨味がギュッと詰まったお味! 今朝、リンゴをいただきましたが、思わず主人が「なにこれ! どこの? おいしい!」って驚いてました。

うれしい限りです。

じゃあ、スーパーで売られている野菜と何が違うのか? キーワードは「生命力」です。

すず辰の野菜の7割は農家さん(や生産グループ)から直に仕入れています。近在の七飯町や北斗市は直接取りに行きますし、遠隔地は産地から宅配便で直送してもらいます。同じ野菜でも、作り手の農家さんが違うと野菜の生命力が違ってくるのです。名人が育てると健康優良児のような野菜に。そりゃ、生命力があふれてますよね。

「でも野菜って鮮度が大事なんじゃないの?」と思った方、鋭い! 収穫された野菜は、根っこからの栄養の供給がなくなるので、時間とともに鮮度が落ち、味も落ちていきます。しかし、スタートの生命力の差から、収穫後の日数が仮に長くても、その鮮度の差を越えたおいしさが名人の野菜からは感じられるのです。

仮に「遠隔地の名人の野菜(収穫の2日後に到着)」と「地物の市場仕入の野菜(収穫当日)」を比べた場合、収穫2日後の名人の野菜の勝ち! あくまでイメージです。そこらへん、野菜の成分変化などで分析したデータとかがあったらおもしろいですね。

市場仕入の野菜にも、もちろん名人の品はあります。それを如何に仕入れるかは八百屋やスーパーのバイヤーの腕の見せ所。しかし、如何に名人の品でも、どう扱うかで鮮度が変わってきます。大切なのは、野菜ごとの最適な温度にできるだけおいてやることと、野菜にとって楽な姿勢を保つこと。

まずは「温度」。冷蔵庫に入れるか入れないか悩むところですが、葉物(キャベツ・レタス・ほうれん草など)や豆類(枝豆・とうもろこしなど)は冷蔵庫(0~5度)。じゃがいも・玉ねぎは基本冷暗所。長期保存なら冷蔵庫へ。(イモは糖度が増します。但し、乾燥に気をつけ新聞紙・ビニルに包んで)

気をつけたいのがトマト・きゅうり・なすの夏野菜。暑い時期に育つ野菜なので、基本寒さを嫌います。野菜室(7~10度)でなく、すず辰のおすすめは冷暗所(もしくは常温)です。

トマトは追熟させるなら常温で、食べる前に氷水もしくは冷蔵庫で冷やす。きゅうりは冷蔵障害で実が痛みやすく、かつ皮も硬くなるので冷暗所がおすすめです。なすは冷蔵障害が出やすく、真夏の暑い時期はさすがに野菜室行きですが新聞紙に包んで。10~15度程度にとどまる冷暗所がご自宅にある方はぜひご利用下さい。

そもそも野菜は冷やしたり温かくなったりと温度変化が激しいよりも、ある程度の範囲で安定した温度帯においた方が長持ちします。すず辰の店は「冷所」で、人に厳しく野菜に優しい環境なのもよい点かと。

次に「姿勢」。野菜は畑にあったときの姿勢(状態)が一番楽なので、葉物は立たせた方がいいです。寝かすと起き上がろうとして無駄なエネルギーを使い、味も落ちます。(ねぎや葉物が反って曲がっているのを見たことがないでしょうか?)

ここらへんの鮮度管理をどこまで丁寧にしているかが結構効いてきます。すず辰でも市場仕入の野菜を売りますが、それでも「おいしかった!」との感想をいただくこともあり。市場品でもいいモノを仕入れ、良い状態を保てば十分おいしいです。鮮度よくって点でいうと、野菜がどんどん売れて鮮度よいうちに次の野菜を販売できるのが一番で、繁盛店はそれで鮮度を保っています。

その点はすず辰はまだまだ。もっとお客さんを増やす努力も大事です。よかったら口コミよろしくお願いします!

で、表題の「なぜ久々のお客さんが八百屋の品をスーパーの野菜よりおいしいと感じたか?」

久々の注文に気張って入荷直後の活きのよい、しかも名人の野菜をそろえた八百屋に対し、2カ月ほど食べていたスーパーの野菜は、店頭でどう管理されていたか未知数のため、その間に「生命力」がなくなりおいしくなくなっちゃっていた、ってのが実態かなと思います。

出産前後で身動きとれず、スーパーの配達サービスを利用していたようなのですが、配達の野菜を選ぶ人があまり鮮度の見極めができない人だとろくなものが選ばれないでしょうし。

大きなスーパーになればなるほど、仕入れるバイヤー、店の青果マネージャー、そして他の社員、パートさん、さらに配達の荷物をそろえるのは普段青果を扱っていないパートさんが担当…なんてこともあるかもしれません。(もちろん、人気のスーパーさんは逆にここらへんがしっかりしているのは言うまでもありません)

その点、すず辰は一人営業ですので、店主の責任の下、とっときを選んでお届けできるというわけです。何より生もので鮮度勝負の野菜。より良いものをよい良い状態で如何にお客さんに届けるか、なかなかに難しくおもしろい奴らなのです。

※残念ながら家族の都合もあり、2023年12月に店は閉じました。
 こんな八百屋が函館にあったんだぁ、という記録として、読んでいただけたらうれしい限りです。

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