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最近読んだおすすめ小説 〜2022年12月〜


佐原ひかり『人間みたいに生きている』

『食べ物』や『食べる行為』そのものに生理的な拒絶・嫌悪を感じてしまう女子高生のお話。

物語の中でも言及されているけど、最近のドラマとか小説って、『食』を通して人間同士で「愛」や「幸福」を深める、みたいなストーリーのものって、結構多いよね。

それはなぜかといえば、世の中の大半の人間が『食』=『幸福』だと定義付けているから。

……じゃあ、そうじゃない人はどうなるんだろう?

私は『食べること=幸せ』という図式を持つ人間だけど、この本を読むと、主人公が『食』というものに対してどれだけ嫌悪を感じ、そして苦しめられているかがよく伝わってくる。

しかし、誰にも理解されない、ひとりぼっちの女子高生・ゆいは、ある人物との出会いによって、『食べられない』苦しみからようやく解放されるようになる。

この小説は、そんな唯の成長物語でもある。

『食べること』『食べられないこと』を通して、少しずつ他者との距離を縮めたり、自分の中で頑なに思い込んでいた固定概念をちょっとずつ壊していく。

彼女は、物語の終盤で、こんな台詞を吐く。

「うまく言えないんですけど、ゼロか百じゃなくてもいいんだな、って思うようになって。もっと、まだらに、うまく、生きてもいいのかもしれない、って」

佐原ひかり『人間みたいに生きている』p.215

私も完璧主義で、物事をゼロか百かで捉えがちなので、はっとさせられた。

あぁそうか――白黒はっきりさせなくても、まだらでもいいいんだな、と。

そして、この本の内容を振り返りながら、そういえば、自分は幼い頃かなりの少食だったな、と思い出した。

記憶にあるのは、小学生の頃。

給食で出される一人前が全然食べ切れなくて、でも、当時の担任の先生は『完食主義』だったから、残すのは許されなくて、給食の時間の後、昼休みになってもぽつんと自分の席に残って、ひとりで頑張って食べきれない分を食べようとしていた。

……そうそう。だから、春になって学年が上がるタイミングで、いつも私は『次の担任の先生が、給食は残してもいい派なのかどうか』を心配していたっけ。

今でこそ、人並みに食べる体質になったけど、たぶん中学生ぐらいまでは、人より身体が小さいのも相まって(いつも背の順で一番前だった)、かなり少食の人間だったし、今ほど『食』に対して肯定的な思いを抱いていなかった気がする。

……そんなことを、ふと、思い出した。

また、物語の中で、他者の評価と、自己認識のズレみたいな部分に言及している描写があって、私はかなり既視感を覚えて、共感した。

実は最近、たくさんの人に会う機会があって、そこで私は、「将来有望」だとか「才能の宝庫だね」だとか「心がキレイ」だとか、とにかく色んな褒め言葉を頂いた。

めちゃくちゃ嬉しい反面、「いや、私、そんな出来た人間じゃないんですけどね……」って内心ちょっと思ってしまった(笑)

唯も、ある人物から「〇〇さんがあなたのことをこんなふうに言っていたよ」と伝えられて、驚きを隠せないというシーンがあった。(※悪口ではない)

でも、それと同時に、唯自身も、誰かのことを、表面的な言動から「この人は敵だor味方だ」だと決めつけたり、「この人はこういう人だ」と判断していることに気づいた。

――人間って、そんな単純な動物じゃないよな。

自分たちが思うよりずっとずっと、多面的で変質的な生き物なんだよな。

と、私自身も思い知らされた。

『食』以外にも、色んなことを考えさせられた、素晴らしい一冊だった。

榎田えだゆう『永遠の昨日』

あらすじを読み、こんなの号泣案件だろ……!!! と思った作品。  

17歳、同級生の満と浩一。ふたりは正反対の性格ゆえに、強く惹かれあっている。

しかしある冬の朝、浩一はトラックにはねられてしまった。頭を強く打ったはずなのに、何喰わぬ顔で立ち上がる浩一。脈も鼓動もないけれど、いつものように笑う浩一は確かに「生きて」いて、その矛盾を受け入れる満。

けれどクラスメートたちは、次第に浩一の存在を忘れ始め……。

生と死、性と青春が入り混じる、泣けて仕方がない思春期BL決定版。

いつか、自分の元からいなくなってしまう運命だと分かっていても、いつか、ふたりで過ごすこの時間が終わると分かっていても――それでも、人は人を想わずにはいられない。

ラスト一行に、どうしようもなく胸を締め付けられた、名作BLです。

つななみ『背中を預けるには』

最近読んだ中でも、マッッッッジで最高すぎたファンタジーBL!!!!!

全3巻で、しかも2段組なんだけど、あまりの面白さに一気読みしてしまった。

作品を知ったきっかけは、こちらの動画。

私は普段ファンタジーをあまり読まない人間なのだけど、これはめちゃくちゃ読みやすかったし、めちゃくちゃ良かったし、めちゃくちゃ最高だった。。。。(語彙がないw)

最後の一行を読み終えて、「今のこの感情を書き留めねば!!!」と、急いでスマホを開いたけど、あまりの感動と興奮とで、手がぶるぶる震えて、まともな感想を書けなかった。

それぐらい、よかった。よかったのよ〜ー!!!!(泣)(泣)(泣)

はあああああ〜ッッッ!! 

(読み終えた直後なので感情が高ぶっているw)

もう、あらすじとか物語の詳細は、載せたYouTubeですごく分かりやすく語られているから、それを見てください。。。。

……とにかく、最高でした。

何かどっぷり長い物語に浸かりたいなぁって人は、これ読んで。

Twitterで知り合ったBL好きな人たちも皆、口裏を合わせたんじゃないかってぐらい、『この作品は面白いよ!』と、熱量を持って推してくれました。

私な今までたくさんのBL(漫画を含めて)を読んできたけれど、こんなにも、『愛』というものを、ロマンティックに描き出す作品は初めてでした。

あぁ、この作品に出会わせてくれてありがとうございます神様。。。

シリーズでいうと、『全3巻+番外編+外伝』があって、今私は番外編を読んでます。まだこの『背中を預けるには』の物語に浸れる幸せ……あぁ、最高!!!

【まとめ】

……はい。というわけで三作品紹介させてもらいました!

改めて読み直すと『背中を預けるには』の熱量がエグいですね……(笑)

でもまぁ、裏を返せばそれぐらい良かった作品なので、気になった方はぜひ! 本屋で手に取ってみたり、Kindleで試し読みしてみて、「おっ! これは!」と思ったらぜひレジへレッツゴーしてみてください。

それと、一年の振り返りとして、『2022年に読んでよかった傑作小説7選』をラジオで紹介させていただきました!📚

今回紹介した『背中を預けるには』も含め、私が2022年に読んで、「これは素晴らしかった!」と心の底から震え上がった作品たちを紹介しています! 

ただ、収録したらめちゃくちゃ長くなってしまったので(まさかの一時間超え……笑)、ぜひ作業用BGMとかにして聞いてみてください!

2022年もありがとうございました!

そして2023年もまた、たくさん小説を読んでたくさんの素晴らしい作品に出会って、たくさん紹介したいと思います!

ではでは! ありがとうございました~!

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