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パレットクラブ日記 第28回・菊地敦己先生「2色で描き直す」

※パレットクラブスクール「イラストコース」(23期)の授業内容の備忘録です。過去の授業内容はこちら

授業から2週間もあいてしまった。まずいまずい。そんなわけで、2021年3月27日の授業記録です。

講師はグラフィックデザイナーの菊地敦己さん。これまでに描いた絵を2色で描き直すという課題が出ていた。この課題、床山は「今までに描いた絵の色を2色で置き換えればいいんだな」と軽く考えていた。先生の意図をきちんと捉えられていなかったためだ。

期限ギリギリになって、どんな色にするかいろいろと試しながら、ふと気がついた。課題には「描き直す」と書いてあるぞ……? 私はデジタル制作だから色の置き換えができるけど、アナログの人は完全に描き直すことになる。「描き直す」、ここに今回の課題の肝があるのかもしれない。

とはいえ、もう時間がない。元の絵の線はそのまま使って、色の置き換えではなく「色を塗り直す」ことで乗り切ることにした。

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元にした絵。この絵の良さは、光と影のコントラストがあること。あとは、水彩ブラシのマチエールと色の柔らかさ。2色にした場合にも、それが残るようにしたいと考えた。

光と影の対比を強くするために青と黄色といった反対色を使うことも考えたが、絵の柔らかさが損なわれる気がしたので、類似色で2色をピックアップすることにした。

塗り直したイラスト

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紙の色(白)を1色に数えていいのかどうか分からなかったため、青みの紫とピンクの完全な2色で塗った。元の絵で使ったブラシをできるだけ使って塗り直している。ちょっとぼんやりした印象になってしまったが、ここでタイムアップ。コンビニでプリントアウトして、教室へ持っていくことにした。

菊地先生、登場

開口一番、「春ですね……。」と横を向いてため息をつく菊地さん。今回はちょっと変わった先生だぞ、というのが第一印象だ。

とても冗談の多い先生で、ふだんより格段に笑いの多い授業となった。とはいえ、先生はふざけているばかりではなかった。雑談を挟みながら、はじめに今回の課題についてお話があった。

イラストレーションは、基本的には媒体の特性に合わせて計画・設計するものだ、と先生。描く前に「絵を設計する」視点を持つのが大切だというお話だった。どうやって描くか(画材や色、タッチ)、何を描くか。また、「何をやるか」よりも「何をやらないか」を考えて描くことが絵の個性に繋がるという。

今回の「2色で描き直す」という課題も、制限を加えて絵を設計することで、新たな発想を得ることができるというねらいがあるようだ。制限やルールを自分で作れる面白味がイラストにはある、という話が私には新鮮だった。しかし、私は今回の課題では、どんな2色を選ぶかということにしか気が回っていなかった。先生のねらいを完全に外してしまったな……と早々に反省。

2色のイラストでは情報量が減る。でもパッと見てどんなイラストかわかるのが大切なので、伝達スピードを速めるために「無駄を減らす」「単純化する」ことが必要になるという。それには、単純な色にすること、マチエールを減らすこと。このあたりも「2色で描き直す」課題の意図だったようだ。

講評

いつものポートフォリオと、今回の作品にいただいた講評は次の通り。

【ポートフォリオ】
・「床山すずり」からイメージする絵と違う!(冗談)
・モチーフがギャル志向だね。
・女性の捉え方がちょっとかたい。もっとふつうの女性も描いてみたらどうか?
【2色で描き直した絵】
・全体的にぼやけたね。
・この絵の面白さは、中央に光が集中して見えるところ。その面白さが減っているのがもったいない。
・僕なら、ドアと壁も床ぐらいの濃度にして塗る。

私はマチエールの再現にこだわってしまったが、2色でわかりやすく伝えるためには、塗り方自体も設計し直す必要があったのだとわかった。
「設計してから描く」「やらないことを決める」……頭の隅にいつも置いておきたいと思う。楽しく、とてもためになる授業だった。授業後、「毎週、菊地さんがいい」と誰かが言っていたのにも肯けた。

修正したイラスト

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ドアと壁の塗りには水彩ではなくガッシュブラシを使い、色も床の濃度と同じぐらいになるようにした。もっとも明るい部分には紙の白を残して、女の子の肌と服に光と影を付け加えた。提出したものよりずっと良くなって、よかった!

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