鈴木満彦

海外情報を中心に記事を書いているライター・翻訳者。好きなこと、興味のあることに関する文…

鈴木満彦

海外情報を中心に記事を書いているライター・翻訳者。好きなこと、興味のあることに関する文章を投稿しようと思っています。鮎川信夫、Rolling Stonesの大ファン。映画「地獄の黙示録」、コミック「デビルマン」が精神的ルーツです。中国家庭料理を作って食べるのが大好きw

最近の記事

松浦理英子「ヒカリ文集」

デリケートな甘美さと苦さと虚しさが快いファンタジー 新作が出るたびに必ず読む作家が何人かいるが、松浦理英子もそのひとり。遅ればせながら図書館で借りて読了した最新作「ヒカリ文集」も期待を裏切られなかった。 学生劇団の中心的女優で、姿を消してしまったヒカリ。 異性に対しても同性に対しても、優しくしたり快楽を与えることはできるけど、恋愛関係にコミットできない。 決して悪意で相手の気持を弄んだり、支配するために魅力を行使するわけではなく、ただただ他者を愛することが不可能なのだ

    • ハーマン・メルヴィル「白鯨」

      作者とエイハブ船長の執念と情熱と狂気に巻き込まれる超怪作 何度か読んで途中で挫折していたアメリカの19世紀の小説家ハーマン・メルヴィルの代表作「白鯨」を岩波文庫から2004年に出たアメリカ文学者の故八木敏雄氏の翻訳で読了。 いやいや聞きしに勝る巨大な〝超怪作〟だった。 主人公のイシュメールは、エイハブ船長の捕鯨船「ピークオッド号」に乗り組み、巨大な白いマッコウクジラ「モビー・ディック」を延々と追跡する。エイハブ船長は前回の航海でモビー・ディックに片足を食いちぎられており

      • 中国家庭料理にハマるきっかけになった2冊の本

        「母から娘に伝える邱家の中国家庭料理」と「食在揚州 郭長聚の中華料理」 わたしは月~金まで毎日、中国家庭料理を作ってタッパーに詰めて職場に持ってゆき、電子レンジで温め直して食べています。 昨年6月からツイッターに何を作ったかを投稿していたので、1年経った先日、統計を取ってみたら249食作っていたw なんでそんな事をしているかというと、わたしは中華料理と揚げ物が大好きなのですが、一緒に暮らしているパートナーが料理上手にも関わらず油に極端に弱いため、揚げ物と中華料理を一切作

        • 鮎川信夫「イシュメエル」 惨劇のおわりのうず潮とは…

          わたしは詩人の鮎川信夫の大ファンで、20代の頃から繰り返し、作品を読み返している。 けっして多作な詩人ではなかったが、どの作品を読んでも、心の深いところに訴えてかけてくる。 そして実にさまざまなスタイルの詩を書いた。その中には、なんとも理解できない謎の作品が何作もあり、その意味を考えるのも鮎川詩を読む楽しみの一つだ。 「イシュメエル」という作品もその一つだった。 日本の敗戦から10年たった1955年11月に発表された詩で、タイトルは、アメリカの19世紀の小説家ハーマン

        松浦理英子「ヒカリ文集」

          「ブラウン・シュガー」 猥雑だけど切実 セックスと麻薬と奴隷制度を歌ったストーンズの最高傑作

          ローリング・ストーンズの最高傑作の1つ「ブラウン・シュガー」。1969年12月にレコーディングされ、1971年4月にリリースされた大ヒットアルバム「スティッキー・フィンガーズ」のオープニングトラックだ。 初めて聴いたのは中1のとき、1973年だった。思わず腰が動いてしまう粘っこいリズム、耳に残るギターのリフ、印象的なサックスのソロ……ミック・ジャガーが何を歌っているのかわからなかったが、最高にかっこいいロックンロールだ! と興奮した。 しかし1980年頃、歌詞の意味を初め

          「ブラウン・シュガー」 猥雑だけど切実 セックスと麻薬と奴隷制度を歌ったストーンズの最高傑作