ふと思う雨男の話

私が心から尊敬してやまない某音楽家は、
とても雨が似合う男だ。

「雨の日に生まれたから
名前に「氵」が入っているんです。」
と彼が言っていたのを、
雑誌で読んだことがある。

最近、
雨の日はとても憂鬱で
ベットからなかなか起き上がれない。

カーテンの隙間からどんよりと暗い空が見えて
「はぁぁ…」と自然に溜息が出る。

しかし、起き上がらなければしょうがない。
布団に張り付いた体を
両腕の力を振り絞って、なんとか剥がす。
顔を洗い、化粧台に座ると
いつも以上に曇った私の顔がそこにある。

いつもは、時間が経つにつれ
だんだんと体が起き始めるけれど
雨の日は悪態をつく。

体がまた、ベットに戻ってしまわないうちに
私は、彼の音楽をかける。


様々なリズムが
重なり合ったメロディーは
私の耳を通り、鼓動と重なり合う。

内側からビートが溢れて、体を揺らす。

さっきまで曇っていた顔が
いつの間にか晴れやかになり
化粧のりもいい。

なんだかワクワクしてきた。

外に出る。
薄暗い空の下
雨がしきりにビニール傘を叩くけど、
私は気にしない。
軽快な足取りでバイトへ向かう。

あー
彼の歌はいつ聴いても素敵だが、
雨の日は特にいい。

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