芹沢怜司の怪談蔵書「29.老婆の晩酌」
ヒィヒィと息を乱しながら図書館まで歩いた。いくら運動不足でも二十分歩いたぐらいで疲れるはずがない――と思っていたのだが、予想以上に坂道が多くて体力を削られてしまったのだ。
入口の傍にあるベンチに座って息を整える。帰りも坂を上ったり下ったりするのかと考えるとずっとここにいたくなる。
少し汗が引いたところで図書館に入り、カウンター周辺で目的の怪談コーナーを探すも見つからず、司書に聞いてみると図書館の一番奥にありますよと案内された。普通はカウンターの近くにあるものだが、怖い