品質について


金型屋に勤めておりましたので、金型を例に品質について考えてみたいと思います。


例えば、「金型の品質とは?」と聞かれたとします。

新人の頃は全く答えられませんでした。それなりに経験してからは、新人の頃よりは明確に答えられます。何故なら、仕上げの精度や寸法公差など、技術的な品質を指しているとわかるからです。




しかし、この会社の品質は?と聞かれると・・・

さっぱりわかりませんでした。


何故かといえば、理由は2つあると思います。


①品質に関する基準がない

端的に言えば「これがウチの品質である!」という、明瞭な基準が存在しないからです。

従って、人によっては、「品質の低下=不良が多い」ことを指しますが、そもそも何と比べて品質が低下しているのか?という基準がないので、その人の定性的な私見として、うやむやに扱われます。

しかも、人によって解釈の仕方が異なるので品質の低下をなんとかしようとしても、話すらかみ合わない可能性もあります。




②品質と付加価値の混同

金型に限らず、モノをつくる際に質だけを求めて国内メーカーに発注するお客様はどれだけいるでしょうか。

私は・・・あまりいないのではないかと思います。ピンキリとはいえ、海外で製造しても日本と同等の質のものを作ることはできるからです。

従って、国内メーカーに発注してくださるお客様が求めているのは、付加価値だと思います。



高い国内金型メーカーにあえて発注するのは、その付加価値を求めて・・・

そう考えた時、私にはその付加価値が自分の会社のどこにあるか、全くわかりませんでした。


例えば、あるアピールポイントがあったとしても、それがそのままウチの品質だと胸を張って言えるかどうかは正直分かりません。

「だって、ウチの会社以外もやってるし・・・」「ミス・不良を出しまくってるよね・・・」と心の中で思います。







品質の定義や基準が曖昧な中で、「品質が悪い!!」と声を挙げても、決して鶴の一声にはなりません。

そう声を挙げる社長やリーダーが、いったい何を指しているのかわからないのです。

納期が守れないこと・・・? 不良が多いこと・・・?

連携が取れていないこと・・・? 付加価値を付けられないこと・・・?


分からない上に、漂う無気力感。

更には、怒られることに慣れてしまっている雰囲気にその発言は説得力を持ちません。むしろ、より一層澱んだ空気が広がります。



何故、声を荒げるだけなのでしょうか?怒鳴れば品質は向上するのでしょうか?

次回以降、もう少し深く考えてみたいと思います。