シマヘビ

学名:Elaphe quadrivirgate
和名:縞蛇
分類:ナミヘビ科ナメラ属

シマヘビを見たことない人に説明してみる

体長80~150 cmの黒いラインの入った、手足のない紐状の生き物である。日本固有種であり、無毒である。田んぼやヤブの中など様々なところに生息しており、日本中どこでも見ることができる一般的なヘビである。カラスヘビとよばれる真っ黒なヘビは、シマヘビの黒色変異体であり、同種である。

シマヘビはカエルやネズミを食べ、カラスやイノシシに食われる。変温動物なのでバスキング(日向ぼっこ)をする。4, 5月に繁殖、7, 8月に10数個の卵を産卵し、40~50日ほどで孵化する。交尾の際は、オスがメスのうなじ付近に顎を乗せて行うらしい。ちょっとかわいい。

ヘビは左肺が退化しており、無いかあっても機能していないことが多い。また、ヘビの心臓は2心房1心室であり、不完全な心室中隔をもつ。ちなみにワニやカメには心室中隔があり2心房2心室である。これは発生時期の心臓で、Tbx5(←斜体です。)発現が右室で急激に低下することによるものだという報告がある。(Koshiba-Takeuchi, K., Mori, A. D., Kaynak, B. L., Cebra-Thomas, J., Sukonnik, T., Georges, R. O., ... & Olson, E. N. (2009). Reptilian heart development and the molecular basis of cardiac chamber evolution. Nature, 461(7260), 95-98.)

僕とシマヘビ

正直僕はあまりヘビが得意ではない。本稿の内容の薄さが、僕のヘビ愛の薄さを物語っているように思う。アラクノフォビアならぬスネークフォビアと言えるほど苦手なわけではないものの、人並み程度には苦手である。ちなみにハチやゴキブリ、ムカデといった害虫の類もあまり得意ではない。一人でこれらの生き物と遭遇した時は、ひとしきり騒いだ後、しかるべき処理をするので問題ないのだが、誰かといる時に遭遇すると非常に困る。「あなた獣医ですよね。サクッとやっちゃってください。」みたいな展開になることが多く、騒ぐことも逃げることも許されない状況に追い込まれる。僕だって苦手なのだ。そもそも獣医が相手にするのは基本的に誰かに飼育されている生き物であり、管理されていない生き物に対して積極的に手を出すことなどないのだ。

そんな僕が最後にヘビを触った記憶は学部時代の寄生虫病学実習である。実習の内容は、マンソン裂頭条虫の待機宿主であるシマヘビを解剖して、プレロセルコイド(幼虫)の数を調べるというものだった。寄生虫病学講座の先輩が予め野外で捕獲しておいてくれていたシマヘビが、実習室の前に箱に入れられて並んでおり、ヘビ殺しのお鉢が回って来ないことをひたすら祈っていた。僕の心配をよそに、シマヘビは頭を落とされた状態で各班に配られ、実習がスタートした。

実習の目的である、マンソン裂頭条虫のプレロセルコイドは、1 cm程度の白っぽい塊で、皮下や筋肉内に寄生する。これを探し出し、摘出し、数え上げ、観察するためにはシマヘビの皮を剥ぐ必要があり、この皮を剥ぐ作業がなんとも気持ちが悪かった。はさみで皮に切れ目を入れ、引っ張りながら剥いでいくと、それに合わせてクネクネとからだをくねらせ、腕に巻き付いてくるのだ。ただの反射にすぎないと頭では分かっているが、薄気味が悪く、古来よりヘビが神聖な生き物として祀られていたり、殺してはいけないなどと言い伝えられていたりする理由が少し分かったような気がした。やっとのことで剥皮を終え、プレロセルコイド探しが始まった。僕らの班からは30匹以上のプレロセルコイドが見つかり、クラスで一番の量だった。

それ以来、どんな事があってもヘビの生食だけはしないと心に決めている。群馬県にあるジャパンスネークセンターという場所では、シマヘビやマムシを食べることができ、時期によっては子マムシの刺身が食べられるそうだ。noteに体験レポートを寄稿されている方がいた。カエルを食べていない子マムシであれば、理論上はプレロセルコイドが含まれてないと考えられるが、僕には挑戦する勇気はない。

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