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ターゲット志願者  #親切な暗殺 #毎週ショートショートnote

夫が暗殺者だった。

飼い猫が、キッチンの床を
削るので止めに行くと、床に切れ目が
あるのを見つけた。

床板を外すと、所持が
禁止されているモノを見つけた。

過去を振り返る。
確かに、あの時不自然だった。
記憶のパズルを解いていく。

寝室で横になり両手で顔を覆う。
手のひらが潤っていく。
溢れた水滴は枕に染み込んでいった。

夫のクローゼットの奥。
夫の性格を考えると
ココにも同じモノがあるだろう。


目を閉じて
手のひらをクローゼットの
奥に当てて、ゆっくりと滑らす。
感触の違いに気づき隠し扉を開ける。

不安は確信に変わった。

夫は同業者だった。

私は仕事を辞めたいと願っていた。
辞める事は死を表す。

ならば、愛する夫に殺されたい。

私は、人づてに
自分の暗殺を夫に依頼した。


病院のベッドで横になる私。
私の手を握り微笑む夫。
お互い潤いのない手。

私がこんなに幸せに逝くことが
許されるのだろうか。

あれから40年。
夫のターゲットである私は
親切な暗殺者に見守られながら
ゆっくりと瞳を閉じた。

【415文字】



#親切な暗殺  
#毎週ショートショートnote

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